2012-11-03

ジョルジュ・シムノン/秘田余四郎訳「リコ兄弟」ハヤカワ・ミステリ(478)ギャングの世界に生きる3人兄弟の話で、一番下のトニィが結婚して堅気にならうとして行方を眩ます、長男でその世界にどつぷりつかりそれなりの地位にあるエディがさらに上の親分からの命令で弟を探す。日本の任侠映画みたいな設定なんだけど、娯楽の要素がないので重苦しい。しかもシムノンは人物の行動について答へを出さない。例へば始めのはうでエディ(殆どエディの目を通して語られるのだ)が彼の親分であるボストン・フィル(オーケストラにかけた洒落かと思つたが違ふみたいだ)からの電話で、どうしてフィルは何の意味もない沈黙を挟むのだらう、と疑問に思ふのだが、なぜかは語られない。ほかにも幾つもの箇所で、彼はかう思つてゐるのだらうか、これはかういふことなのか、とエディは自問するけれど答へはない。だから最後にトニィはどうなつたのか、一切書かれない。予想はつくけれども。

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