黒川博行・講談社文庫(used)
サントリー・ミステリー大賞を受賞してデビューしたばかりの頃の短篇だといふ。大阪弁の会話の面白さは二の次だと言つてもいい。構成がよく出来てゐて、不自然さを感じた箇所がなかつた。大阪弁がイヤでなければお薦め本。一つだけ。これはホントに個人的な理由であつて、この本の面白さとは一切関係ない。「指輪が言つた」の動機の部分。殺したいと思ふ、それは尤もな動機なのだが、子どもが絡むのは辛いので、題材として扱つてほしくなかつた。
2008-10-31
2008-10-17
160.検死官
パトリシア・コーンウェル/相原真理子訳・講談社文庫(used)
500頁もあつて、しかも文字も最近の文庫よりも小さいから、ホントに長い。でも、最後まで引つ張られる。なかなか面白かつた。或る重要な人物に疑惑が向きさうになる。さう思はせるよう誘導して、……実は。意外な犯人なのは確かだが、犯人探しのミステリーではない。警察内部の話、検死官を巡る組織の話など、組織と人間関係に力点があるやうだ。謎そのものを前面にしたら短篇にしたはうが面白いかも。検死に関する説明やコンピュータの説明などは頭に入らなかつた。因みにパトリシア・コーンウェルつて、オレと同い年なんだよね。オレのはうが学年で一つ上、確か。関係ないけど。
500頁もあつて、しかも文字も最近の文庫よりも小さいから、ホントに長い。でも、最後まで引つ張られる。なかなか面白かつた。或る重要な人物に疑惑が向きさうになる。さう思はせるよう誘導して、……実は。意外な犯人なのは確かだが、犯人探しのミステリーではない。警察内部の話、検死官を巡る組織の話など、組織と人間関係に力点があるやうだ。謎そのものを前面にしたら短篇にしたはうが面白いかも。検死に関する説明やコンピュータの説明などは頭に入らなかつた。因みにパトリシア・コーンウェルつて、オレと同い年なんだよね。オレのはうが学年で一つ上、確か。関係ないけど。
2008-10-13
2008-10-10
158.天童駒殺人事件
中町信・徳間文庫(used)
久し振りの中町信だ。2月の「三幕の殺意」以来。奥さんの早苗が強引な推理で引つ掻き回す氏家周一郎シリーズなので、買ふときちよつと躊躇つたのは事実だ。幾人かの容疑者たちを相手に不用意に推理を披瀝する。それが原因で疑惑を逸らさうとした真犯人が次の殺人を引き起こしたりもする。読者を誘導する仕掛けが実はそのまま登場人物まで巻き込んで殺人が増えてしまふ、みたいな。死ななくてもいい人が仕掛けのために死んで行く、といふか。まあ、中町信はリアリティよりもゲーム的な面白さだね。だから、ズルい、といふ見方も当然出るでせう。これに出て来るダイイング・メッセージの扱ひも、解明するのが遅過ぎる。……と、文句を言ひつつも、買つてしまふのは一種の中毒だな。
久し振りの中町信だ。2月の「三幕の殺意」以来。奥さんの早苗が強引な推理で引つ掻き回す氏家周一郎シリーズなので、買ふときちよつと躊躇つたのは事実だ。幾人かの容疑者たちを相手に不用意に推理を披瀝する。それが原因で疑惑を逸らさうとした真犯人が次の殺人を引き起こしたりもする。読者を誘導する仕掛けが実はそのまま登場人物まで巻き込んで殺人が増えてしまふ、みたいな。死ななくてもいい人が仕掛けのために死んで行く、といふか。まあ、中町信はリアリティよりもゲーム的な面白さだね。だから、ズルい、といふ見方も当然出るでせう。これに出て来るダイイング・メッセージの扱ひも、解明するのが遅過ぎる。……と、文句を言ひつつも、買つてしまふのは一種の中毒だな。
2008-10-05
157.名古屋人の真実
三遊亭円丈・朝日文庫(used)
だいぶまへに名古屋の喫茶店の話を東海林さだおのナントカの丸かぢりで読んだことがある。モーニングセットで腹一杯みたいな話だつたが、この本ではちよつと控へ目に書かれてゐる。どつちが本当か確かめたい気がする。円丈と言へば「御乱心」。あれに出て来る志ん朝はいい。円楽に対する不信感、反感は読後いまでも消えない。話が逸れてる。これは名古屋弁と名古屋の食べ物の話だ。たまに、クックッ、と堪へきれずに笑つてしまふ。さういふところは大抵、落語風にデフォルメしたり、語呂合せしたりの部分と、オレの子どもの頃の食生活に近い話が出たところ。円丈師匠は昭和19年生まれ、こつちは昭和31年生まれで、一回りも開きがあるのに食糧事情が似てるのには驚きだ。名古屋に比べると渋川はずゐぶんと田舎なんだなあ。
だいぶまへに名古屋の喫茶店の話を東海林さだおのナントカの丸かぢりで読んだことがある。モーニングセットで腹一杯みたいな話だつたが、この本ではちよつと控へ目に書かれてゐる。どつちが本当か確かめたい気がする。円丈と言へば「御乱心」。あれに出て来る志ん朝はいい。円楽に対する不信感、反感は読後いまでも消えない。話が逸れてる。これは名古屋弁と名古屋の食べ物の話だ。たまに、クックッ、と堪へきれずに笑つてしまふ。さういふところは大抵、落語風にデフォルメしたり、語呂合せしたりの部分と、オレの子どもの頃の食生活に近い話が出たところ。円丈師匠は昭和19年生まれ、こつちは昭和31年生まれで、一回りも開きがあるのに食糧事情が似てるのには驚きだ。名古屋に比べると渋川はずゐぶんと田舎なんだなあ。
2008-09-27
156.イッセー尾形の人生カタログ
イッセー尾形・朝日文庫(used)
これは面白かつた。一人芝居よりももつと短くて、ちよつとした場面のやうで、状況説明が足りないのに、なんとなく頷ける。全部で51篇。一年52週だから、暮れから正月はお休みだつたのかなあ。まつたく本を読む気にならない、ここ一箇月のあひだ、日に二つ、三つと読み継いで来た。星新一や都筑道夫のショートショートとは違ふ面白さ。それは例へば、落語の小咄的なオチがないものが殆どだ。この先一体どうなる、といふところで読み手は放り出されてしまふ。筋なんか二の次。状況設定と人物重視。一人芝居に似てる。
これは面白かつた。一人芝居よりももつと短くて、ちよつとした場面のやうで、状況説明が足りないのに、なんとなく頷ける。全部で51篇。一年52週だから、暮れから正月はお休みだつたのかなあ。まつたく本を読む気にならない、ここ一箇月のあひだ、日に二つ、三つと読み継いで来た。星新一や都筑道夫のショートショートとは違ふ面白さ。それは例へば、落語の小咄的なオチがないものが殆どだ。この先一体どうなる、といふところで読み手は放り出されてしまふ。筋なんか二の次。状況設定と人物重視。一人芝居に似てる。
2008-09-24
155.パラサイト・イヴ
瀬名秀明・角川書店(used)
1995年の第2回日本ホラー小説大賞に選ばれ、ベストセラーになつたと記憶してゐる。第4回の大賞が貴志祐介の「黒い家」で、これは読んだし、映画にもなつたのでDVDで見てもゐるが、こつちはなかなか読む気にならなかつた。BookOffで、105円の単行本で目立つ汚れもなく状態がよかつたから、つい買てしまつたが、買つてからも、なかなか読む気にならなかつた。カバーの絵が気味が悪かつたこと、プロローグを読んでも、ちつとも興味が湧かない。一箇月放置してゐた。それがちやうどなにも読めない状態と重なる。カバーを外して読んだ。発想はびつくりする。ミトコンドリアなんて中学の理科で習つて、辛うじて名前を知つてるだけ。第三部に入り、300頁を過ぎた頃から章の括りが短くなり、テンポが早くなる。14で文章実験みたいなところが出て来る。23にもある。が、果たして効果的かどうかは疑問。ずるり、どろり、ぎくり、にこり、ごきり、ゆるり、にやり、ぐにやり、ぶくり、びしり、かういふ「○○り」がお気に入りなのか、終盤のクライマックスでたくさん出て来て閉口した。本の最後に選評があり、絶賛されてゐるけれど、ホラー映画には確かにグロテスクなシーンはあるし、汚いと感じる場面もあるが、それを踏まへても、汚いと感じる場面があつた。また、怖さといふ点では期待してゐたものとだいぶ質が違ふ。
1995年の第2回日本ホラー小説大賞に選ばれ、ベストセラーになつたと記憶してゐる。第4回の大賞が貴志祐介の「黒い家」で、これは読んだし、映画にもなつたのでDVDで見てもゐるが、こつちはなかなか読む気にならなかつた。BookOffで、105円の単行本で目立つ汚れもなく状態がよかつたから、つい買てしまつたが、買つてからも、なかなか読む気にならなかつた。カバーの絵が気味が悪かつたこと、プロローグを読んでも、ちつとも興味が湧かない。一箇月放置してゐた。それがちやうどなにも読めない状態と重なる。カバーを外して読んだ。発想はびつくりする。ミトコンドリアなんて中学の理科で習つて、辛うじて名前を知つてるだけ。第三部に入り、300頁を過ぎた頃から章の括りが短くなり、テンポが早くなる。14で文章実験みたいなところが出て来る。23にもある。が、果たして効果的かどうかは疑問。ずるり、どろり、ぎくり、にこり、ごきり、ゆるり、にやり、ぐにやり、ぶくり、びしり、かういふ「○○り」がお気に入りなのか、終盤のクライマックスでたくさん出て来て閉口した。本の最後に選評があり、絶賛されてゐるけれど、ホラー映画には確かにグロテスクなシーンはあるし、汚いと感じる場面もあるが、それを踏まへても、汚いと感じる場面があつた。また、怖さといふ点では期待してゐたものとだいぶ質が違ふ。
2008-09-15
153.154.自虐の詩(上・下)
業田良家・竹書房文庫(used)
ほぼ一箇月、まともに一冊読み通すことができなかつた。PHP文庫から出てゐる相対性理論や量子論のダイジェスト解説本を読み直したり、幾つかの小説を拾ひ読みしたりしてゐた。これは二箇月まへに渋川のBookOffで奇麗な状態であつたのを見つけてほしくなつた。買つて直ぐに上巻を1/3くらゐ読んだところで、ひよつとするとこれは集中的に読まないとホントの面白さが解らないぞ、と直感した。休みのまへの晩から読み出し、一気に読んだ。下巻になつて熊本さんが登場するところから、更に面白くなる。森田幸江の過去が、葉山イサオとの馴れ初めと絡んで語られる。ストーリーマンガだよ。なのに、4コマ。なのにストーリーが展開して、感動的な結末。人生を感じる。絵もときどきシュールで、よい。画面の白さが、よい。もつと語りたいけれども、知ればそれだけ感動が薄くなるやうな気がする。ミステリーの結末みたいなものだ。
ほぼ一箇月、まともに一冊読み通すことができなかつた。PHP文庫から出てゐる相対性理論や量子論のダイジェスト解説本を読み直したり、幾つかの小説を拾ひ読みしたりしてゐた。これは二箇月まへに渋川のBookOffで奇麗な状態であつたのを見つけてほしくなつた。買つて直ぐに上巻を1/3くらゐ読んだところで、ひよつとするとこれは集中的に読まないとホントの面白さが解らないぞ、と直感した。休みのまへの晩から読み出し、一気に読んだ。下巻になつて熊本さんが登場するところから、更に面白くなる。森田幸江の過去が、葉山イサオとの馴れ初めと絡んで語られる。ストーリーマンガだよ。なのに、4コマ。なのにストーリーが展開して、感動的な結末。人生を感じる。絵もときどきシュールで、よい。画面の白さが、よい。もつと語りたいけれども、知ればそれだけ感動が薄くなるやうな気がする。ミステリーの結末みたいなものだ。
2008-08-13
2008-07-20
151.ぼくが愛したゴウスト
打海文三・中央公論新社(used)
11歳の「ぼく」がコンサートの帰りに駅のホームで事故に出くはす。それからをかしなことになつて、心を持たず、尻尾のある、イオウのにをひの体臭を持つ人間の住む世界に移動してしまつた、のか、パラレル・ワールドの話なのか、或は量子論的な幻影なのかといふ、設定が不思議でなかなか面白く読んだ。一つだけ。一枝あぐりはなぜ田之上翔太を逃がさうとしたのか、そのあたりは説明がないので、強引ではないか、といふ気もした。
11歳の「ぼく」がコンサートの帰りに駅のホームで事故に出くはす。それからをかしなことになつて、心を持たず、尻尾のある、イオウのにをひの体臭を持つ人間の住む世界に移動してしまつた、のか、パラレル・ワールドの話なのか、或は量子論的な幻影なのかといふ、設定が不思議でなかなか面白く読んだ。一つだけ。一枝あぐりはなぜ田之上翔太を逃がさうとしたのか、そのあたりは説明がないので、強引ではないか、といふ気もした。
2008-07-07
150.13階段
高野和明・講談社文庫(used)
江戸川乱歩賞受賞作。解説は宮部みゆきで、かなり褒めてる。けれども、どうなんだらうなあ、ミステリとして。文章は上手いと思ふ。すらすら読めるし、意味がよく解る。この題名、これでホントにいいんだらうか。寺の階段が13段。どこの寺もさうなら、なるほど。死刑囚・樹原亮の人物像がまるで見えない。南郷と三上がここまで入れ込む理由が弱い。10年前の三上の事件についても不自然な感じ、こじつけみたいに感じる。意外な犯人、アリバイ・トリックとは縁がない。いろいろケチを付けたけれども、間違ひなく面白い。蛇足、なんといふ偶然か、13113といふ数字の並び。
江戸川乱歩賞受賞作。解説は宮部みゆきで、かなり褒めてる。けれども、どうなんだらうなあ、ミステリとして。文章は上手いと思ふ。すらすら読めるし、意味がよく解る。この題名、これでホントにいいんだらうか。寺の階段が13段。どこの寺もさうなら、なるほど。死刑囚・樹原亮の人物像がまるで見えない。南郷と三上がここまで入れ込む理由が弱い。10年前の三上の事件についても不自然な感じ、こじつけみたいに感じる。意外な犯人、アリバイ・トリックとは縁がない。いろいろケチを付けたけれども、間違ひなく面白い。蛇足、なんといふ偶然か、13113といふ数字の並び。
2008-06-30
黄色い部屋はいかに改装されたか?(再読)
都筑道夫・晶文社
これは植草甚一の「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」と一緒に本棚の直ぐ手の届くところに置いてある。改めて最初から読み直すことは余りないが、時々捲つてゐる。始めから読み直したのは、ミステリについて、もう一度勉強しようと思つたからだ。P35真ん中辺り「いちばん理想的な犯罪は、それが犯罪に見えないことでしょう。殺人の場合は、ことにそうです。だからこそ、冷静に計画するはずなのに、捜査側の動きを予想して、アリバイを偽造したりする。自分が疑われるような可能性があれば、その計画は変更されるべきでしょう」まつたくその通りなんだが、それではミステリそのものを否定しかねない。犯罪小説になつてしまふ。作者が提出した謎を探偵役がどうやつて解明するか、その面白さなのだ。その推理の道筋が納得できるかどうか。都筑さんもおなじやうなことを言つてると思ひますよ。
これは植草甚一の「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」と一緒に本棚の直ぐ手の届くところに置いてある。改めて最初から読み直すことは余りないが、時々捲つてゐる。始めから読み直したのは、ミステリについて、もう一度勉強しようと思つたからだ。P35真ん中辺り「いちばん理想的な犯罪は、それが犯罪に見えないことでしょう。殺人の場合は、ことにそうです。だからこそ、冷静に計画するはずなのに、捜査側の動きを予想して、アリバイを偽造したりする。自分が疑われるような可能性があれば、その計画は変更されるべきでしょう」まつたくその通りなんだが、それではミステリそのものを否定しかねない。犯罪小説になつてしまふ。作者が提出した謎を探偵役がどうやつて解明するか、その面白さなのだ。その推理の道筋が納得できるかどうか。都筑さんもおなじやうなことを言つてると思ひますよ。
2008-06-28
149.親不孝通りディテクティブ
北森鴻・講談社文庫(used)
初めて聞く名前だつたが、第6回鮎川哲也賞受賞者だといふ。舞台は博多で、設定に工夫があるハードボイルドの連作短篇。面白く読んだ。ま、ハードボイルドは括りとしてはミステリだから。気づいた誤植。P80最後の行「あんたに気持ちのいい人はいませんよ」は「あんなに」ではないか。蛇足ながら、第一話の「セヴンス・ヘヴン」の季節が解らない。P18「この季節である」と書かれてゐて、死臭の話が出るから寒い時期ではないにしても。
初めて聞く名前だつたが、第6回鮎川哲也賞受賞者だといふ。舞台は博多で、設定に工夫があるハードボイルドの連作短篇。面白く読んだ。ま、ハードボイルドは括りとしてはミステリだから。気づいた誤植。P80最後の行「あんたに気持ちのいい人はいませんよ」は「あんなに」ではないか。蛇足ながら、第一話の「セヴンス・ヘヴン」の季節が解らない。P18「この季節である」と書かれてゐて、死臭の話が出るから寒い時期ではないにしても。
2008-06-26
148.裁判長!ここは懲役4年でどうすか
北尾トロ・文春文庫(used)
こんなにも易々と裁判所、更には法廷に入ることができ、裁判を傍聴することもできるとは知らなかつた。裁判が神聖なものであつても、けして茶化してはならないとは思はないが、それでも不謹慎だと感じる発言がある。もちろん理不尽なものへの憤りもあるが、野次馬の裁判観察記録として読むはうがいい。本文中にタイトルと同じ発言が出て来るかのやうに、この文庫の解説やAmazonのレビューには書いてあるのだが、強いて挙げれば、P154の5行目に「判決は実刑3年でどうだ」とあるのには気がついたけれども、オレには見つからなかつた。
こんなにも易々と裁判所、更には法廷に入ることができ、裁判を傍聴することもできるとは知らなかつた。裁判が神聖なものであつても、けして茶化してはならないとは思はないが、それでも不謹慎だと感じる発言がある。もちろん理不尽なものへの憤りもあるが、野次馬の裁判観察記録として読むはうがいい。本文中にタイトルと同じ発言が出て来るかのやうに、この文庫の解説やAmazonのレビューには書いてあるのだが、強いて挙げれば、P154の5行目に「判決は実刑3年でどうだ」とあるのには気がついたけれども、オレには見つからなかつた。
2008-06-17
147.タイムクエイク
カート・ヴェネガット/朝倉久志訳・ハヤカワ文庫
10年間時間がスリップして繰り返すといふ設定がある。その10年間を行つたり来たりする。しかしそれは設定に過ぎない。クスクス笑へるところがたくさんあつて、すらすら読めてしまふ。「猫のゆりかご」や「スローターハウス5」と違つて、物語ははつきりしない。私的な部分がかなりあつて、エッセイみたいに読んだ。これが最後だとプロローグに書いてあつて、確か最近(2007.04.11)亡くなつたので、これがホントに最後の作品になつた。
10年間時間がスリップして繰り返すといふ設定がある。その10年間を行つたり来たりする。しかしそれは設定に過ぎない。クスクス笑へるところがたくさんあつて、すらすら読めてしまふ。「猫のゆりかご」や「スローターハウス5」と違つて、物語ははつきりしない。私的な部分がかなりあつて、エッセイみたいに読んだ。これが最後だとプロローグに書いてあつて、確か最近(2007.04.11)亡くなつたので、これがホントに最後の作品になつた。
2008-06-11
146.苦い娘
打海文三・中公文庫
アーバン・リサーチものはこれで終り。順番どほりではないが、ぜんぶ読んだことになる。おはりのはうで佐竹が出て来る。ウネ子は今回は姿を見せない。かはりにまだ中学三年の姫子が登場する。「されど修羅ゆく君は」のときは13歳だつた。ホリー・コールの「トラスト・イン・ミー」といふ曲が出て来るが「コーリング・ユー」なら知つてるけど、これは知らない。相変らずモテる中年男の話だ。3分の2くらゐ読み進むと、唐突にラスト向けて雪崩れ込んでゆく感じ。その感じは氏の作品凡てに言へるのではないか。やつぱり映画を思はせるところがある。
アーバン・リサーチものはこれで終り。順番どほりではないが、ぜんぶ読んだことになる。おはりのはうで佐竹が出て来る。ウネ子は今回は姿を見せない。かはりにまだ中学三年の姫子が登場する。「されど修羅ゆく君は」のときは13歳だつた。ホリー・コールの「トラスト・イン・ミー」といふ曲が出て来るが「コーリング・ユー」なら知つてるけど、これは知らない。相変らずモテる中年男の話だ。3分の2くらゐ読み進むと、唐突にラスト向けて雪崩れ込んでゆく感じ。その感じは氏の作品凡てに言へるのではないか。やつぱり映画を思はせるところがある。
2008-06-09
145.ハルビン・カフェ
打海文三・角川文庫
大藪春彦賞受賞作で、解説によれば「著者の最高傑作に数えられる」さうだ。一人の著者の最高傑作と言へるものを数えることが出来るのか、といふ素朴な疑問は忘れよう。原宏司の「集落の教え100」からの引用があるが、未読の本で先づこれがよく意味が解らない。なにかを象徴してゐるかのやうな、別の意味を持たせた文章である。内容との関連は読み取れなかつた。多くの人物が登場するので、時間の経過、何年に何があつたのかをメモしながら読み始めたが途中から放棄した。時系列的な展開は二次的なものらしかつたから。Pと呼ばれる組織の発生とその後の活動、警察内の刑事、公安、監察などの力関係、韓国、中国、ロシアのマフィアの動きなど、一度には呑み込めなかつたが、洪孝賢を中心にした人物たちとその謎解き、小久保仁をめぐる人間たちの絡みは面白く読めた。短いシーンの集積で、内容だけでなく映画的な印象がある。尤もそれはこれまで読んで来た打海文三の凡ての作品について言へることで、勿論それは氏が映画からスタートしたことと関係してるだらう。
敢へてここで言ふこともないのだが、警察をめぐる小説は実はあまり好きではない。警察内の権力闘争は政治家のそれよりも腐臭がする。臭いものには蓋、ではなくて、吉田健一が言ふ「人が裸になつた時」のやうな「見るに堪へないのであるよりも見るべきではない」ものは見ないでよいといふ意味で、見るべきではないものを過大に評価して「深淵が覗いてゐると思つたり」しないといふ意味のつもりである。なんでも暴いて裸にするのは野蛮だ、と。
気取るな、と言はれるかもしれないが。
大藪春彦賞受賞作で、解説によれば「著者の最高傑作に数えられる」さうだ。一人の著者の最高傑作と言へるものを数えることが出来るのか、といふ素朴な疑問は忘れよう。原宏司の「集落の教え100」からの引用があるが、未読の本で先づこれがよく意味が解らない。なにかを象徴してゐるかのやうな、別の意味を持たせた文章である。内容との関連は読み取れなかつた。多くの人物が登場するので、時間の経過、何年に何があつたのかをメモしながら読み始めたが途中から放棄した。時系列的な展開は二次的なものらしかつたから。Pと呼ばれる組織の発生とその後の活動、警察内の刑事、公安、監察などの力関係、韓国、中国、ロシアのマフィアの動きなど、一度には呑み込めなかつたが、洪孝賢を中心にした人物たちとその謎解き、小久保仁をめぐる人間たちの絡みは面白く読めた。短いシーンの集積で、内容だけでなく映画的な印象がある。尤もそれはこれまで読んで来た打海文三の凡ての作品について言へることで、勿論それは氏が映画からスタートしたことと関係してるだらう。
敢へてここで言ふこともないのだが、警察をめぐる小説は実はあまり好きではない。警察内の権力闘争は政治家のそれよりも腐臭がする。臭いものには蓋、ではなくて、吉田健一が言ふ「人が裸になつた時」のやうな「見るに堪へないのであるよりも見るべきではない」ものは見ないでよいといふ意味で、見るべきではないものを過大に評価して「深淵が覗いてゐると思つたり」しないといふ意味のつもりである。なんでも暴いて裸にするのは野蛮だ、と。
気取るな、と言はれるかもしれないが。
2008-06-02
144.ミステリアス学園
鯨統一郎・光文社文庫(used)
次の短篇がまへの短篇を含んだ形で連作になつて行く入れ子構造。最後の「意外な犯人」は余計。入門篇的なミステリ解説が殆どで、あまり面白くない。打海文三が続いてるので箸休めみたいな気持ちで買つて読んだのだが、遊びが多すぎて退屈だつた。
次の短篇がまへの短篇を含んだ形で連作になつて行く入れ子構造。最後の「意外な犯人」は余計。入門篇的なミステリ解説が殆どで、あまり面白くない。打海文三が続いてるので箸休めみたいな気持ちで買つて読んだのだが、遊びが多すぎて退屈だつた。
2008-05-31
143.一九七二年のレイニー・ラウ
打海文三・小学館(used)
これはいづれ文庫になるかも知れないが、単行本ではどこにも置いてゐないのだつた。もちろん、この周辺、地方都市の本屋には。また古本屋にもなかつたのでAmazonで購入。表題作のレイニー・ラウはウネ子だ。作者があとがきで述べてゐることから類推すれば、なかり実体験(予想、空想、妄想を含む)を元に作られたのだらう。尤も私小説のやうにそのまま書いてるといふ意味ではない。アーバン・リサーチものとリンクさせて読むと頷けるところがある。書き方は違ふけれども、人物は近い。
これはいづれ文庫になるかも知れないが、単行本ではどこにも置いてゐないのだつた。もちろん、この周辺、地方都市の本屋には。また古本屋にもなかつたのでAmazonで購入。表題作のレイニー・ラウはウネ子だ。作者があとがきで述べてゐることから類推すれば、なかり実体験(予想、空想、妄想を含む)を元に作られたのだらう。尤も私小説のやうにそのまま書いてるといふ意味ではない。アーバン・リサーチものとリンクさせて読むと頷けるところがある。書き方は違ふけれども、人物は近い。
2008-05-27
142.死亡推定時刻
朔立木・光文社文庫(used)
先づカバーデザインが目を引いて、長尾みのるといふ人かと思つたら、違つた。作者の名前が読み難いのも記憶に残つたし、裏返して「現役の法律家が描くスリリングな冤罪ドラマの傑作」。冤罪であれば読まねばならない。さう思ひつつ、時々書名を忘れたりしながら半年、漸くBookOffで105円で非常に状態のいいのが手に入つた。それが先月の初め。細かい文章の好みは省いて中身について。冤罪がなぜ起るかと言へば、刑事、取調をする人間の先入観、見込みによる自白の強要、自白偏重の裁判だ。殴られて脅されて自白したと言ふ被告がゐて、それを証人喚問で否定する警官がゐると、警官の主張を疑はず採る裁判官や検事がゐるのだから仕方あるまい。ただ、これが小説であるなら、こんな司法の実態の中でせめて一審死刑判決から控訴審一審差戻しから無罪を勝ち取るまで書いてくれなかつたのか。ドキュメンタリーならやむを得ないが、倍の長さになつても容疑者の無実を晴らしてほしかつた。読み物としては面白いが、死刑判決を受けた容疑者の苦悩、弁護士の苦悩も十分に書かれてゐない。誘拐事件としての緊張感も足りない。でも充分面白く読める。
先づカバーデザインが目を引いて、長尾みのるといふ人かと思つたら、違つた。作者の名前が読み難いのも記憶に残つたし、裏返して「現役の法律家が描くスリリングな冤罪ドラマの傑作」。冤罪であれば読まねばならない。さう思ひつつ、時々書名を忘れたりしながら半年、漸くBookOffで105円で非常に状態のいいのが手に入つた。それが先月の初め。細かい文章の好みは省いて中身について。冤罪がなぜ起るかと言へば、刑事、取調をする人間の先入観、見込みによる自白の強要、自白偏重の裁判だ。殴られて脅されて自白したと言ふ被告がゐて、それを証人喚問で否定する警官がゐると、警官の主張を疑はず採る裁判官や検事がゐるのだから仕方あるまい。ただ、これが小説であるなら、こんな司法の実態の中でせめて一審死刑判決から控訴審一審差戻しから無罪を勝ち取るまで書いてくれなかつたのか。ドキュメンタリーならやむを得ないが、倍の長さになつても容疑者の無実を晴らしてほしかつた。読み物としては面白いが、死刑判決を受けた容疑者の苦悩、弁護士の苦悩も十分に書かれてゐない。誘拐事件としての緊張感も足りない。でも充分面白く読める。
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