2015-10-05

610.真夏の方程式

東野圭吾・文春文庫(used)。「容疑者Xの献身」もさうだつたが、ちよつと無理があるんぢやないか。面白いのは間違ひない。一気に読んでしまふ、やめられない。ただ読み終はつて、痼りのやうに残るのだ。読み手の期待、例へば意外な犯人、予想外の展開に応へようとしてゐないか。もちろんミステリは娯楽なので、読み手を楽しませるのが基本だといふのはわかるけど。なぜ川端成美は玻璃ヶ浦の海を守らうとするのか。おしまひのはうで説明されるが、なるほどね、とは思へなかつた。先づ、荻窪での殺人事件が胡散臭く思へてしまふ。杜撰な捜査ではないですか、結果を考へると。そして塚原の行動。公民館で初対面の成美に会釈してどうするのさ。軽率過ぎる。その晩、緑岩荘で顔をあはせたときなら、わかる。節子と成美はなぜ荻窪で暮らしてゐたのか。それも判然としない。社宅にゐたら、そのはうが自然だと思ふが、事件は起こらない可能性のはうが高い。その説明が書いてあつたかもしれないと思ひ、パラパラとめくつて探したが、みつからない。そしてネタバレになつてしまふかもしれないが、荻窪の事件は正直に警察に出頭しても、裁判では情状酌量の余地があつたんではないか、未成年だし。親にしてみたら、出生の秘密が表に出るとか、隠したいことはあるにしても。更に言ふと、塚原は殺さなければならなかつたのか。助かつたら、どうするつもりだつたのだらう。まあ、些細なことだけど。我慢できなくなつてDVDを借りて来てしまつた。映画の「はう」はどういふ「かたち」になつてゐるんだらう。

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