ゴーゴリ/平井肇訳・岩波文庫
後藤明生の「挟み撃ち」の始めのはうにゴーゴリの「外套」の話が出て来る。ゴーゴリの名前は聞いたことがあつた。後藤氏は二十歳の頃にこの「外套」と「ネフスキー大通り」を読んで「ゴーゴリ病」にかかり、早稲田露文(因みに東海林さだおも早稲田の露文で、後藤氏の卒業が1957年、東海林氏は1937年生まれで一浪後の入学なので辛うじて重なる?)の卒論は「ゴーゴリ中期の中篇小説」だつたとみづからの年譜に書いてゐる。一度、どんなものか読みたいと思つてゐた。正直なところ、ゴーゴリ病にはならないやうだ。ほかにも読みたいとは思はなかつたから。漸く手に入れた外套をその日のうちに奪はれ、病気で死んでしまつたアカーキー・アカーキエヴッチが幽霊になつて、といふ話である。鼻のはうは或る朝コワリョフといふ男の鼻が取れてしまつた、といふカフカの「変身」的なもの。内容については書かれた年代(ゴーゴリ1809-1852)を思ふと斬新かも知れないが、訳の日本語に時代差を感じる。
2007-10-20
86.夜の訪問者
プリーストリー/安藤貞雄訳・岩波文庫
簡単な25までの数字をまちがへてゐた。21の「奥利根殺人行」の次がやはり「21. 湯野上温泉殺人事件」となつてゐたことに、ついさつき気がついたのだ。なので、ひとつづつ順繰りになほした。
これはきのふ読みをへた。一昨日、殆ど読みをはつてゐたのだが、最後のドンデンがへしのところを読みなほした。題名について一言、先に書いておく。原題は an inspector calls で、警部の来訪。最初の翻訳(1951年)が「夜の来訪者」で、それが含蓄的だと解説にあるが、「警部の来訪」もまた含蓄的だと、オレは思ふんだけど。……裕福な、と説明してある四人家族と娘の婚約者が一同に介した夕食の後、とつぜん警部が訪れる。警部が伝へた家族の誰もが知らなかつた筈の若い女の自殺事件に四人の家族がしだいにかはつて行く。そして一つの解決。更にドンデンがへし、と言つてしまつたら読み手の興をそいでしまふか。一気に読ませる。短い作品なので、半日あれば読めるかも。
ホントに一箇月ぶり最後まで一冊読んだ。「アメリカの鱒釣り」と「見知らぬ乗客」が途中まで。「幕末・維新」が1/3くらゐ。「フランドルへの道」が第一章まで。「1984年」が半分くらゐ。「クリシーの静かな日々」が最初の「マドマゼル・クロード」を読んだだけ。「マルーシの巨像」が22頁まで。中途半端なのはそれだけかな。やつぱキチンと最後まで読まないと。途中、ちよつと忘れたり、大事なところを読み飛ばしたりしたとしても。
簡単な25までの数字をまちがへてゐた。21の「奥利根殺人行」の次がやはり「21. 湯野上温泉殺人事件」となつてゐたことに、ついさつき気がついたのだ。なので、ひとつづつ順繰りになほした。
これはきのふ読みをへた。一昨日、殆ど読みをはつてゐたのだが、最後のドンデンがへしのところを読みなほした。題名について一言、先に書いておく。原題は an inspector calls で、警部の来訪。最初の翻訳(1951年)が「夜の来訪者」で、それが含蓄的だと解説にあるが、「警部の来訪」もまた含蓄的だと、オレは思ふんだけど。……裕福な、と説明してある四人家族と娘の婚約者が一同に介した夕食の後、とつぜん警部が訪れる。警部が伝へた家族の誰もが知らなかつた筈の若い女の自殺事件に四人の家族がしだいにかはつて行く。そして一つの解決。更にドンデンがへし、と言つてしまつたら読み手の興をそいでしまふか。一気に読ませる。短い作品なので、半日あれば読めるかも。
ホントに一箇月ぶり最後まで一冊読んだ。「アメリカの鱒釣り」と「見知らぬ乗客」が途中まで。「幕末・維新」が1/3くらゐ。「フランドルへの道」が第一章まで。「1984年」が半分くらゐ。「クリシーの静かな日々」が最初の「マドマゼル・クロード」を読んだだけ。「マルーシの巨像」が22頁まで。中途半端なのはそれだけかな。やつぱキチンと最後まで読まないと。途中、ちよつと忘れたり、大事なところを読み飛ばしたりしたとしても。
2007-09-17
笑われる理由(再読)
立川志の輔・祥伝社NON BOOK
もう十年以上まへに読んだもの。最初のページに志の輔師匠のサインと角印を頂いてをります。しばらく「鋼の錬金術師」にはまつてゐたから、文を読むのは久し振り。ま、これは落語のと言ふよりもタレント本。どうしてわたしは噺家になつたのか、といふ経緯やテレビやラジオの裏側が書いてある。そして勿論、師匠談志のこと。ちよつとしか触れてないけど、実はこれが読みたいんだな。弟子から見た談志の話が読みたいワケさ。
もう十年以上まへに読んだもの。最初のページに志の輔師匠のサインと角印を頂いてをります。しばらく「鋼の錬金術師」にはまつてゐたから、文を読むのは久し振り。ま、これは落語のと言ふよりもタレント本。どうしてわたしは噺家になつたのか、といふ経緯やテレビやラジオの裏側が書いてある。そして勿論、師匠談志のこと。ちよつとしか触れてないけど、実はこれが読みたいんだな。弟子から見た談志の話が読みたいワケさ。
2007-08-24
85.四国周遊殺人連鎖
中町信・ケイブンシャ文庫(used)
期待してたワケではないが、もしかたら、とは思つてゐた。こないだ高崎のほんだらけで2冊見つけたから、なにげに朝倉のBookOffに入つたら、あつた。あと10冊くらゐなので、集めてしまはうか、とも思ふが。──これは氏家シリーズの3作目。この前に佐渡金山、阿寒湖と書かれていることは、この中で氏家たち自らが語つてゐる。娘が誘拐されてるのに四国に旅行する親つてのは、話の中でも不自然だと言つてるけど、不自然だよ。そのことに目を瞑れば、面白い。氏家シリーズは氏家たちの視線で常に推理が展開して行くから、惑はされるけれども、それは寧ろ計算で、作者の仕掛けなのかも知れない。
期待してたワケではないが、もしかたら、とは思つてゐた。こないだ高崎のほんだらけで2冊見つけたから、なにげに朝倉のBookOffに入つたら、あつた。あと10冊くらゐなので、集めてしまはうか、とも思ふが。──これは氏家シリーズの3作目。この前に佐渡金山、阿寒湖と書かれていることは、この中で氏家たち自らが語つてゐる。娘が誘拐されてるのに四国に旅行する親つてのは、話の中でも不自然だと言つてるけど、不自然だよ。そのことに目を瞑れば、面白い。氏家シリーズは氏家たちの視線で常に推理が展開して行くから、惑はされるけれども、それは寧ろ計算で、作者の仕掛けなのかも知れない。
2007-08-18
2007-08-17
83.湯野上温泉殺人事件
中町信・TOKUMA NOVELS(used)
酔ひどれ文さんシリーズの2作目。1作目は「社内殺人」で、太田のほんだらけで200円で見つけた。これはやはり中町信の文さんシリーズの一つ「人事課長殺し」と一緒に並んで高崎のほんだらけにあつたものだ。大ドンデン返しが予想されるので最初から「まさかなあ」の人物を犯人ではないか、と読んでしまつた。写真を使つたダイイング・メッセージには無理がある。だつて、この写真のことが出た時、段ボール抱へてる人は誰だらう、と思つたのに、最後の最後で取り上げられる、つてのは、どうでせう。ダイイング・メッセージについては見事だ、と思つたものがない。でも面白いスね。氏家シリーズがあまり好ましくないのだよ。
酔ひどれ文さんシリーズの2作目。1作目は「社内殺人」で、太田のほんだらけで200円で見つけた。これはやはり中町信の文さんシリーズの一つ「人事課長殺し」と一緒に並んで高崎のほんだらけにあつたものだ。大ドンデン返しが予想されるので最初から「まさかなあ」の人物を犯人ではないか、と読んでしまつた。写真を使つたダイイング・メッセージには無理がある。だつて、この写真のことが出た時、段ボール抱へてる人は誰だらう、と思つたのに、最後の最後で取り上げられる、つてのは、どうでせう。ダイイング・メッセージについては見事だ、と思つたものがない。でも面白いスね。氏家シリーズがあまり好ましくないのだよ。
2007-08-12
82.奥利根殺人行
中町信・ケイブンシャノベルズ(used)
偶然、Book Offで見つけた。もう近所のBook Offやほんだらけでは手元にない中町信は手に入らないと思つてゐた。
これはなかなかよく出来てるんぢやないかなあ。多門耕作シリーズの3作目で、これ以降多門耕作シリーズは書かれてゐない。このシリーズは気に入つてゐるので残念だ。特に多門の推理の仕方が、他の中町作品と微妙に違ふやうに思へる。犯人を絞つて行く時にあまり飛躍しない。と言ふか、判断保留、可能性もある、といふ姿勢でゐることがある。そのはうが自然だと思ふので気に入つてる。相棒の堀田晴代が典型的な中町的な素人探偵かな。中町作品ではお馴染みの、読み手が勝手に勘違ひして推理するやうに書かれてゐるが、プロローグを注意して(先入観を捨てて)読めば犯人は当て易いし、トリックも解り易い。蛇足ながら、多門耕作は渋川の出身で、渋川高校のOBなのださうだ。
偶然、Book Offで見つけた。もう近所のBook Offやほんだらけでは手元にない中町信は手に入らないと思つてゐた。
これはなかなかよく出来てるんぢやないかなあ。多門耕作シリーズの3作目で、これ以降多門耕作シリーズは書かれてゐない。このシリーズは気に入つてゐるので残念だ。特に多門の推理の仕方が、他の中町作品と微妙に違ふやうに思へる。犯人を絞つて行く時にあまり飛躍しない。と言ふか、判断保留、可能性もある、といふ姿勢でゐることがある。そのはうが自然だと思ふので気に入つてる。相棒の堀田晴代が典型的な中町的な素人探偵かな。中町作品ではお馴染みの、読み手が勝手に勘違ひして推理するやうに書かれてゐるが、プロローグを注意して(先入観を捨てて)読めば犯人は当て易いし、トリックも解り易い。蛇足ながら、多門耕作は渋川の出身で、渋川高校のOBなのださうだ。
2007-08-11
81.遊動亭円木
辻原登・文春文庫(used)
この人の本ははじめて読んだ。「村の名前」で芥川賞、本作で谷崎潤一郎賞。毎日新聞の連載小説が、いまはこの人と宮部みゆき。どつちも読んでないけど。噺家が主人公で、しかも盲目。円木をふくめた人間模様。ついつい語りたいところを抑へた書き方なので、余韻が残る。話の筋にも工夫があるので、一つの長篇のやうに読むことも可能だらう。谷崎の「台所太平記」、山口瞳の「居酒屋兆治」、井伏鱒二の「荻窪風土記」などを思ひ起こした。「居酒屋兆治」が近いか。もうこの年になると、この手の話は自分の人生だけで沢山だな。
──ひとつだけ余計なこと。円木の父の命日が五月十四日。第一話で相撲の夏場所見物に行く日が五月十三日。この部分の記述に翌日が父親の命日だとは一言も触れてないのは如何なものか。円木の父親の死に方は極楽往生ではないし、後に結婚することになる寧々の父親との絡みがあり、円木は忘れることはないだらうし、妹もその日が父の命日の前日である、と言葉の端にも上らないのは、この時は、と言ふのは作者が書き始めた時には父親の命日が決まつてなかつたのかも知れないが。(07.08.12追加)
この人の本ははじめて読んだ。「村の名前」で芥川賞、本作で谷崎潤一郎賞。毎日新聞の連載小説が、いまはこの人と宮部みゆき。どつちも読んでないけど。噺家が主人公で、しかも盲目。円木をふくめた人間模様。ついつい語りたいところを抑へた書き方なので、余韻が残る。話の筋にも工夫があるので、一つの長篇のやうに読むことも可能だらう。谷崎の「台所太平記」、山口瞳の「居酒屋兆治」、井伏鱒二の「荻窪風土記」などを思ひ起こした。「居酒屋兆治」が近いか。もうこの年になると、この手の話は自分の人生だけで沢山だな。
──ひとつだけ余計なこと。円木の父の命日が五月十四日。第一話で相撲の夏場所見物に行く日が五月十三日。この部分の記述に翌日が父親の命日だとは一言も触れてないのは如何なものか。円木の父親の死に方は極楽往生ではないし、後に結婚することになる寧々の父親との絡みがあり、円木は忘れることはないだらうし、妹もその日が父の命日の前日である、と言葉の端にも上らないのは、この時は、と言ふのは作者が書き始めた時には父親の命日が決まつてなかつたのかも知れないが。(07.08.12追加)
2007-07-30
80.ガイアの科学 地球生命圏
J.E.ラブロック/スワミ・ブレム・プラブッタ訳・工作舎
ガイアとは生きてゐる地球、生命体としての地球──さういふ意味だと漠然と思つてゐたが、P36に「地球の生命圏、大気圏、海洋、そして土壌を含んだひとつの複合体」と定義されてゐるし、ガイア仮説とは、地球、大気、海洋の物理的化学的条件がかつても今も生命自体の原則によつて積極的に生命に相応しい快適なものに保たれてゐる、とする仮説だと巻末の用語定義にある。つまり、生命と惑星(この地球)の条件は別々に進化したわけではなく、生命の存在と大きく関はつてゐると言ふ。地球に生命がなければ、この惑星は火星や金星になつてゐた、とも。大気汚染などにも触れてをり、オゾンの破壊──減少についてはかなり楽観的だ。化学の説明が覚えられなくて、意味がよく解らないところもあつたが、概ねそんなところだ。予想してゐたほど難しくはなかつた。シェルドレイクの「生命のニューサイエンス」のはうが、よつぽど厄介だつた。
ガイアとは生きてゐる地球、生命体としての地球──さういふ意味だと漠然と思つてゐたが、P36に「地球の生命圏、大気圏、海洋、そして土壌を含んだひとつの複合体」と定義されてゐるし、ガイア仮説とは、地球、大気、海洋の物理的化学的条件がかつても今も生命自体の原則によつて積極的に生命に相応しい快適なものに保たれてゐる、とする仮説だと巻末の用語定義にある。つまり、生命と惑星(この地球)の条件は別々に進化したわけではなく、生命の存在と大きく関はつてゐると言ふ。地球に生命がなければ、この惑星は火星や金星になつてゐた、とも。大気汚染などにも触れてをり、オゾンの破壊──減少についてはかなり楽観的だ。化学の説明が覚えられなくて、意味がよく解らないところもあつたが、概ねそんなところだ。予想してゐたほど難しくはなかつた。シェルドレイクの「生命のニューサイエンス」のはうが、よつぽど厄介だつた。
2007-07-22
79.国家の品格
藤原正彦・新潮新書(used)
「バカの壁」ほどではないが、読まなくても一向に差し支へない。現在、世界が陥つてゐる精神面での荒廃は、論理性や合理性の尊重・偏重が原因であり、修復するには先づ「武士道精神」を復活させるべきだ、といふ意味のことが書いてある。論理だけでなく、情緒と形を重んじろ、その尤も端的なものが武士道精神である、と。しかし、この武士道は新渡戸稲造の武士道解釈に基づいてゐるさうだ。武士道は素晴らしいものであり、なにしろ武士は貧しかつたが、農民(町民だつたかな?)から尊敬されてゐたのだ、と書かれてゐたのがどこだつたか、探したけど見つからないのだが、後半に入つて読むのにかなり違和感があつた。よつぽど暇だつたら、読んでみるのもいいかも知れない。
「バカの壁」ほどではないが、読まなくても一向に差し支へない。現在、世界が陥つてゐる精神面での荒廃は、論理性や合理性の尊重・偏重が原因であり、修復するには先づ「武士道精神」を復活させるべきだ、といふ意味のことが書いてある。論理だけでなく、情緒と形を重んじろ、その尤も端的なものが武士道精神である、と。しかし、この武士道は新渡戸稲造の武士道解釈に基づいてゐるさうだ。武士道は素晴らしいものであり、なにしろ武士は貧しかつたが、農民(町民だつたかな?)から尊敬されてゐたのだ、と書かれてゐたのがどこだつたか、探したけど見つからないのだが、後半に入つて読むのにかなり違和感があつた。よつぽど暇だつたら、読んでみるのもいいかも知れない。
2007-07-17
模倣の殺意(再読)
中町信・創元推理文庫
これはやつぱり面白い。二度目、この前の状態の「新人文学賞殺人事件」も読んだから三度目になるわけだが、面白い。センテンスが短く、東海林さだおみたいに行替へが早いから、スラスラ読めてしまふ。「とか」はあんまり気にならなくなつた。この仕掛けはホントに意外だつた。そんなのありかよ、と思ふけど、あり得ないとは言へない。まだここでは「あの人が犯人だ」と登場人物が激しく独断的に(読者のはうが寧ろ「おいおい、そこまで言つて大丈夫かい?」と心配するほど)思ひ込み、刑事さながら問ひ詰める、といふ展開は表に出てないけど、柳沢邦夫を疑ふ津久見伸助にはその兆候がある。
これはやつぱり面白い。二度目、この前の状態の「新人文学賞殺人事件」も読んだから三度目になるわけだが、面白い。センテンスが短く、東海林さだおみたいに行替へが早いから、スラスラ読めてしまふ。「とか」はあんまり気にならなくなつた。この仕掛けはホントに意外だつた。そんなのありかよ、と思ふけど、あり得ないとは言へない。まだここでは「あの人が犯人だ」と登場人物が激しく独断的に(読者のはうが寧ろ「おいおい、そこまで言つて大丈夫かい?」と心配するほど)思ひ込み、刑事さながら問ひ詰める、といふ展開は表に出てないけど、柳沢邦夫を疑ふ津久見伸助にはその兆候がある。
2007-07-13
飛騨路殺人事件(再読)
中町信・TOKUMA NOVELS
二年くらゐ前に読んだから、殆ど忘れてゐたけれども、登場人物の会話を中心に推理が進むといふ、中町信の定石。だから後半で真犯人は誰かといふ辺りで、強引な推理と言ふか、さう決め付けるのはまだ早いでせうに、とか、あの腕時計のことはどうなつたの、とか、どうやつて南条美雪を突き落としたのか説明がな〜い、とか、殺人犯を別人と思ひ込んでた強盗犯人が、なんで脅迫状の下書きの一行目の頭に新田多岐子と書いたのか、など、疑問が残るのだ。前に読んだ時の感想はどうだつたのか。かういふところが中町信の魅力でもあるのだが。作家専業になる前、1988年以前のはうが充実してる、といふ折原一の意見に賛成。「模倣の殺意」でも読み返すか。
二年くらゐ前に読んだから、殆ど忘れてゐたけれども、登場人物の会話を中心に推理が進むといふ、中町信の定石。だから後半で真犯人は誰かといふ辺りで、強引な推理と言ふか、さう決め付けるのはまだ早いでせうに、とか、あの腕時計のことはどうなつたの、とか、どうやつて南条美雪を突き落としたのか説明がな〜い、とか、殺人犯を別人と思ひ込んでた強盗犯人が、なんで脅迫状の下書きの一行目の頭に新田多岐子と書いたのか、など、疑問が残るのだ。前に読んだ時の感想はどうだつたのか。かういふところが中町信の魅力でもあるのだが。作家専業になる前、1988年以前のはうが充実してる、といふ折原一の意見に賛成。「模倣の殺意」でも読み返すか。
2007-07-08
78.迷宮の美術史 名画贋作
岡部昌幸(監修)・青春新書INTETLLIGECE
明治維新に関する新書を読んでゐたけど、途中で人名や用語、事実関係が頭に入らなくなつて、これが手に入つたので読み始めた。贋作には興味があつた。特にこれにはフェルメールの贋作で知られたメーヘレンの話が出てるので半分くらゐ一気に読み進んだ。フェルメールは大好きで、中央公論から出てゐる「フェルメール全作品」(25年ほど前で43,000円!よく買つたよなあ、今は絶版)も持つてゐるし、国外持ち出しが最後だと言はれた「青いターバンの娘」の実物を家族連れで大阪まで見に行つたものだ(懐かしいなあ)。勿論、スカーレット・ヨハンソンが出てゐた映画「青いターバンの娘」もDVDで見た。HPでその感想は書いてるから繰り返さないけど。メーヘレンだけでなく、贋作の実作家や贋作を画策したり販売した画商の話、世界中の美術館に贋作が真作として展示されてゐる可能性もある、とは面白い。国立西洋美術館だつて騙されちやふんだから、素人なんて一捻りだらう。偽物か本物か、有名か無名か、どつちが偉いか、貴重か、さういふ基準で絵を見たら、さうなるよな。なかなか面白かつたけど、もう少し詳しく、また図版での比較ももつとあつたらいいのだが、新書では限界ですかね。
明治維新に関する新書を読んでゐたけど、途中で人名や用語、事実関係が頭に入らなくなつて、これが手に入つたので読み始めた。贋作には興味があつた。特にこれにはフェルメールの贋作で知られたメーヘレンの話が出てるので半分くらゐ一気に読み進んだ。フェルメールは大好きで、中央公論から出てゐる「フェルメール全作品」(25年ほど前で43,000円!よく買つたよなあ、今は絶版)も持つてゐるし、国外持ち出しが最後だと言はれた「青いターバンの娘」の実物を家族連れで大阪まで見に行つたものだ(懐かしいなあ)。勿論、スカーレット・ヨハンソンが出てゐた映画「青いターバンの娘」もDVDで見た。HPでその感想は書いてるから繰り返さないけど。メーヘレンだけでなく、贋作の実作家や贋作を画策したり販売した画商の話、世界中の美術館に贋作が真作として展示されてゐる可能性もある、とは面白い。国立西洋美術館だつて騙されちやふんだから、素人なんて一捻りだらう。偽物か本物か、有名か無名か、どつちが偉いか、貴重か、さういふ基準で絵を見たら、さうなるよな。なかなか面白かつたけど、もう少し詳しく、また図版での比較ももつとあつたらいいのだが、新書では限界ですかね。
2007-06-25
77.忘れられた日本人
宮本常一・岩波文庫
これは網野善彦の本で知り、すぐに手に入れ(探し始めた初日にヨークベニマルのくまざは書店で見つけた)ずつと、ゆつくり読んでた。この本の題名を含めた著作が網野善彦にはある。ここには確かに忘れられた日本人がゐて、それはオレの祖父や親父の代までは当たり前の人たちだつたのだ。同じだとは言はないけれども、繋がつてゐたのが解る。民俗学は馴染めなかつたが、これは面白く読めた。次から次へとページを捲らずにはゐられない面白さとは質が違ふが。中の「土佐源氏」は確かに創作だと思ふ人もゐよう。田中小実昌の小説を思ひ出した。もう一度ゆつくり読まうと思つてゐる。それは網野善彦の本もさう。実際コメント出来るほど解つてないから。これは凄いことが書いてあるぞ、つてのを感じるだけだから。
これは網野善彦の本で知り、すぐに手に入れ(探し始めた初日にヨークベニマルのくまざは書店で見つけた)ずつと、ゆつくり読んでた。この本の題名を含めた著作が網野善彦にはある。ここには確かに忘れられた日本人がゐて、それはオレの祖父や親父の代までは当たり前の人たちだつたのだ。同じだとは言はないけれども、繋がつてゐたのが解る。民俗学は馴染めなかつたが、これは面白く読めた。次から次へとページを捲らずにはゐられない面白さとは質が違ふが。中の「土佐源氏」は確かに創作だと思ふ人もゐよう。田中小実昌の小説を思ひ出した。もう一度ゆつくり読まうと思つてゐる。それは網野善彦の本もさう。実際コメント出来るほど解つてないから。これは凄いことが書いてあるぞ、つてのを感じるだけだから。
2007-06-11
76.日本の歴史をよみなおす(全)
網野善彦・ちくま学芸文庫
ヨークベニマルの本屋で立ち読みしてゐて、ワクワクした。十四世紀、中世の日本で大きな転換期があつた、と言ふ。つまり、明治維新から現代へ、といふ繋がりではない、十五世紀から現代までは一繋がりだと言ふワケだ。なぜさうなのか。それがこれには書かれてゐる。まだ読み終へたばかりで頭の中のあちこちに散らばつてるから説明出来ないけれども、先づ、これだけは書いて置かう。百姓=農民ではない、といふこと。水呑は田畑を持たない小作以下の農民だけを指すのではない。飢饉は農民の少ない土地で起つた。それを知つただけでも1,260円(税込)は安い。ほかにもたくさん、これこそ正に目からウロコが落ちる。網野善彦をもつと知りたい。……続けて二冊読んで、要するに小説が読めなかつたんだ、と漸く気がついた。去年、食べ過ぎたかもなあ。
ヨークベニマルの本屋で立ち読みしてゐて、ワクワクした。十四世紀、中世の日本で大きな転換期があつた、と言ふ。つまり、明治維新から現代へ、といふ繋がりではない、十五世紀から現代までは一繋がりだと言ふワケだ。なぜさうなのか。それがこれには書かれてゐる。まだ読み終へたばかりで頭の中のあちこちに散らばつてるから説明出来ないけれども、先づ、これだけは書いて置かう。百姓=農民ではない、といふこと。水呑は田畑を持たない小作以下の農民だけを指すのではない。飢饉は農民の少ない土地で起つた。それを知つただけでも1,260円(税込)は安い。ほかにもたくさん、これこそ正に目からウロコが落ちる。網野善彦をもつと知りたい。……続けて二冊読んで、要するに小説が読めなかつたんだ、と漸く気がついた。去年、食べ過ぎたかもなあ。
2007-06-09
75.タバコ有害論に意義あり!
名取春彦、上杉正幸・洋泉社新書
統計やグラフなどのデータを見る時は、鼻から疑つて掛かる、と言ふか、そこに出てゐる数字をあんまり信用しないやうにしてゐる。だいぶ前にチラと見た、たぶん大泉図書館で借りたか、立ち読みしたか、タバコが肺癌の原因であるといふのは捏造か、都合の良い統計結果に過ぎない、と書いた本があつて、それが頭にあつたからベニマルの本屋でこれを見つけてパラパラと捲るうち買ふ気になつたのだらう。通称「タバコ白書」(「喫煙と健康──喫煙と健康問題に関する報告書」1987)のデータが実はご都合主義の産物だ、と告発してゐるのだ。要は「白書」を中心になつて纏めた平山雄つて学者が掲げたデータへの言及で、うんうん、さうさう、と納得する。前半の名取氏の部分が特に面白い。タバコの煙は水蒸気やタールの粒子だから肺に蓄積することはなく、肺が真つ黒になるなんてウソだとか、死亡率や発ガン率の根拠になつてゐるグラフや表の杜撰な解釈にも言及してゐて、小気味いい。もちろん害がないワケはないけど、肺癌よりも喉頭癌で、受動喫煙なんて根拠がないし、吸はない人に不快な思ひをさせないやう注意を払へばいいのだ。ほぼ一日で一気に読んでしまつた。
統計やグラフなどのデータを見る時は、鼻から疑つて掛かる、と言ふか、そこに出てゐる数字をあんまり信用しないやうにしてゐる。だいぶ前にチラと見た、たぶん大泉図書館で借りたか、立ち読みしたか、タバコが肺癌の原因であるといふのは捏造か、都合の良い統計結果に過ぎない、と書いた本があつて、それが頭にあつたからベニマルの本屋でこれを見つけてパラパラと捲るうち買ふ気になつたのだらう。通称「タバコ白書」(「喫煙と健康──喫煙と健康問題に関する報告書」1987)のデータが実はご都合主義の産物だ、と告発してゐるのだ。要は「白書」を中心になつて纏めた平山雄つて学者が掲げたデータへの言及で、うんうん、さうさう、と納得する。前半の名取氏の部分が特に面白い。タバコの煙は水蒸気やタールの粒子だから肺に蓄積することはなく、肺が真つ黒になるなんてウソだとか、死亡率や発ガン率の根拠になつてゐるグラフや表の杜撰な解釈にも言及してゐて、小気味いい。もちろん害がないワケはないけど、肺癌よりも喉頭癌で、受動喫煙なんて根拠がないし、吸はない人に不快な思ひをさせないやう注意を払へばいいのだ。ほぼ一日で一気に読んでしまつた。
2007-06-01
74.目からウロコの近現代史
河合敦・PHP文庫
やはり、もとに戻すことにした。前の形に慣れてしまつたせゐか自分が読み難いので。
特に目からウロコは落ちなかつたが、兎に角いま読んでるところのエピソードが時代の流れでどの辺になるのか解り難くて往生した。取り上げる話題で前後するのは仕方ないが、これぢやあ摑めないやね。意外性なんかよりも、かう、歴史がどう動いてゐたか、動いて来たか、だ。時々入つて来る個人的な感想、私的な記述は邪魔。解釈が読みたいのではなく、歴史の事実を知りたいんだから。「数学の広場」のはうはまだ単位で躓いて「分数と小数」に行けない。練習問題で「なんで?」が解決しない。
やはり、もとに戻すことにした。前の形に慣れてしまつたせゐか自分が読み難いので。
特に目からウロコは落ちなかつたが、兎に角いま読んでるところのエピソードが時代の流れでどの辺になるのか解り難くて往生した。取り上げる話題で前後するのは仕方ないが、これぢやあ摑めないやね。意外性なんかよりも、かう、歴史がどう動いてゐたか、動いて来たか、だ。時々入つて来る個人的な感想、私的な記述は邪魔。解釈が読みたいのではなく、歴史の事実を知りたいんだから。「数学の広場」のはうはまだ単位で躓いて「分数と小数」に行けない。練習問題で「なんで?」が解決しない。
2007-05-26
ここまでやつて来て、なんの前触れもなく書き方を変へることにした。タイトルに番号と書名、記事の冒頭に著者名といふのはどうも、このブログのタイトルと合はないなあ、とずゐぶん前(と言ふか始めて直ぐくらゐ)から思つてゐたのだ。ときどき読書日記なんだから、番号付けて何冊読んで、つてのは違ふな。──といふわけで、ここから、けふからときどき、読んでる本について書いて行く形を採ることにした。
さて、いま「目からウロコの近現代史」河合敦/PHP文庫(本については書名は鍵括弧付き、続けて著者──敬称略で、今後は凡てさうする──名、出版社名を記入し、次に再読は再、古本はU、再読古本は再Uといふ風にする)を、さうだなあ、かれこれ五日間くらゐ、ちびちび読んでゐるのだが、殆どがエピソードなので、歴史のお勉強としては頼りない。いま5分の2ほど読み進んだ。明治のところ。維新に動いて行く江戸末期から知りたかつたのだが、まあ手頃な入門篇のつもりだつたのだから、文句は言ふまい。著者は1965年生まれの現役の教師である旨、後ろの経歴に記されてゐる。これと「フランドルへの道」クロード・シモン/白水社は第二部の頭のところで滞つてるけど、たまにペラペラと始めから読み直したりしてゐる。あと一つ「数学の広場1数の生いたち」遠山啓/ほるぷ出版もバリンジャーの次に読み始めてゐて、いま第2章連続量のところが間もなく終る51頁で、次は第3章分数と小数。実はほかにヘンリ・ミラーの「クリシーの静かな日々」「マルーシの巨像」を読みかけてゐる。だから現在ほぼ同時進行的に5冊読んでゐることになる。滅茶苦茶だね。
さて、いま「目からウロコの近現代史」河合敦/PHP文庫(本については書名は鍵括弧付き、続けて著者──敬称略で、今後は凡てさうする──名、出版社名を記入し、次に再読は再、古本はU、再読古本は再Uといふ風にする)を、さうだなあ、かれこれ五日間くらゐ、ちびちび読んでゐるのだが、殆どがエピソードなので、歴史のお勉強としては頼りない。いま5分の2ほど読み進んだ。明治のところ。維新に動いて行く江戸末期から知りたかつたのだが、まあ手頃な入門篇のつもりだつたのだから、文句は言ふまい。著者は1965年生まれの現役の教師である旨、後ろの経歴に記されてゐる。これと「フランドルへの道」クロード・シモン/白水社は第二部の頭のところで滞つてるけど、たまにペラペラと始めから読み直したりしてゐる。あと一つ「数学の広場1数の生いたち」遠山啓/ほるぷ出版もバリンジャーの次に読み始めてゐて、いま第2章連続量のところが間もなく終る51頁で、次は第3章分数と小数。実はほかにヘンリ・ミラーの「クリシーの静かな日々」「マルーシの巨像」を読みかけてゐる。だから現在ほぼ同時進行的に5冊読んでゐることになる。滅茶苦茶だね。
2007-05-13
2007-05-09
73.煙で描いた肖像画
ビル・S・バリンジャー/矢口誠訳・創元推理文庫
これは1950年に刊行されたもので、古典と読んでいいかどうか、ベストテン式に挙げられるミステリー作品はこの頃に書かれたものが多い。或はポオとか、ホームズものなど、もつと古くなる。逆にここ10年くらゐのあひだに書かれた海外のミステリーを読む機会のはうが少ないワケだ。翻訳する人がゐないと読めない。あれだ、パトリシア・コーンウェルなんかは最近の人だ。確か、オレと同い年くらゐの筈。……ま、そんなことはどうでもいい。主人公のクラッシーが17才で手にする美人コンテストの賞金が100ドル。その賞金を作るために地方新聞社の経営者が処分した車の代金が75ドル。クラッシーの婚約者バッカムが抱へたカード負債額1,200ドル。2007年5月の為替レートだと1ドル=120円かな。賞金12,000円、車が7,500円、負債144,000円。しかし、1950年代の物価はどうだつたか、ちよつと調べた。凡そ10分の1。大卒の初任給(公務員)が10,000円に満たない。とすると、賞金120,000円→公務員給料1年分、負債1,440,000円→これは10年分ぢやないか。ちよつと実感があるかな。内容と関係ない話をしてるが、主人公のダニーとクラッシー、この二人の行動が交互に描かれ、最後に一つになる。そこで(後から考へればそれほど意外ではない)クラッシーの行動がダニーを窮地に追ひ込む。事件は解決してないが、ここで終つてほしい。
これは1950年に刊行されたもので、古典と読んでいいかどうか、ベストテン式に挙げられるミステリー作品はこの頃に書かれたものが多い。或はポオとか、ホームズものなど、もつと古くなる。逆にここ10年くらゐのあひだに書かれた海外のミステリーを読む機会のはうが少ないワケだ。翻訳する人がゐないと読めない。あれだ、パトリシア・コーンウェルなんかは最近の人だ。確か、オレと同い年くらゐの筈。……ま、そんなことはどうでもいい。主人公のクラッシーが17才で手にする美人コンテストの賞金が100ドル。その賞金を作るために地方新聞社の経営者が処分した車の代金が75ドル。クラッシーの婚約者バッカムが抱へたカード負債額1,200ドル。2007年5月の為替レートだと1ドル=120円かな。賞金12,000円、車が7,500円、負債144,000円。しかし、1950年代の物価はどうだつたか、ちよつと調べた。凡そ10分の1。大卒の初任給(公務員)が10,000円に満たない。とすると、賞金120,000円→公務員給料1年分、負債1,440,000円→これは10年分ぢやないか。ちよつと実感があるかな。内容と関係ない話をしてるが、主人公のダニーとクラッシー、この二人の行動が交互に描かれ、最後に一つになる。そこで(後から考へればそれほど意外ではない)クラッシーの行動がダニーを窮地に追ひ込む。事件は解決してないが、ここで終つてほしい。
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