2006-06-25

29.時には懺悔を

打海文三・角川文庫
どうしてこんなにスラスラと文章が頭に入つて行くのか。この前に「ハルピン・カフェ」といふ本を手に取つて見た。聞いたことがあるやうな、ないやうなタイトル。太田イオンの喜久屋だ。いま中古以外は殆んどここで買つてゐる。「ハルピン・カフェ」は厚い本だつた。パラパラと捲り、読みたい気分だつた。が、ここのところ活字を追ふ気力がどうにも続かないから、後で荷物になつても困る。戻す序でに隣にあつたこつちを捲つた。冒頭からスラスラと頭に入る。立ち読みしながらグイグイその世界に入り込んでしまひさうだつた。これは買ふしかない。……で、やつぱり読み始めたら一気だつた。この濃密なハートボイルド的世界はなんだ?この情緒的な、抒情的なハードボイルドな気分つて、どこか矛盾してないか?兎に角,なかなか緊迫感と爽快感があつてよかつた。続けてもう一度読み返した。面白い。こみ上げて来るものがある。題材が重過ぎるよ。ただ一つ(出たぞ)、米本が殺された動機。一言説明が欲しかつた。佐竹が自分に準へて、深く入り込まないけれども。例へ小説であつても、理由のない死は悲しい。救はれない。貴志祐介の「黒い家」の時にも書いたけど、あの保険外交員が無惨な殺され方をするのがイヤなんだよ。米本はなぜ殺されたのか?なぜ殺されなければならなかつたのか?尤もらしい理由が欲しい。それが唯一の不満。

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