2008-12-20

174.日本史集中講義

井沢元彦・祥伝社黄金文庫
読み物としては充分面白かつた。歴史に関する本としても、副題にある「点と点が線になる」まではいかなくても、因果関係が説明されるので流れとして摑める。が、やつぱり網野善彦の「日本の歴史をよみなおす」の驚きには及ばない。

2008-12-17

173.不完全犯罪

広瀬隆・集英社文庫(used)
さう、あの「東京に原発を」の広瀬隆の短篇小説集。ほんとに短い18篇。サキを連想したのだが、もつとビアスに似てゐるかもしれない。なかなかの皮肉な(ときに残酷な)結末。ペダンチックといふか、凝つた文章ではある。その分古臭く見える。

2008-12-16

172.貨客船殺人事件

鮎川哲也・光文社文庫(used)
読者に挑戦する犯人当ての短篇集。9篇。ちよつと時代的な古さを感じた。「黒いトランク」のうがよつぽど古いんだけど、なぜだらう。一番古いのが昭和42年、新しいのが昭和59年、ほかは昭和45年が4篇、46年1篇、47年1篇、不明1といふ具合。因みに全問正解とは行かなかつた。

2008-12-14

171.文学的商品学

斎藤美奈子・文春文庫(used)
小説以外のものが読みたくなつて、立ち読みしてたら面白さうだつたのは、「第2章ファッション音痴の風俗小説」の中で渡辺淳一の「失楽園」と丸谷才一の「女ざかり」を取り上げてゐたからで、渡辺淳一の本は一冊も読んだことがないのでなんとも言へないが、丸谷才一はたぶん「裏声で歌へ君が代」だつたと思ふんだけど、確か主人公の男がエレベーターを逆走するシーンで始まつて、そのときの服装をいかにも美術商(だつたかなあ、あとで調べて置かう)らしいセンスのいい服、みたいな説明が地の文にあり、思はず「どこが」と突つ込みを入れたくなつたのだが、ストーリーとか登場人物よりも余計な些細なことにばかりに気になるタチなので、アプローチが面白くて楽しめた。

2008-12-12

御乱心(再読)

三遊亭円丈・主婦の友社(used)
出版されて直ぐに寝床の会の誰か(荻野君か塩田君)に借りて読んでゐる。BookOffで他の本を探してゐたら、とつぜん棚のこの本のタイトルが目に入つた。それは買へといふことだな、もう一度読めといふことだな、と閃いた。そして買つて読んだ。なんとも円楽、呆れ果てる。談志も、……。志ん朝はやつぱり恰好いい。弟子のために頭を下げる。まあ、円丈が見た真実だと「まえがき」にあるけれど、芸一筋で云々と庇つてゐるが、円生は弟子のことは二の次だつたワケだから。

2008-12-10

170.らせん

鈴木光司・角川ホラー文庫(used)
正に「リング」の続篇。かうした○部作ものは、単独では読めないものなのかどうか。少なくともこれは前作の内容をしつかり引き継いでゐるから、いきなりこれを読んだら入つて行けなかつたらう。「リング」よりも話の展開はゆつくりしてゐる。DNAによる再生のネタは映画「ジェラシック・パーク」がさうだつたが、これには原作があつて先日亡くなつたマイクル・クライトンで、どつちが先なんだらう。仕掛けは面白い。「パラサイト・イヴ」みたいに科学用語が頻出するからSF的でもあり、謎解きの要素もあるからミステリ的でもある。ホラーとも、ファンタジーとも読めるから、ジャンルを超えた、と称されてゐるのだが、どうも奇想天外なストーリー展開に寄り掛かり過ぎてゐる気がして、確かに面白いんだけどいま一つ小説を読んだといふ満足感がない。さらに「ループ」があつて、それが完結篇であるといふのだが、もういいかな。重箱の隅を一つ。P14死亡推定時刻が11時49分と正確なのはなぜか、と高野舞が呼ばれるが、その説明がないこと。と、安藤医師はスケベ過ぎないか?

2008-12-05

169.リング

鈴木光司・角川ホラー文庫(used)
1991年に刊行されたものだといふから、17年まへ。ベストセラーは手が出し難いタチなので、いまさら読んだ。「らせん」も一緒に買つたから、続けて読むつもりだ。VHSかDVDのレンタルで映像のはうを見てゐるが、内容はよく覚えてゐないのだ。凡そ一週間の物語なのである。そのせゐかひどく慌ただしい。第二章まで読んでも怖さが物足りないので、ホラーとしてよりも、ひたすら動きまくる浅川と高山のアクションものとして読んだ。後ろのカバーに「ホラー小説の金字塔」とあるし、解説でも絶賛されてゐるのだが、どこがそんなに凄いのか解らない。重箱の隅を三つ。1.三浦記念館での貞子の特定が簡単すぎないか。次に進むには、ここで判明してないと都合が悪いんだらうけど。2.P249の1行目、長尾医院の看護婦の名前がいきなり「藤村」と出て来る。P246から登場してゐて、そこでは看護婦としか書かれてないのに。このあとで長尾医師が名前を呼ぶことになるから、ここでとつぜん名前が付いたのだらうか。3.P288、といふより第四章、最終章の冒頭、浅川が眼鏡をかけてゐることが漸く解る。近眼なのか、乱視なのかどうかは判断できないが。ここから遡り、浅川が眼鏡使用でないと困ることがあるのだらうか、と読み返すのも一興かと思つたが、億劫なので止めた。序でにP274で高山がベンチプレス120kgだといふ説明が入るのだが、なんで?

2008-12-01

168.どこかの事件

星新一・新潮文庫(used)
いやあ、ずゐぶん久し振りの星新一。中高生の頃によく読んだものだ。それ以来。懐かしかつた。ミステリー風の21の話が入つてる。発想の転換が素晴らしい。「その女」はその典型。「ポケットの妖精」は落語みたいなオチがある。買つて直ぐ1/3くらゐ読み、半月くらゐまへに半分ほど読み進んでゐたもの。

2008-11-30

167.雨に殺せば

黒川博行・文春文庫(used)
謎解きとしても、前作「二度のお別れ」よりも力が入つてゐる。謎解き部分はちよつと急いでる気がするのだが。銀行に対する痛烈な批判があるが、作者の個人的な恨みでもあるのではと思ふほど。因みにこの文庫の表紙絵は黒川博行。

2008-11-29

166.二度のお別れ

黒川博行・創元推理文庫(used)
いまのところ安心して読める人。これがデビュー作。「てとろどときしん」で探偵役だつた大阪府警のクロマメコンビのデビュー作でもある。これも間違ひなく楽しめた。長さもちやうどいい。一気に読める。後半のテンポの速い展開は緊張感もあつて、ちよつとハードボイルド的でもあつた。が、この終りかたは物足りない。クロマメコンビに解決させてほしかつた。この2人、華がない、といふ理由でサントリーミステリー大賞で佳作になつたさうだ。変な理由。

2008-11-27

165.空飛ぶ馬

北村薫・創元推理文庫(used)
どうも苦手な文章で、ペダンチックなところはまあOKなんだけど、通ぶつてる感じがするんだなあ。学のない僻みもあるが。解説にもあるし、評判通りの日常生活の中にある謎を見事に解決するところは面白いのだが、地の文がどうにもイヤだ。母を母上と呼ぶが、父は父。女子大生言葉的だといふことか、「けれど」の連発。5篇それぞれ工夫がある。「胡桃の中の鳥」は纏まりがない印象。「赤頭巾」が一番面白かつた。これはシリーズになつてゐて、「夜の蝉」が日本推理作家協会賞を受賞してゐる。これはデビュー作品集。これだけで充分かな。

2008-11-24

164.カウント・プラン

黒川博行・文春文庫(used)
ちよつと前に「てとろどきしん」を読んで面白かつたので、買つてみた。最初の「カウント・プラン」を読みをへて思はず「すばらしい」と書き込みをしてしまつたくらゐだ。全部で5作品。どれも工夫があつて充分楽しめた。読みをはるのが惜しかつた。もつと読みたい。「カウント・プラン」が日本推理作家協会賞短篇賞を受けたさうだが、当然だらう。「オーバー・ザ・レインボー」も好きだな。解説は東野圭吾。

2008-11-17

ひぐらしのなく頃に(第一話 鬼隠し篇 上・下)

竜騎士07・講談社BOX
息子から、読んでみる?と手渡されて、半年過ぎてしまつた。借りたときにパラパラと見た限りでは、とても読めない本だつた。これは正にゲームだね。主人公や主な登場人物の年齢さへも不明だ。このラストから遡れば、物語は成り立たない。しかも第一話ではなにも解決しないのだ。この文章がどうにかならないと、次を読む気にならない、悪いけど。ここには前提になつてゐるものがある。その部分の説明が一切ない。それは想像力ではどうにも補えないものなんだよ。←第一章しか読んでないので、冊数から外した(2015.07.08)

2008-11-11

163.煙か土か食い物

舞城王太郎・講談社NOVELS(used)
題名について一言。煙が土か○○か食い物、といふ風に、もう一つ入つたはうがオレはリズムが取り易い。余計なことだが。内容について。苦手だ。かうしたハードボイルド寄りの、暴力だの、グロテスクな描写が多い読み物をノワールと称するのかどうか知らないが、主な登場人物の熱い言ひまはしの台詞が空回りして聞こえる。なにかの賞の選評で、石原慎太郎と宮本輝がクレームをつけ、池沢夏樹と山田詠美が推したといふ理由もなんとなく理解出来る。これだけでたくさんだね。世代が違ふ気がした。詰まらないとは言はないが、ほかにも読みたいとは思はない。

2008-11-03

162.無名仮名人名簿

向田邦子・文春文庫(used)
読んだことがあるかもしれないな、と思ひつつ買つた。半分をちよつと過ぎた辺りの「目をつぶる」といふ章の途中で、この話は読んだ気がする、と思つた。誰かの引用かもしれない。他にはさういふ箇所はなかつたので再読扱ひはしなかつた。端正な人だな、と感じた。「思ひ出トランプ」は読んでゐる。そして勿論「時間ですよ」、「寺内貫太郎一家」は見てゐた。直木賞を受賞した翌年、1981年に航空機事故での亡くなつたことは記憶にある。享年51歳。抜いちやつたなあ。世代はずゐぶん離れてゐるのに(向田邦子は1929年生まれ)、生活感はそれほど離れてゐる気がしないのだが、ご不浄はさすがに古く感じた。

2008-10-31

161.てとろどときしん

黒川博行・講談社文庫(used)
サントリー・ミステリー大賞を受賞してデビューしたばかりの頃の短篇だといふ。大阪弁の会話の面白さは二の次だと言つてもいい。構成がよく出来てゐて、不自然さを感じた箇所がなかつた。大阪弁がイヤでなければお薦め本。一つだけ。これはホントに個人的な理由であつて、この本の面白さとは一切関係ない。「指輪が言つた」の動機の部分。殺したいと思ふ、それは尤もな動機なのだが、子どもが絡むのは辛いので、題材として扱つてほしくなかつた。

2008-10-17

160.検死官

パトリシア・コーンウェル/相原真理子訳・講談社文庫(used)
500頁もあつて、しかも文字も最近の文庫よりも小さいから、ホントに長い。でも、最後まで引つ張られる。なかなか面白かつた。或る重要な人物に疑惑が向きさうになる。さう思はせるよう誘導して、……実は。意外な犯人なのは確かだが、犯人探しのミステリーではない。警察内部の話、検死官を巡る組織の話など、組織と人間関係に力点があるやうだ。謎そのものを前面にしたら短篇にしたはうが面白いかも。検死に関する説明やコンピュータの説明などは頭に入らなかつた。因みにパトリシア・コーンウェルつて、オレと同い年なんだよね。オレのはうが学年で一つ上、確か。関係ないけど。

2008-10-13

159.最後の密室

土屋隆夫・廣済堂文庫(used)
6篇入つた自選短篇集。解説もなく巻末エッセイとして「私論・推理小説とはなにか」がある。それぞれが、いつ頃か書かれたものかは記載がないので不明。「死の接点」が一番面白かつた。テンポも速く、人物も生き生きしてゐる。よく考へると、実に重苦しい題材を扱つてゐるのだが。「心の影」、「最後の密室」の2篇はいかにも年代物に思へた。探偵小説と呼ばれてゐた頃のものではないか。

2008-10-10

158.天童駒殺人事件

中町信・徳間文庫(used)
久し振りの中町信だ。2月の「三幕の殺意」以来。奥さんの早苗が強引な推理で引つ掻き回す氏家周一郎シリーズなので、買ふときちよつと躊躇つたのは事実だ。幾人かの容疑者たちを相手に不用意に推理を披瀝する。それが原因で疑惑を逸らさうとした真犯人が次の殺人を引き起こしたりもする。読者を誘導する仕掛けが実はそのまま登場人物まで巻き込んで殺人が増えてしまふ、みたいな。死ななくてもいい人が仕掛けのために死んで行く、といふか。まあ、中町信はリアリティよりもゲーム的な面白さだね。だから、ズルい、といふ見方も当然出るでせう。これに出て来るダイイング・メッセージの扱ひも、解明するのが遅過ぎる。……と、文句を言ひつつも、買つてしまふのは一種の中毒だな。

2008-10-05

157.名古屋人の真実

三遊亭円丈・朝日文庫(used)
だいぶまへに名古屋の喫茶店の話を東海林さだおのナントカの丸かぢりで読んだことがある。モーニングセットで腹一杯みたいな話だつたが、この本ではちよつと控へ目に書かれてゐる。どつちが本当か確かめたい気がする。円丈と言へば「御乱心」。あれに出て来る志ん朝はいい。円楽に対する不信感、反感は読後いまでも消えない。話が逸れてる。これは名古屋弁と名古屋の食べ物の話だ。たまに、クックッ、と堪へきれずに笑つてしまふ。さういふところは大抵、落語風にデフォルメしたり、語呂合せしたりの部分と、オレの子どもの頃の食生活に近い話が出たところ。円丈師匠は昭和19年生まれ、こつちは昭和31年生まれで、一回りも開きがあるのに食糧事情が似てるのには驚きだ。名古屋に比べると渋川はずゐぶんと田舎なんだなあ。