2011-08-20

岡嶋二人「なんでも屋大蔵でございます」新潮文庫(405・used)。この語りで井伏鱒二の「駅前旅館」を思ひ出した。柊元旅館の番頭、生野次平が思はせぶりたつぷりに喋りまくる「駅前旅館」は面白い。これももちろん面白かつたが、森繁とフランキー堺の映画のはうを先に見て原作が井伏だと知り買つて読んだのだ、たぶん。映画のはうはもう内容をよく覚えてゐないけれども、原作はいつでも読み返せるやうに手の届くところにある。──さう、岡嶋二人の小説の話だつた。第一話「浮気の合間に殺人を」は偶然雑誌掲載時に見たことがある。読んではゐない。ほかの目的で買つたのだらう。そこに載つてた記憶がある。全5編。なかなか。

2011-07-31

野澤重雄「ハイポニカの不思議」PHP文庫(404・used)。これは絶版で中古で手に入れた。読んでゐて意味がわからないところがずゐぶんあつたけれども、それは学のなさ、不勉強の致すところで止むを得ない。一株で通常20〜30個の実を実らすトマトが、13,000個の実を実らすといふ驚き。しかも多年草になるといふ。L・ワトソンのサボテンの話を思ひ出すし、百匹目の猿の話も。生命は現在の科学ではまだ説明できない。そこにデカルト以降の科学の限界がある。
はやみねかおる「都会のトム&ソーヤ①」講談社YA!ENTERTAINMENT(403)。これは二三年前、娘の誕生日プレゼントで買つたものを借りて読んだ。このシリーズが何冊か集まつて来たのでオレも読んでみようと思つたのだ。新しく(BookOffで探してまで)何か読むのが幾らか億劫になつた。先が長くないもので、未読の本が貯まるのは勿体ない、と。──で、文章は今風で、描写でもなく、心理でもない、ただの説明なんだけど、さういふことを言つたら読めない。小説と呼ぶより読み物だなあ。筋はまあ、こんなもんでせう。
手塚治虫「ショート・アラベスク」講談社(402・used)。手塚治虫漫画全集の239巻。15篇の短いものが収録されてゐる。立ち読みして面白さうだつたので。他にも物色したけど、これだけ買つた。平均点はクリアしてるんでせうね。

2011-07-22

都筑道夫「目撃者は月」光文社文庫(401・used)を読む。何度か途中で読むのをやめた。面白いんだけど、話がわからない、意図がよくわからないのがあつたりして、最後まで読めない、と諦めたこともあつたけれども、どうにか読み終へた。よく作られた、達者な職人芸です。

2011-07-20

東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」小学館(400)を読んだ。どういふ経緯か覚えてないが、娘に読んでみるかい?といふつもりで買つたのだ。読み終はつた、といふので読んだ。なにかの賞を取つてたのと、執事とお嬢様を主役にした謎解きといふことで、ちよつと興味があつた。普通なら買つて読むことはないでせう。
安楽椅子探偵もの。アームチェアディテクティブズと言ふのとどつちが言ひ易いだろ。なかなか面白い。執事影山がお嬢様刑事の宝生麗子に大して発言する大胆なコメントが売り。曰く「お嬢様の目は節穴でございますか」。この二人の日常がもつと書かれてゐると更に良い。影山の推理は見事でも、事件はそれほど複雑ではない。

2011-07-16

都筑道夫の「夜のオルフェウス」を読み返した。とつぜん、どうしても読みたくなつたのだ。これはhiko8さんから教はつた傑作短篇で、オレも読んでゐたのに、その面白さを読み落としてゐたものだ。
これはいいねえ。もしも、オレに映画を撮るチャンスがあつたら、ぜひ映像にしてみたいと思ふものの一つだ。
それからもう一つ、映像にしてみたいもの、──結城昌治の「あるフィルムの背景」。これは文句なしの傑作で、これをモノクロで撮りたいと思つてゐる。今回結城昌治の同名タイトルの短篇集を読み返して「私に触らないで」も面白かつた。これは落語好きな(特に志ん生好きな)氏らしい一種の「湯屋番」風の独り言が読める。

2011-07-11

鮎川哲也「黒いトランク」創元推理文庫。決定版と呼ばれるもの。書き加へたり削つたりしてきたけれども、これを完成品とします、といふことなのでせう。以前、hiko8さんから指摘があつた空のトランクの重量が19.8kgと19.1kgになつてゐることについて。角川版でも、この決定版でもさうなつてゐる。トランクの購入者を調査した際にトランクの製造元が重量に差があつても0.1から0.2kgだと丹那刑事が鬼貫に伝へるところがある(角川版P169、光文社初刊版P200、創元社決定版p194)。そして凡ての版でトランクの動きを表にしたところには、最初のトランクが19.8kg、次に空になつたトランクが19.1kgになつてゐる。これには一切の説明がない。光文社の初刊版では芦辺拓が丁寧な解説を付しているが、そのことには触れてゐないし、創元社の決定版でも有栖川有栖、北村薫、戸川安宣の細かい部分を比較した対談でも触れてみゐない。困りましたねえ。まあ、これは再び時間を見てゆつくり読んで確かめるしかないでせう。説明してあるのに見落とし、読み落としてるのかも知れないので。
2冊続けて読んでみて、最初の印象よりも「凄さ」が感じられなかつた。こんな面倒なトランクの移動なんかしなくても、いいんぢやないの?と。これは先にトリックがあるんだよ、作者もさう書いてるけど。人物や話そのものの面白さをトリックが幾分削いでしまつてゐるやうな気がする。
さて、オレが最初に読んだ「黒いトランク」は角川版で、今回初刊版と読み比べると、ずゐぶん削られてゐるのがわかつた。既に書いた汐留駅の蘊蓄、梅田警部補の風貌がまるで違ふだけでなく、梅田が北原白秋に傾倒してゐる部分などが削除されてゐるから、由美子が鬼貫に「詩人警官」だ、なんて言つてもチンプンカンプンだ。この決定版は概ね初刊版に近づいてゐるから、その辺りはどつちを読んでも同じ。ただ、スリの話がすつかり削られた理由が小林信彦のエッセーだといふので、その理由が知りたくなつた。

2011-07-09

鮎川哲也「黒いトランク」光文社文庫。「黒いトランク」の初刊版。作品としては同じものなので再読扱ひ。ゆつくり時間が取れるやうになつたら読み比べてみよう、と漠然と思つてゐたが、それツて一体いつ来るのか、そのまへに死んでしまふぞ、で読み始め、角川文庫版の記憶は曖昧なのに、なんとなく違ふ印象。鬼貫が登場する「古き愛の唄」に入るまへに一旦読むのを中止して、角川版を読んでみたら、ずゐぶん違ふ。ただ、汐留駅についての記述は角川版でも読んだ気がするのだが。手元にある角川版には、ない。これは再購入したものだから仮に角川版に複数の版があれば、さういふこともある。内容については、創元の決定版を読んでからにしよう。

2011-06-27

坂口安吾「信長」宝島社文庫(399)。一気に読んだ。読み始めるまでは、なんか気乗りしなくて、何度も棚から出してはペラペラめくるけど、読まうといふ気になれない、さういふ日が続いた。なんで信長か、と言ふと、娘が織田信長が好きだ、と言つた、その一言で、信長調べてみるか、とamazonで関係の本を物色するも、意外に少ないんだね。数は多い。どつちなんだと言はれるかも知れないが、歴史上の人物として書いてるものは多いけど、読み物的な、小説などは意外に少ない。なんで、さういふ探し方をしたか、と言ふと娘にも読ませたいと思つたからで、結局面白さうなのは坂口安吾かなあ、に落ち着いたといふワケだ。ほかには司馬遼太郎もなんとかいふ題の小説で斎藤道三と織田信長を書いてるけど、なるべく司馬遼太郎は読みたくないんで(まだ一冊も読んだことない!それが自慢、何に対する自慢かは本人にも不明、山本周五郎も一冊も読んだことないぞ!)。あと辻邦生の「安土往還記」つてのもあつたけど、中学生向きではないな、と思つたのでした。
で、この「信長」は桶狭間までしか扱つてないのが物足りないけれども、実に嬉しい人物として書かれてゐる。斎藤道三もいしし、濃姫もいいねえ。「マムシ敗れたり」のP231の終りから6行目からの5行は感動的。細かい城の位置だの地名だの人名、年号などは覚えてないが、面白い。安吾つて48歳で死んだんだつてねえ。知らなかつた。信長も。

2011-06-16

西村京太郎「青い国から来た殺人者」光文社文庫(398・used)。どうなんだらう、この本が出た当時、フェアーぢやない、といふ意見はなかつたのか。文庫で240頁。犯人らしい人物に繋がる手がかりが判るのが150頁を過ぎたところだ。それと犯人を特定してから、逮捕までが都合良すぎないか。

2011-06-12

東海林さだお「もっとコロッケな日本語を」文春文庫(397・used)。安心して読める、いつもの東海林さだお。くどい気がしてちよつと遠ざかつてゐた。相変はらずイラストが見事だ。

2011-06-02

立川談四楼「声に出して笑える日本語」光文社知恵の森文庫(396・used)。柳亭こみちの小咄に「ねえねえ、お嬢ちやん、お父さん、ゐる?」「いらない」といふのがあつて、始めて聞いたときに大爆笑したものだつたが、この本にも落語の枕で使へさうな話が出てくる。先立つ不孝は、先立つ不幸と書いたことがあるかも知れない。名誉挽回は間違へたことはなくても、汚名返上を汚名挽回と言つたことはあるなあ。笑へただけでなく、為にもなりました。

2011-05-10

佐野洋「動詞の考察」講談社文庫(395・used)。佐野洋の短篇集は外れがない。動詞を使つたタイトルで10篇。謎があつて、それが解決する。いかにもありさうな謎があり、その解決の仕方が意外である、さういふ短篇ばかり。

2011-05-05

三友恒平「必要とされなかった話」IKKICOMIX小学館(394・used)始めて見る絵で、しかも1巻ものだつたので買つてみた。童話といふか、絵本のやうな絵で、鉛筆画ぢやないかと思つた。或る村で村人が預けてゐる食料倉庫が焼け、食べるものが乏しくなり、村長の判断で6人の人間が村から追放になる。その村で誰からも必要だと指名されなかつた人たちだ。たつた1人の肉親である姉が婚約者を選んだため、誰からも必要とされなかつた、その中の1人の少年・織春(オリハルと読む)が主人公。なにが言ひたいのか、よく判らなかつた。始めのはうで、村長と織春とが会話する中に、織春は流行病によく効く薬を一つだけ持つゐるといふ話が出て来るが、その後、その話には触れられない。倉守の家の火事については、もつと徹底的に出火原因を調べるのではないか。兎に角不思議な絵で、ほかにどんなものを書いてゐるのか、ちよつと知りたくなつた。

2011-04-27

伊達友美「夜中にラーメンを食べても太らない技術」扶桑社新書(393・used)ここひと月あまり、一冊の本を読み通す気力がない。見繕つては拾ひ読みをしてゐたが、たまたま渋川のBookOffで見つけて一気に読んでしまつた。ミルク入のコーヒーはよくない、食品添加物が体に悪い、酸化した油は大敵、牛乳や乳製品は日本人の内蔵には向かない、1日3食に固執しない、など、とても参考になりました。

2011-04-09

岡潔「春宵十話」光文社文庫(392・used)を読了。靴は長靴しか履かない、などの伝説は聞いたことがあつた。道徳にかかはる随筆集。自伝的なところもある。仏教を信仰してゐたやうだが、具体的な宗派は不明。数学は情緒であり、種を蒔いて育てる百姓(農民)に似てゐて、物理は数学とはまつたく違ふ世界であり、指物師だといふのは面白い(P53)。

2011-03-09

鯨統一郎「タイムスリップ森鷗外」講談社文庫(391・used)。「タイムスリップ明治維新」には呆れたなどと書いておきながら、状態のいい本書をBookOffで見つけたので買つてしまつた。こつちのはうが面白い。現実との整合性なんてものは、はなから念頭にはないらしい。これを読むとホントに鷗外つて幾つまで生きてたんだらう、と調べたくなる(60歳で没)。なんてたつて鷗外は19歳で今の東大医学部卒業だから、相当優秀なエリート。現代へやつて来て、携帯、ワープロ、果てはパソコンでホームページ作成なんてことも充分こなせる気がする。一応ミステリなので犯人が登場するが、推理は面白くても真犯人が誰だらうと構はない。作者が楽しんで書いてるのは充分判ります。

2011-02-27

鯨統一郎「タイムスリップ明治維新」講談社文庫(390・used)。呆れて口がきけない。半分も読まないうちに興味が失せた。これを小説と呼ぶのでせうか。読み物だらうね。人間がどう、といふ話ではない。答へが出てゐるものをなぞつてゐるだけ。それに付き合はされるだけ。うららは簡単に維新関係者と寝ちまふし、女と寝たくらゐで肝心なことをベラベラ漏らしてしまふはうも情けない話で、そんなことで明治維新といふ革命が実現したのなら、逆に江戸時代つて何だつたの?だよ。軽くねえ?誰が喋つてるかも不明な書き方は相変はらずだし、下級武士が上級武士との身分差の不満が明治維新にかかはつてるかのやうな記述があるけど、山本博文「学校では習わない江戸時代」によれば、恰も無礼打ちが横行してもゐたかのやうな印象がある江戸時代だけど、綱吉以降は建前になつてゐたやうなので、幕末の侍には当て嵌まらないのではないか。

2011-02-23

由良三郎「白紙の殺人予告状」双葉文庫(389・used)。エッセイ「ミステリーを科学すれば」が面白かつたので、いつか実際のミステリを読みたいと思つてゐた。解説にもあつたけど、推理小説と呼ぶよりも探偵小説でせう。白紙の手紙を見て、他人の手紙だつたらなほさら、水につけたり炙つたりしないでせう。ここが納得できない。盗み読みでは治まらない犯罪性がある。