2011-01-22

で、藤原伊織「テロリストのパラソル」講談社文庫(371・used)。史上初の江戸川乱歩賞、直木賞のダブル受賞と裏に書いてあるし、解説でも絶賛してゐるけれども、読みをはつたばかりの「雪が降る」がamazonのプレビューに倣つて★★★★だとしたら、これは★★★。主人公の設定は都合良すぎるけれども、まあハードボイルドの主人公はみんなこんなものだ。細かいところで気になることが幾つかあるが、ネタバレになるかも。主人公の島村が20年以上も逃げ続けるキッカケになる車での爆弾事件は事故で処理されるのではないか。この事件で死んだ警官の妻の弟が8歳(p125)といふのは作り過ぎではないか。終はりのはうで金田一さんみたいに読み手に知らせない場面が出て来る。p252でホームレスの元医師らしい老人に何を聞いたのか書いてないし、p292でも江口組の上部組織の構造を週刊誌の記者に聞いてゐるが、答へた内容が書いてない、など。p296飲み屋での喧嘩のくだりは、なくても物語に特に影響がない気もするし、犯人が爆弾事件はテロだと言ふけど、単なる私怨だし、ホントに人でなしにしか思へない。その辺りが気になつて、華々しい受賞ほどには面白くなかつた。「雪が降る」のはうがよつぽど面白い。

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