東川篤哉・光文社文庫(used)。まへの「Y列車の悲劇」から、ほぼ2箇月間、新たに1冊の本を読み上げることが出来なかつただけでなく、1冊の本を読み返すことすら出来なかつた。短篇を一つ二つ読み返しはした。また吉田健一の単行本未収録集の文庫「おたのしみ弁当」講談社文芸文庫を半分くらゐ読んではゐるが、読み終へた本は、ない。
ところで、講談社文芸文庫は矢鱈に価格が高いのだが、なぜだらう。たとへば「おたのしみ弁当」は270頁の本で税別1,400円もする。因みに創元推理文庫のR・D・ウィングフィールド「冬のフロスト」上巻は500頁あつて税別1,300円。新潮文庫のヘミングウェイ「移動祝祭日」は300頁で税別590円。直接、この東川篤哉の本とは関係ないのだが、まへから気になつてゐたので書いてみた。以前にも書いたかも知れないが。
で、この短篇集は去年だか一昨年だつたかずゐぶん評判になつた「謎解きはディナーのあとで」の作者のデビュー作を含めた作品集で、最初のものであるらしい。といふのも、長篇デビュー作が「密室の鍵貸します」で、どつちもデビュー作といふ言ひかたをしてゐるので判り難い。
いづれにしても、収録された5篇凡てが安楽椅子探偵もので、気楽に読めて、意外性もあつて、面白く読めた。
2014-04-16
2014-02-12
568.Y列車の悲劇
阿井渉介・講談社文庫(used)。これまで聞いたことがない作者。走行中の列車から乗客がゐなくなるといふ事件。しかもその乗客たちがゐた寝台車で殺人事件が起こるといふのだから、期待するでせう。期待は裏切られない。この人には不可能犯罪といふシリーズがあるらしく、これもその一つ。余計なことかもしれないが、人物の容姿に関する記述が殆どないので、どんな人物なのか見えにくい。P67で鶴見刑事が平田といふ人物を調べてゐて、その平田が仙台にゐるといふ報告を上司である牛深(ウシブカと読むんだらうね、ルビないけど)にする。その後で「帰京の予定はいつだ」と牛深。「明日です」「一度こっちに戻ったほうがよくないか」「そうします」と続く会話になる。誰が戻るのか一瞬わからなかつた。P164「娘分の道子とも」といきなり登場する道子つて誰?ま、そんなことは些細なことだ。なかなか面白く読んだ。他の作品にも手を延ばすかどうかは微妙だね。
2014-02-09
567.バスが来ない
清水義範・徳間文庫(used)。読んだことがあるやうな気がしてたけど、覚えてないから読んでないのだらう。カバーの後ろには抱腹絶倒と書いてあるけど、クスクス笑ひだつた。表題の「バスが来ない」「マイルド・ライト・スペシャル」「戦慄の寒冷地獄」が面白かつた。筒井康隆に似てるかもしれない。
2014-02-01
566.裁きの街
キース・ピータースン/芹澤恵訳・創元推理文庫(used)。ウェルズ・シリーズ、愈々最後の作品。原題はRough Justice。もつと続きが読みたいなあ、解説にあるやうにランシングを主人公にしたらど面白さうだ。ウェルズは今度は殺人者として警察に追はれる身に。しかも宿敵といふか、もつとも嫌ふワッツに追ひ詰められる。守らうとする新しい女編集長と我らがランシング。最後に姿をみせるゴットリーブもなかなかいい味を出してゐる。遂にランシングとウェルズは、……読んでない人のために書かないでおかう。本格ミステリのネタばらしなんかよりも、してはいけない大事なことだ。
2014-01-26
565.夏の稲妻
キース・ピータースン/芹澤恵訳・創元推理文庫(used)。ウェルズ・シリーズの3作目。このシリーズはいまのところ全部で4作しか書かれてないが、すべての題名が原題とは違ふのだ。これはThe Rainといふ。アメリカ探偵作家クラブ賞受賞と表紙に書いてある。上院選立候補者の醜聞にかかはる殺人に巻き込まれる。ランシングに結婚話が持ち上がつて、一体どうなるのか本筋とは別のところで気を揉んだ。前作で隙間ができてしまつたチャンドラーとは本当に終つてしまつたのか。ブラック・ダリアみたいなところがあるね。女優に憧れ、犯罪に巻き込まれる若い娘。対するウェルズの姿勢がいい。P189「ど真ん中」、どうしたんですか、芹澤さん。
2014-01-19
564.切り裂き魔の森
マーガレット・トレーシー/中野圭二訳・角川文庫(used)。ヤケはあるが状態はかなり良い。原題はMrs. Whiteで、全然違ふ。中身はさうだけど、これぢやあ、なんだかサスペンス映画のタイトルみたいだろ。犯人は最初に解る。要するに、さうとは知らない犯人の家族の物語で、原題通り奥さんのミセス・ホワイトが語る。家主のジョナサンがいいね。キース・ピータースンの別名義で、これ一作のもの。
2014-01-12
2013-12-16
562.暗闇の終わり
キース・ピータースン/芹澤恵訳・創元推理文庫
(used)
。作者名は「木野塚探偵事務所だ」で知つた。訳がフロストの芹澤さんなので読みたくなつた。amazonで検索したら4冊中古で見つかり、どれも「非常に良い」か「良い」だつたから、思ひきつて全部買つてしまつた。いづれも主人公が「ニューヨーク・スター」といふ新聞の記者ジョン・ウェルズのシリーズで、これが第1作目。過去に一人娘に自殺された経験を持つ彼が、ニューヨーク郊外の町で起こつたハイスクールの生徒が3人続けて自殺した事件を取材に行くといふ話。ときどき比喩が鼻につくけど、なかなか面白い。同僚のランシングといふ若い女性記者が実に魅力的だし、ウェルズの人物像も好きだなあ。この人は他にもペンネームがある。弟と二人でマーガレット・トレイシーといふ女性名義で「切り裂き魔の森」といふのを出していて、これは1983年のMWA最優秀ペイパーバック賞を貰つてゐるさうだ。このウェルズのシリーズ(4作しかない)のあと、アンドリュー・クラヴァン名義で5〜6冊翻訳が出てゐるかな。そのうちの一つはクリント・イーストウッドが監督した「トゥルー・クライム」の原作(邦題「真夜中の死線」で芹澤さんの訳)になつてゐる。因みにこの原題はThe Trapdoorで、ウェルズの夢といふか幻覚の中に現れる。
2013-12-11
561.木野塚佐平の挑戦だ
樋口有介・創元推理文庫(used)。木野塚探偵事務所の2作目で、こつちは長篇。現職の総理大臣の死に絡む怪しい人物たち。総理の死は病死か他殺か。他殺なら犯人は誰か。そこそこ面白い。最後に来て、どうやら全体の仕掛けは桃世の仕業かと思はせるのだが、そこまで作り込まなくてもいいのではないかと思つたんだけどね。木野塚氏の奥さんが実に笑はせてくれる。あとがきで、三人称的視点と一人称的視点の混在がどうした、現在進行形の文体がどうした、といふ記述があるが、よくわからん。P108、7行目「ここは東京のどまんなか」。どまんなか、ねえ。
2013-12-10
2013-11-29
560.木野塚探偵事務所だ
樋口有介・創元推理文庫(used)。岡嶋二人の「なんでも屋大蔵でございます」を思ひ出した。あつちはハードボイルドではないが。ユーモア・ハードボイルド連作5篇。続篇(長篇)と一緒に購入した。始めのはう、奥さんとのやりとりが実に面白い。P140、「しかしここは東京のどまんなかなのだ」。どまんなか、かあ。
2013-11-25
559.食卓の情景
池波正太郎・新潮文庫。鬼平(四)の解説を書いてゐる佐藤隆介といふ人がその解説で触れてゐた本である。この人、広告代理店のコピーライターを経て池波氏の書生をしてゐたさうな。いまどき書生も珍しいが、よほど心酔してゐたものと見える。この本の解説も書いてゐて褒めまくり。それはさておき。題名からも解るが食べ物を中心に昔の思ひ出が語られる。祖父、母、師長谷川伸のこと、親友井上留吉のことなどだ。子どもの頃の東京下町の風景や取材で出かけた京都の話、新国劇の話。それにしても健啖家といふべきだらう、池波氏、誠によく食べる。食べ物に興味がなければ作品にも食べ物の話は出ないだらう。
2013-11-24
558.「今はひとりがいい」というキッパリ!とした生き方
鴨下一郎・新講社(used)。なんとも長くて奇妙なタイトルの本なのだが、Book Offでウロウロ(鬼平を中心に池波正太郎、黒川博行の文庫を物色)してゐたら目について、読みたいと思つたのだ。なぜだらう、読み終はつたら、余計わからない。20日に読み終はり、「マーフィーの法則」と同じく読まなかつたことにしようと思つたほど、なにも書くことがない気がしてゐたのだが、ちよつと整理して置きたくなつた。なぜこの本を買つたのか、について。
要するに、自分がいま孤立無援の状態にあると勝手に思ひ込んでゐて、そこから一つ飛び抜けたい、乗り越えたい、さういふ思ひがあるのだらう。その手助けになるかもしれない、読むことで何かが見えるかもしれない、そんなところか。実際は期待外れだつたわけだが、恐らくこれは女性を対象にした恋愛や会社、友人などの対人関係の悩みへの心理学者のアドバイス本なのだらう。
要するに、自分がいま孤立無援の状態にあると勝手に思ひ込んでゐて、そこから一つ飛び抜けたい、乗り越えたい、さういふ思ひがあるのだらう。その手助けになるかもしれない、読むことで何かが見えるかもしれない、そんなところか。実際は期待外れだつたわけだが、恐らくこれは女性を対象にした恋愛や会社、友人などの対人関係の悩みへの心理学者のアドバイス本なのだらう。
2013-11-15
2013-11-05
二度のお別れ
黒川博行・創元推理文庫(×2)。なんとなく読み返したくなつたのはなぜだらう。黒マメコンビの大阪弁のやり取りが読みたかつた、黒川博行の本が読みたかつた、どつちでもいいことだ。読み返して、事件の内容は思ひ出したが、どんな風に書かれてゐたかは曖昧だつた。読み終へてから次の「雨に殺せば」も読み返さうか、と書き出しを読んだら、「二度のお別れ」によく似てるのだ。事件そのものは違ふけれども、主人公が帰宅して上司からの電話を受ける。「努めて平静な口調で喋ってはいたが、眼と眼の間がせまくなり、唇がへの字に曲るのまで隠す必要はなかった。」これがおんなじ。ここでは所帯持ちの黒田憲造、「雨」は独身の黒木憲造。ま、そんなことはどうでもいい。兎に角、黒マメコンビは面白いのだ。まへに読んだときにも書いたが、解説の人が言ふやうに最後はマメちやんの名推理で解決してほしかつた。
2013-10-25
557.鬼平犯科帳(五)
池波正太郎・文春文庫(used)。これは(四)と一緒に買つたのだが、正解だつた。次が読みたくて堪らなくなるのだ。因みにこれも新装版。「深川・千鳥橋」でも万三に金を渡してお元と一緒に籠で送り出すところなんか涙が出さうになる。男気といふのですかねえ、「狂賊」の九平とのやり取りとか、それから(四)で配下の佐々木新助への心遣ひとか、実にカッコいいのだよ、鬼平は。あー、ビデオで見たい、それも最初の、ほら八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)がやつてたのが見たい。二代目中村吉右衛門でもいいんだけど、……。
2013-10-20
556.鬼平犯科帳(四)
池波正太郎・文春文庫(387・used)。このシリーズの(一)だけ活字が小さい。続く(二)、(三)は運良く新装版で、これも新装版なので活字が少し大きくなつてゐる。年には勝てなくて、昔の活字サイズは読み難い。しかし、これは読み始めたら、途中でやめられない。例へば「5年目の客」の最後で平蔵がお基地をお目溢しにするところ、「血闘でおまさを独りで救出するところ、「夜鷹殺し」の最後で粂八たちに労をねぎらうふところなど、全くもつて鬼平はカッコいいのだよ。
2013-10-15
555.鏡の国のスパイ 灰姫
打海文三・角川書店(used)。手に入らないもの、と半ば諦めてゐたから探す気にもならなかつたが、amazonで検索したら古本が見つかつた。送料を含めても定価より少し安いので思ひ切つて買つた。状態はとても良かつたが、なかなか読めない。入つて行けない。最初のはう、P18くらゐまでで何度も挫折。誰が主人公だかわかんないし、符牒が飛び交ふ。読み難い。北朝鮮絡みのスパイ活動や情報作戦などの記述がちつとも頭に入らない。これは横溝正史賞の優秀作に選ばれた打海氏のデビュー作で、最後に作者のあとがきと選評が載つてゐる。強く推してゐるのは夏樹静子で、批判的なのは先日亡くなつた佐野洋。「はいひめ」と読んでしまふが「キム・チエヒ」と本文中にルビがある。灰姫はシンデレラかと思ふが、どう繋がるのか、無関係なのか、わからない。人物の関係も判り難いので、主人公に寄り添ふ恰好で物語に入れない。この次に「時には懺悔を」が書かれたワケだ、と思ふと、その後の作品を読んでゐるものにとつては貴重だ。
2013-10-09
554.愚行録
貫井徳郎・創元推理文庫(used)。どうしても「慟哭」と比較してしまふ。やりきれない部分は同じやうにあるんだけど、厭な感じがある。当然、冒頭の新聞記事と、扱はれる殺人事件の被害者をめぐるインタビューはどこかで交錯するんだらう、といふ予想はある。その収まり方が不快だ。解説もなんか的外れな気がする。証言者たちの発言は確かに愚かと呼ばれても仕方あるまい。それはまだ人々が愚かといふ貴い徳を持つてゐて、は谷崎だけど。作者はこの殺人事件も含めて愚行と言つてるやうに取れる。小説の中であつても、殺人を愚行で括るのは不遜だらう。「慟哭」に感服したので、貫井作品はついつい読んでしまふが、わたしにとつては未だに超えるものに出会はへない。
2013-09-30
552.553.ヴェロシティ 上下
ディーン・クーンツ/田中一江訳・講談社文庫(used)。なんとも強引な物語に思へる。読み始めはすんなり。が、読み進めるうちに何度も途中で止めようと思つた。最後まで読んだのは、「ストレンジャーズ」と「ライトニング」が面白かつたから、どう展開するのか期待があつた。この2作は感動的だつた。しかし、「ミスター・マーダー」は今ひとつ好きになれなかつたし、……。グロテスクなだけだ。最後のはうでバーバラに僅かに変化があり、希望の兆しは見えるけれども、なぜビリーなのか、動機や殺害方法の具体的な説明などがはつきりしない。意味がわからん。異常者の犯罪に巻き込まれた、といふことか。もう1作上下巻の、これより長いのを買つてしまつたのだが、読まずに棄てちやふかな、と思ふ。
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