2015-04-10

594.お客に言えない食べ物のカラクリ

㊙︎情報取材班編・青春文庫(used)。漸く始めから最後まで一冊の本を読むことができた。目出度いことだ。しかし、まだ油断はできない。なぜなら小説が読めないからだ。小説は書いてあることが頭に入らない。最初の一頁分くらゐで挫折してしまふ。それは兎も角読みをへた。食に関する雑学を纏めたものだ。例へば「ウナギ不足といいながら、かば焼きがまずまず出回っているのは?」に始まり、三元豚とはなにか、アイスクリームに賞味期限がないのはなぜか、コーヒー豆に新豆はあるか、ハチミツが腐らないのは本当か、メンマはどうやつて作るのか、といふ、まあ、どうでもいいやうな話がたくさん書いてある。暇つぶしにはちやうどいい。

2015-04-03

変な友達──吉田健一のこと──

白洲正子・新潮社「吉田健一集成別巻」所収。江國滋の「日本語八つ当たり」以降、もう一箇月近く新たに本を始めから読む、読み始めることができないでゐるのだが、そんな中で何度か繰り返して読んでゐるものの一つが、この白洲正子が集成別巻に書いてゐる吉田健一の話だ。例へば河上徹太郎や丸谷才一、篠田一士、清水徹といふ人たちが描く吉田健一の肖像とはすこし違ふ吉田健一がここにはゐる。或は当人が思つてゐたのとも違ふ吉田健一かもしれない。誰かがどこかで書いてゐて、それが誰でどこに書いてゐたのか、ちつとも思ひ出せないので書かうかどうしようか迷ふのだが、ちやつかり書いてしまふと、吉田健一は頻りに小林秀雄を褒めるけれども考へ方は相容れないのではないか、水と油ぢやないか、といふその辺をやはり白洲正子は書いてゐる。第一、小林秀雄のどこがそんなにが偉いのか、ちんぷんかんぷんで、それが文学といふものなら、オレは文学なんか判らなくても一向に構はない。ただ、ここにゐる吉田健一のはうが人間として魅力的だし、現実味がある(現実味なんていふ言葉はない、と吉田健一は言ふかなあ)。P340(あの、敗戦後に「いつそ国語をフランス語にしたらどうか」なんていふ正気の沙汰とは思へない発言をした「小説の神様」!である)志賀直哉が卵が割れないことで笑つたといふ話に「育ちがいいので卵が割れないと思うのは間違っている。育ちと卵とはぜんぜん違う話なのだ」と切つて捨てる。ほかにもあるが、書きたくなつたら書かう。34人が「吉田健一・人と文学」といふ括りで書いてゐるが、この白洲正子と吉田暁子の「まっすぐな線──父のこと」は何度読み返しても好い。ほかの人は伝説回路に嵌つてゐる。

2015-03-15

おかしなことを聞くね

ローレンス・ブロック/田口俊樹・他訳ハヤカワ文庫「ローレンス・ブロック傑作集1おかしなことを聞くね」所収。2008年の3月に記事を書いてるので、そつちと重複しないやうにしよう。古着のジーンズは一体どうやつて仕入れるんだらう、ちやうど穿きなれた頃の馴染んだジーンズを売るのなんて不思議だといつも思つてゐたロバートが遭遇する、思ひもよらない出来事。前回、お気に入りで挙げた「我々は強盗である」、「動物収容所にて」、「無意味なことでも」、バーニィーもの「夜の泥棒のように」、マット・スカダ―もの「窓から外へ」と、ついつい読んでしまつた「食いついた魚」、「成功報酬」、「アッカーマン狩り」を読み返した。実に面白い短篇が多い。全部で18篇収録してあるうち、タイトル作を含め9篇読んだわけだが、どれも少しづづ面白さが違ふ。飽きさせない。バーニィーとスカダ―の長篇シリーズは読んでみたいと思つたけれども、まだ読んでない本がたくさんあるので、いまは控へるしかないね。機会があれば、集めてじつくり読みたいものだ。

2015-03-02

日本語八つ当たり

江國滋・新潮文庫(used)×2。たぶん単行本で購入し読んでゐる。といふのは小沢昭一の解説を読んだ記憶がないから。単行本のはうは見当たらないので、売つてしまつたのだらうか。ほぼ江國滋の側に立つてゐると思ふ。まあ、お嬢さんが書いた「冷静と情熱のあいだ」といふ題名を見たら、どう感じるのだらうか、とは思ふけど。

2015-02-15

593.螻蛄

黒川博行・新潮文庫。やつぱり疫病神シリーズは面白い。二宮、桑原コンビは、最初の疫病神ですつかり気に入つてしまつた。今回は宗教団体のお宝を巡る駆け引き。オレは桑原が好きだなあ。二宮は黒豆コンビを思ひ出させる。

2015-02-09

592.迅雷

黒川博行・文春文庫。ヤクザの幹部を誘拐し身代金を要求する三人組の話。usedではなく疫病神シリーズの「螻蛄」と一緒に渋川のTSUTAYAで購入。1回目は上手く行く。それでもつと上の、大きな組織の幹部を誘拐することになつてこれが本筋で梃子摺る。1人が人質になつてしまふし、誘拐した幹部と交換するつもりだつたが、土壇場で思はぬミスから敵陣に乗り込んで仲間を救出する羽目になる。読み終へるまでやめられない。普通に見れば冴えない、落ちこぼれた男たちが、最後まで諦めないで行動する姿がいい。ラストはやつぱりハードボイルドだなあ、と思ふ。男つてバカだよなあ。この選択が嬉しい。

2015-01-30

夜のオルフェウス

都筑道夫・角川文庫「黒い招き猫」所収。もちろん冊数にはかぞへないが、かういふ風に短篇集の中にあつて、読み返すものも幾つかあるので、それらについてもこのブログに書いてしまふことにした。もともと「(ときどき)読書日記」といふタイトルでもあり、新たに読んだ本を中心にすることもないだらう。それに、例へばきのふHIKO7 NEWSのはうで取り上げた丸元淑生の「悪い食事と良い食事」の一部についても読み返したものについても書いてしまはうと思ふ。一冊まるごと読んだもの、ばかりでなくてもいいぢやないか、そのはうがプログのタイトルらしくていいんぢやないの、と考へたわけだ。
といふわけで(確か淀川さんがこんな風に映画の解説を始めたやうに記憶する)、まづは都筑道夫の「夜オルフェウス」。これ、どのくらゐ読み返したらう。始めて読んだときには、それほどでもなかつたのだよ、hiko8さんから推奨されるまでは。読み返すうちに良い小説だなあ、と思ふやうになつた。
けふは、ここまでにする。近いうちに続きを(つづきみちお、だから続きを、といふ駄洒落ではない)書くか、また別な違ふものについて書くか、そのときそのときで、ときどきの読書(読書といふ言葉もあんまり好きぢやなくて、趣味は読書です、とか、映画鑑賞です、とか平気で言へない、本を読むのが好きです、映画を見るのが好きです、といふ言ひかたは駄目なんかねえ)日記だから。
さうさう、まつたく関係ない話で、実は文庫の小説に限らず、解説を読むのが好きなんだよ。さういふ人もゐると思ふので、と書き始めで触れてゐる文庫の解説(ミステリだつたかな)に出くはしたことがあるが、ほかにもゐるんだなあ、と思つて安心した。
因みにこの「黒い招き猫」は石上三登志といふ人。どういふ人か、なにをなりはひにしてゐる人かは知らない。

2015-01-05

一日一生

酒井雄哉・朝日新書(×5)。年が明けて、何も読む気にならなくて、この本を読み返した。気持ちが少し楽になつた。

2014-12-29

591.バカ丁寧化する日本語

野口恵子・光文社新書(used)。まへに「かなり気がかりな日本語」(集英社新書)を読んでゐる。よく耳にするをかしな日本語を扱つたものだつた。「千円からお預かりします」、「こちら(注文した食べ物)になります」など。更に、あちこちで「いらっしゃいませ、こんにちは」と叫ぶ、やまびこ挨拶などについて書いてあつた。これは主に敬語を扱つたものだが、全体のトーンは同じで、説教臭くなく、読み易く面白くて、しかもためになる。敬語はむづかしい、とくに謙譲語。P204「尊敬語や謙譲語を適切に用いる自身がなかつたら、丁寧語だけにしておけばよい」、確かに。それで礼を失することにはならない筈だ、表情や態度で補へばいいのだから。をかしな敬語で書かれた看板や表示をみると、一体何が言ひたいのか、誰に敬意を払つてゐるのだらう、と首を傾げることがあるけれど、P216「敬語が難しいと思えば、普通の言い方に直してみるといい。敬語という化粧をとると真の姿が見えてきて、おかしな日本語や失礼な表現に気づくことも多い。そうしたら直せばいい。そして、必要なら、改めて敬語に挑戦すればよい」、正に仰る通りです。今年はこれが最後でせう、まだたつぷり2日あるけど、この年末年始はヘンリ・ミラーの「マルーシの巨像」をゆつくり読みたいので。

2014-12-12

590.ジーヴズの事件簿 才知縦横の巻

P・G・ウッドハウス/岩永正勝・小山太一編訳・文春文庫(used)。これは談四楼師匠の本と一緒に買つた。偶然目に付いて、ウッドハウスとか、ジーヴズつて名前をどこかで見た気がしたので解説を読むとやはり「謎解きはディナーの後で」シリーズの元になつた、或はパクつたと言はれてゐる短篇集だつた。事件簿となつてゐるが、こつちはミステリといふよりもユーモア小説だらう。厄介な事に巻き込まれる主人公バーティを助ける優秀な執事ジーヴズのお話。読んでゐて思ひ出したのは「ボートの三人男」やサキの短篇集だつた。

2014-12-05

589.もっと声に出して笑える日本語

立川談四楼・光文社知恵の森文庫(used)。続篇で、文庫書き下ろしだと前口上にある。まへの本を読んでゐるので買つてみた。始めのはうは爆笑、言葉の蒐集が主になるにつれてクスクス程度に。P263、煙草を吸ふと七秒寿命を縮めるさうで、一日に20本吸ふ人が一年寿命を縮めるには617年掛かるといふ話は面白い。

2014-11-27

ドキュメント狭山事件

佐木隆三・文春文庫(×2)。最近、狭山事件に関する展示を見る機会があつた。それで読み返した。購入が1982.10.08、直ぐに読んだと思ふので、実に32年振り。犯人ではないといふ根拠は見つからないけれども、犯人だとする理由も見つからない。ネット上で幾つか興味深いデータも公表されてゐる。脅迫状の筆跡と石川被告の筆跡を比較して似てゐると いふものもある。確かに似てゐる字もある。が、いづれにしても自白によつて発見されたといふ三大物証①カバン②万年筆③腕時計が実に胡散臭い。逮捕後間もなく証言してゐる三人の共犯説、脅迫状は石川被告が書いて実行犯は他の二人だといふ話がなんとなく信憑性があるやうにも思へるのだが。P44、死体発見当時の警察発表にある「犯人は四十〜五十歳くらいで土地の者、被害者と顔見知りの可能性が強い」といふのは、一体どんな根拠があつたのだらう。

2014-11-23

日本語「ぢ」と「じ」の謎

土屋秀宇・光文社知恵の森文庫(×2)。去年の四月に購入し読んで、期待外れだと書いておきながら再読。「ぢ」と「じ」は謎ではないでせう、さういふ風に仮名遣ひで定めたといふことでせう。言葉は変るものだ、と言ふ人がゐる。だから歴史的仮名遣ひに固執するのはをかしい、といふ意味らしいが、それは違ふ。この本にも書いてあるやうに、変つたのではなくて変へたのだ。

2014-11-21

588.ニューサイエンティスト群像

勁草書房・矢沢サイエンス・オフィス編(used)。これはニューサイエンスに関心を持ち始めた頃に館林の図書館の2階で見つけて借りて読んだもので去年(2013)の4月にamazonで古本を購入した。状態はいいのだが図書館の本みたいに透明なカバーが で包まれてゐるのが、ちよつと不思議だ。もともとかういふ装幀の本なのだらうか。いづれにしても読み始めたのは購入後間もなくで、といふことは1年以上かかつたことになる。どうも年ととともに集中力がなくなつてゐるやうで、それが加齢が原因かどうかはわからないけれども全体に体力が落ちてゐるのだらう、根気がない。一気に読めるのはミステリくらゐだ。
この本で形態形成場理論(グリセリンの結晶)や100匹目の猿の話、ガイア仮説、ダブルバインド、散逸構造。1/fのゆらぎ、ホログラフィック・パラダイムなんていふ魅力的な、ワクワクするやうな話を知つたし、なによりバックミンスター・フラーとアンドルー・ワイルを知つたのだ。

2014-11-18

587.るきさん

高野文子・筑摩書房(used)。これは文庫なら新刊があるのだが、どうしても刊行時のサイズで読みたいと思つて敢て中古を買つたのだつた。これはいい、かういふの好きだなあ。作者自身はこの作品が嫌ひなんださうだが。益々、上田としこを連想させるのだが、関連はないんだらうか。 細部が丁寧なので嬉しくなる。お、こんなところまで、といふ発見が楽しい。一通り読んでから、またパラパラと拾い読みをしてゐるうちに、結局最初から最後まで読んでしまつたのだつた。

2014-11-15

586.絶対安全剃刀

高野文子・白泉社。去年の2月末に購入し、漸く読みをへた。買つて直ぐに読み始めたワケではないが、少なくとも半年くらゐは読みかけたまま、ほかの読みかけと一緒に積んでゐたと思ふ。まへに読んだ「棒がいっぽん」と比べると、文芸的といふか、詩的といふか、「ガロ」風の、例へば永島慎二、真崎守とかを連想させるところが、ちよつと引いてしまつた。絵は巧いよねえ。表題作よりも「玄関」がいい。余計な ことで、「いこいの宿」のP147、オジがドアを開ける、引いて開けるのだが、下の次のコマでは押して開けてゐるやうに見える。些細な事で自分でも厭になるが、気になる。

2014-11-09

585.虚ろな十字架

東野圭吾・光文社。知人から借りたもの。代りに中町信の「模倣の殺意」、黒川博行「カウント・プラン」を貸した。ミステリが好きだが、中町信は知らないさうで、東野圭吾のファンだといふので「カウント・プラン」の解説は東野圭吾だつたから。
で、これは殺人者に対する死刑といふ刑罰に就いて書かれた、或は作られた物語である。最初の幼児殺人とその後の謎として扱はれる事件は無関係ではないことが読み進むうちに判るし、プロローグがその辺りを示してゐることも納得できるが、作者に言ひたいことが先づあつて、それがプロローグに続く物語であり、前段に語られる幼児殺人の悲劇は そのために作られた事件に思へてしまふ。これが辛い。といふのは、たかがミステリで、作られた事件だつたとしても、読むはうは感情移入してしまふのだ。作者の意図に気づくと弄ばれた気分になる。

2014-10-30

584.偽りの群像

中町信・光文社文庫。ずつと読んでみたいと思つてゐた中町信の「急行しろやま」と「偽りの群像」を読むことができた。どつちも鮎川哲也のアンソロジーには収録されてゐるさうだが、氏名義の作品集の形では出版されてゐなかつたものだ。「急行しろやま」は第4回双葉推理賞を受賞した作品。これは期待通り、面白かつた。「偽りの群像」は処女作である。これも良かつた。ただ題名がピンと来ない。この本にはもう一つ「愛と死の映像」といふ双葉推理賞受賞後第一作も収録されてゐる。これは懸け離れた場所と事件が実は一つの犯罪である、といふ意外な展開なのだが、ちよつと強引な感じがした。
蛇足ながら、「愛と死の映像」のP218に「坂口刑事は半分ほど食い散らした天丼の汁を、音をたててすすっていた」といふ記述がある。天丼の汁だよなあ、音をたててすするほど汁があるんだらうか、と思つた。天丼だよなあ。麺類ぢやない、ご飯もの、カツ丼や親子丼と同じ類ひの丼物だよなあ。割烹料理屋の丼はさうなのか、金沢の丼はさうなのか。と、P215には「刑事たちは一番安いどんぶり物を注文した」つて書いてある。天丼つて、丼物で一番安い部類ぢやないと思ふんだけど。玉子丼とか、親子丼とか、カツ丼のはうが天丼よりも安い店のはうが多くないか?ま、たいしたことぢやないんだけど、かういふ詰まらないことが気になるんだなあ、どうでもいいやうなことが。

2014-10-22

583.おたのしみ弁当

吉田健一・講談社文芸文庫。買つたのが今年の3月で、イオン太田の喜久屋書店でだつた。恐らく直ぐに読み始めてゐるはずだから、半年以上掛かつてしまつたワケだ。まあ、その間、他の本も読んでゐるから掛かりきりではなかつたけれども。著作集などに未収録のエッセイを集めたものだが、ほかにもう一冊、やはり講談社文芸文庫に「ロンドンの味」といふのがあり、解説を読むと他にも見つかつて「英国の青年」といふ題で出るらしい。余計なことだが、吉田健一は全集のやうな書簡や未完成の下書きのやうなものまで集める形式を好まなかつたのではなかつたか。だから氏の意を汲んで著作集や集成といふ、本として出版したものだけを選んでゐるのだらう。集英社の著作集には補巻として死後に出版されたものや単行本に未収録のものを幾つか収めてはゐるけれども、かういふ未収録のものを集めて出すといふのはどうなんだらう、読むはうは興味があるから読みたいけど。序でに言ふと、まへにも書いたけど講談社文芸文庫つて、なんでこんなに高いんだらう。これ1,400円(税別)だよ。単行本並みだよなあ。

2014-10-07

582.暗闇の殺意

中町信・光文社文庫。全部で7篇収められてゐる。そのうち3篇は「Sの悲劇」といふ新書版の短篇集にもあつて読んだことがあるのだが、一通り最初から最後まで読んだ。久し振りの中町信で楽しめた。最後の「動く密室」や「自動車教習所殺人事件」(いまは創元推理文庫で「追憶の殺意」として復刊)みたいに自動車教習所を舞台にしたミステリつて他にあるんだらうか。今度調べてみたい。