岡部昌幸(監修)・青春新書INTETLLIGECE
明治維新に関する新書を読んでゐたけど、途中で人名や用語、事実関係が頭に入らなくなつて、これが手に入つたので読み始めた。贋作には興味があつた。特にこれにはフェルメールの贋作で知られたメーヘレンの話が出てるので半分くらゐ一気に読み進んだ。フェルメールは大好きで、中央公論から出てゐる「フェルメール全作品」(25年ほど前で43,000円!よく買つたよなあ、今は絶版)も持つてゐるし、国外持ち出しが最後だと言はれた「青いターバンの娘」の実物を家族連れで大阪まで見に行つたものだ(懐かしいなあ)。勿論、スカーレット・ヨハンソンが出てゐた映画「青いターバンの娘」もDVDで見た。HPでその感想は書いてるから繰り返さないけど。メーヘレンだけでなく、贋作の実作家や贋作を画策したり販売した画商の話、世界中の美術館に贋作が真作として展示されてゐる可能性もある、とは面白い。国立西洋美術館だつて騙されちやふんだから、素人なんて一捻りだらう。偽物か本物か、有名か無名か、どつちが偉いか、貴重か、さういふ基準で絵を見たら、さうなるよな。なかなか面白かつたけど、もう少し詳しく、また図版での比較ももつとあつたらいいのだが、新書では限界ですかね。
2007-07-08
2007-06-25
77.忘れられた日本人
宮本常一・岩波文庫
これは網野善彦の本で知り、すぐに手に入れ(探し始めた初日にヨークベニマルのくまざは書店で見つけた)ずつと、ゆつくり読んでた。この本の題名を含めた著作が網野善彦にはある。ここには確かに忘れられた日本人がゐて、それはオレの祖父や親父の代までは当たり前の人たちだつたのだ。同じだとは言はないけれども、繋がつてゐたのが解る。民俗学は馴染めなかつたが、これは面白く読めた。次から次へとページを捲らずにはゐられない面白さとは質が違ふが。中の「土佐源氏」は確かに創作だと思ふ人もゐよう。田中小実昌の小説を思ひ出した。もう一度ゆつくり読まうと思つてゐる。それは網野善彦の本もさう。実際コメント出来るほど解つてないから。これは凄いことが書いてあるぞ、つてのを感じるだけだから。
これは網野善彦の本で知り、すぐに手に入れ(探し始めた初日にヨークベニマルのくまざは書店で見つけた)ずつと、ゆつくり読んでた。この本の題名を含めた著作が網野善彦にはある。ここには確かに忘れられた日本人がゐて、それはオレの祖父や親父の代までは当たり前の人たちだつたのだ。同じだとは言はないけれども、繋がつてゐたのが解る。民俗学は馴染めなかつたが、これは面白く読めた。次から次へとページを捲らずにはゐられない面白さとは質が違ふが。中の「土佐源氏」は確かに創作だと思ふ人もゐよう。田中小実昌の小説を思ひ出した。もう一度ゆつくり読まうと思つてゐる。それは網野善彦の本もさう。実際コメント出来るほど解つてないから。これは凄いことが書いてあるぞ、つてのを感じるだけだから。
2007-06-11
76.日本の歴史をよみなおす(全)
網野善彦・ちくま学芸文庫
ヨークベニマルの本屋で立ち読みしてゐて、ワクワクした。十四世紀、中世の日本で大きな転換期があつた、と言ふ。つまり、明治維新から現代へ、といふ繋がりではない、十五世紀から現代までは一繋がりだと言ふワケだ。なぜさうなのか。それがこれには書かれてゐる。まだ読み終へたばかりで頭の中のあちこちに散らばつてるから説明出来ないけれども、先づ、これだけは書いて置かう。百姓=農民ではない、といふこと。水呑は田畑を持たない小作以下の農民だけを指すのではない。飢饉は農民の少ない土地で起つた。それを知つただけでも1,260円(税込)は安い。ほかにもたくさん、これこそ正に目からウロコが落ちる。網野善彦をもつと知りたい。……続けて二冊読んで、要するに小説が読めなかつたんだ、と漸く気がついた。去年、食べ過ぎたかもなあ。
ヨークベニマルの本屋で立ち読みしてゐて、ワクワクした。十四世紀、中世の日本で大きな転換期があつた、と言ふ。つまり、明治維新から現代へ、といふ繋がりではない、十五世紀から現代までは一繋がりだと言ふワケだ。なぜさうなのか。それがこれには書かれてゐる。まだ読み終へたばかりで頭の中のあちこちに散らばつてるから説明出来ないけれども、先づ、これだけは書いて置かう。百姓=農民ではない、といふこと。水呑は田畑を持たない小作以下の農民だけを指すのではない。飢饉は農民の少ない土地で起つた。それを知つただけでも1,260円(税込)は安い。ほかにもたくさん、これこそ正に目からウロコが落ちる。網野善彦をもつと知りたい。……続けて二冊読んで、要するに小説が読めなかつたんだ、と漸く気がついた。去年、食べ過ぎたかもなあ。
2007-06-09
75.タバコ有害論に意義あり!
名取春彦、上杉正幸・洋泉社新書
統計やグラフなどのデータを見る時は、鼻から疑つて掛かる、と言ふか、そこに出てゐる数字をあんまり信用しないやうにしてゐる。だいぶ前にチラと見た、たぶん大泉図書館で借りたか、立ち読みしたか、タバコが肺癌の原因であるといふのは捏造か、都合の良い統計結果に過ぎない、と書いた本があつて、それが頭にあつたからベニマルの本屋でこれを見つけてパラパラと捲るうち買ふ気になつたのだらう。通称「タバコ白書」(「喫煙と健康──喫煙と健康問題に関する報告書」1987)のデータが実はご都合主義の産物だ、と告発してゐるのだ。要は「白書」を中心になつて纏めた平山雄つて学者が掲げたデータへの言及で、うんうん、さうさう、と納得する。前半の名取氏の部分が特に面白い。タバコの煙は水蒸気やタールの粒子だから肺に蓄積することはなく、肺が真つ黒になるなんてウソだとか、死亡率や発ガン率の根拠になつてゐるグラフや表の杜撰な解釈にも言及してゐて、小気味いい。もちろん害がないワケはないけど、肺癌よりも喉頭癌で、受動喫煙なんて根拠がないし、吸はない人に不快な思ひをさせないやう注意を払へばいいのだ。ほぼ一日で一気に読んでしまつた。
統計やグラフなどのデータを見る時は、鼻から疑つて掛かる、と言ふか、そこに出てゐる数字をあんまり信用しないやうにしてゐる。だいぶ前にチラと見た、たぶん大泉図書館で借りたか、立ち読みしたか、タバコが肺癌の原因であるといふのは捏造か、都合の良い統計結果に過ぎない、と書いた本があつて、それが頭にあつたからベニマルの本屋でこれを見つけてパラパラと捲るうち買ふ気になつたのだらう。通称「タバコ白書」(「喫煙と健康──喫煙と健康問題に関する報告書」1987)のデータが実はご都合主義の産物だ、と告発してゐるのだ。要は「白書」を中心になつて纏めた平山雄つて学者が掲げたデータへの言及で、うんうん、さうさう、と納得する。前半の名取氏の部分が特に面白い。タバコの煙は水蒸気やタールの粒子だから肺に蓄積することはなく、肺が真つ黒になるなんてウソだとか、死亡率や発ガン率の根拠になつてゐるグラフや表の杜撰な解釈にも言及してゐて、小気味いい。もちろん害がないワケはないけど、肺癌よりも喉頭癌で、受動喫煙なんて根拠がないし、吸はない人に不快な思ひをさせないやう注意を払へばいいのだ。ほぼ一日で一気に読んでしまつた。
2007-06-01
74.目からウロコの近現代史
河合敦・PHP文庫
やはり、もとに戻すことにした。前の形に慣れてしまつたせゐか自分が読み難いので。
特に目からウロコは落ちなかつたが、兎に角いま読んでるところのエピソードが時代の流れでどの辺になるのか解り難くて往生した。取り上げる話題で前後するのは仕方ないが、これぢやあ摑めないやね。意外性なんかよりも、かう、歴史がどう動いてゐたか、動いて来たか、だ。時々入つて来る個人的な感想、私的な記述は邪魔。解釈が読みたいのではなく、歴史の事実を知りたいんだから。「数学の広場」のはうはまだ単位で躓いて「分数と小数」に行けない。練習問題で「なんで?」が解決しない。
やはり、もとに戻すことにした。前の形に慣れてしまつたせゐか自分が読み難いので。
特に目からウロコは落ちなかつたが、兎に角いま読んでるところのエピソードが時代の流れでどの辺になるのか解り難くて往生した。取り上げる話題で前後するのは仕方ないが、これぢやあ摑めないやね。意外性なんかよりも、かう、歴史がどう動いてゐたか、動いて来たか、だ。時々入つて来る個人的な感想、私的な記述は邪魔。解釈が読みたいのではなく、歴史の事実を知りたいんだから。「数学の広場」のはうはまだ単位で躓いて「分数と小数」に行けない。練習問題で「なんで?」が解決しない。
2007-05-26
ここまでやつて来て、なんの前触れもなく書き方を変へることにした。タイトルに番号と書名、記事の冒頭に著者名といふのはどうも、このブログのタイトルと合はないなあ、とずゐぶん前(と言ふか始めて直ぐくらゐ)から思つてゐたのだ。ときどき読書日記なんだから、番号付けて何冊読んで、つてのは違ふな。──といふわけで、ここから、けふからときどき、読んでる本について書いて行く形を採ることにした。
さて、いま「目からウロコの近現代史」河合敦/PHP文庫(本については書名は鍵括弧付き、続けて著者──敬称略で、今後は凡てさうする──名、出版社名を記入し、次に再読は再、古本はU、再読古本は再Uといふ風にする)を、さうだなあ、かれこれ五日間くらゐ、ちびちび読んでゐるのだが、殆どがエピソードなので、歴史のお勉強としては頼りない。いま5分の2ほど読み進んだ。明治のところ。維新に動いて行く江戸末期から知りたかつたのだが、まあ手頃な入門篇のつもりだつたのだから、文句は言ふまい。著者は1965年生まれの現役の教師である旨、後ろの経歴に記されてゐる。これと「フランドルへの道」クロード・シモン/白水社は第二部の頭のところで滞つてるけど、たまにペラペラと始めから読み直したりしてゐる。あと一つ「数学の広場1数の生いたち」遠山啓/ほるぷ出版もバリンジャーの次に読み始めてゐて、いま第2章連続量のところが間もなく終る51頁で、次は第3章分数と小数。実はほかにヘンリ・ミラーの「クリシーの静かな日々」「マルーシの巨像」を読みかけてゐる。だから現在ほぼ同時進行的に5冊読んでゐることになる。滅茶苦茶だね。
さて、いま「目からウロコの近現代史」河合敦/PHP文庫(本については書名は鍵括弧付き、続けて著者──敬称略で、今後は凡てさうする──名、出版社名を記入し、次に再読は再、古本はU、再読古本は再Uといふ風にする)を、さうだなあ、かれこれ五日間くらゐ、ちびちび読んでゐるのだが、殆どがエピソードなので、歴史のお勉強としては頼りない。いま5分の2ほど読み進んだ。明治のところ。維新に動いて行く江戸末期から知りたかつたのだが、まあ手頃な入門篇のつもりだつたのだから、文句は言ふまい。著者は1965年生まれの現役の教師である旨、後ろの経歴に記されてゐる。これと「フランドルへの道」クロード・シモン/白水社は第二部の頭のところで滞つてるけど、たまにペラペラと始めから読み直したりしてゐる。あと一つ「数学の広場1数の生いたち」遠山啓/ほるぷ出版もバリンジャーの次に読み始めてゐて、いま第2章連続量のところが間もなく終る51頁で、次は第3章分数と小数。実はほかにヘンリ・ミラーの「クリシーの静かな日々」「マルーシの巨像」を読みかけてゐる。だから現在ほぼ同時進行的に5冊読んでゐることになる。滅茶苦茶だね。
2007-05-13
2007-05-09
73.煙で描いた肖像画
ビル・S・バリンジャー/矢口誠訳・創元推理文庫
これは1950年に刊行されたもので、古典と読んでいいかどうか、ベストテン式に挙げられるミステリー作品はこの頃に書かれたものが多い。或はポオとか、ホームズものなど、もつと古くなる。逆にここ10年くらゐのあひだに書かれた海外のミステリーを読む機会のはうが少ないワケだ。翻訳する人がゐないと読めない。あれだ、パトリシア・コーンウェルなんかは最近の人だ。確か、オレと同い年くらゐの筈。……ま、そんなことはどうでもいい。主人公のクラッシーが17才で手にする美人コンテストの賞金が100ドル。その賞金を作るために地方新聞社の経営者が処分した車の代金が75ドル。クラッシーの婚約者バッカムが抱へたカード負債額1,200ドル。2007年5月の為替レートだと1ドル=120円かな。賞金12,000円、車が7,500円、負債144,000円。しかし、1950年代の物価はどうだつたか、ちよつと調べた。凡そ10分の1。大卒の初任給(公務員)が10,000円に満たない。とすると、賞金120,000円→公務員給料1年分、負債1,440,000円→これは10年分ぢやないか。ちよつと実感があるかな。内容と関係ない話をしてるが、主人公のダニーとクラッシー、この二人の行動が交互に描かれ、最後に一つになる。そこで(後から考へればそれほど意外ではない)クラッシーの行動がダニーを窮地に追ひ込む。事件は解決してないが、ここで終つてほしい。
これは1950年に刊行されたもので、古典と読んでいいかどうか、ベストテン式に挙げられるミステリー作品はこの頃に書かれたものが多い。或はポオとか、ホームズものなど、もつと古くなる。逆にここ10年くらゐのあひだに書かれた海外のミステリーを読む機会のはうが少ないワケだ。翻訳する人がゐないと読めない。あれだ、パトリシア・コーンウェルなんかは最近の人だ。確か、オレと同い年くらゐの筈。……ま、そんなことはどうでもいい。主人公のクラッシーが17才で手にする美人コンテストの賞金が100ドル。その賞金を作るために地方新聞社の経営者が処分した車の代金が75ドル。クラッシーの婚約者バッカムが抱へたカード負債額1,200ドル。2007年5月の為替レートだと1ドル=120円かな。賞金12,000円、車が7,500円、負債144,000円。しかし、1950年代の物価はどうだつたか、ちよつと調べた。凡そ10分の1。大卒の初任給(公務員)が10,000円に満たない。とすると、賞金120,000円→公務員給料1年分、負債1,440,000円→これは10年分ぢやないか。ちよつと実感があるかな。内容と関係ない話をしてるが、主人公のダニーとクラッシー、この二人の行動が交互に描かれ、最後に一つになる。そこで(後から考へればそれほど意外ではない)クラッシーの行動がダニーを窮地に追ひ込む。事件は解決してないが、ここで終つてほしい。
2007-05-04
72.サミング・アップ
モーム/行方昭夫訳・岩波文庫
これは「要約すると」といふ題名で既に翻訳されてゐたものだと解説にある。「要約すると」が「サミング・アップ」だと知つたのはいつだらう。新潮社の出版カタログにあつたモーム全集のところに「要約すると」があつたのは覚えてゐる。その頃は、恐らく高校を出て直ぐか二十歳ちよつと過ぎくらゐの生意気な盛りだから、通俗的だとかなんとか、なにを通俗的と呼ぶのかすら考へたこともない癖に偉さうにモームは通俗作家だから、と敬遠してゐたものだ。若さとは未熟さだ。吉田氏の言ふ通りだよ。当時はしかし「月と六ペンス」は読んでゐた筈だ。ゴーギャンをモデルにしてるといふことで読んだのだが、主人公の生き方への興味はあつたけれどもモームについては惹かれるものがなかつた。それが「お菓子と麦酒」で一気にオレにとつて重要な作家になつた。それから「コスモポリタンズ」「アー・キン」「女ごころ(丘の上の別荘)」と集めて読んで来たわけだが、そこで漸く「要約すると」=「サミング・アップ」が新訳で出るといふ新聞広告を見て注文したのだつた。読み始めて、意外に手子摺つた。小説では気にならなかつた言ひ回しの灰汁みたいなものを感じてすんなり頭に入らない。訳者の違ひか。簡単な日常英会話すら出来ない癖に、こんなことを言ふのは気が引けるが、例へば「お菓子と麦酒」には「序」があつて、これがなかなか読ませるのだが、ちつとも抵抗なく頭に入る。続く小説の冒頭も、癖のある言ひ回しでストレートに語り始めてはゐないから、ここで躓く人がゐてもをかしくない。さういふ特徴とは違ふものがある。例を挙げよう。著作権に引つ掛かるかな。なるべく短く。要は大抵の人は人生設計が決められてゐて自由がない、と言ひ、かう続く。「こういう設計が、誰かが自分で描こうとした設計図と同じように完全でないという理由はないと思う。」──オレにはこの言葉の意味が呑み込めない。意味不明。読解力がないのか。いや、これは日本語になつてないでせう。英語の正しい翻訳かも知れないが。かういふ文章が何箇所かある。新潮社の全集は中野好夫氏の訳だ。確か「月と六ペンス」も。そつちも読んでみたいが、手に入るかどうか。とても示唆にとんだ内容なので、要再読。この人の新訳で岩波は「人間の絆」上中下を出した。新潮も上下二巻にして出した。モーム、シムノン、グリーン、ハイスミスは重要なのだよ。
これは「要約すると」といふ題名で既に翻訳されてゐたものだと解説にある。「要約すると」が「サミング・アップ」だと知つたのはいつだらう。新潮社の出版カタログにあつたモーム全集のところに「要約すると」があつたのは覚えてゐる。その頃は、恐らく高校を出て直ぐか二十歳ちよつと過ぎくらゐの生意気な盛りだから、通俗的だとかなんとか、なにを通俗的と呼ぶのかすら考へたこともない癖に偉さうにモームは通俗作家だから、と敬遠してゐたものだ。若さとは未熟さだ。吉田氏の言ふ通りだよ。当時はしかし「月と六ペンス」は読んでゐた筈だ。ゴーギャンをモデルにしてるといふことで読んだのだが、主人公の生き方への興味はあつたけれどもモームについては惹かれるものがなかつた。それが「お菓子と麦酒」で一気にオレにとつて重要な作家になつた。それから「コスモポリタンズ」「アー・キン」「女ごころ(丘の上の別荘)」と集めて読んで来たわけだが、そこで漸く「要約すると」=「サミング・アップ」が新訳で出るといふ新聞広告を見て注文したのだつた。読み始めて、意外に手子摺つた。小説では気にならなかつた言ひ回しの灰汁みたいなものを感じてすんなり頭に入らない。訳者の違ひか。簡単な日常英会話すら出来ない癖に、こんなことを言ふのは気が引けるが、例へば「お菓子と麦酒」には「序」があつて、これがなかなか読ませるのだが、ちつとも抵抗なく頭に入る。続く小説の冒頭も、癖のある言ひ回しでストレートに語り始めてはゐないから、ここで躓く人がゐてもをかしくない。さういふ特徴とは違ふものがある。例を挙げよう。著作権に引つ掛かるかな。なるべく短く。要は大抵の人は人生設計が決められてゐて自由がない、と言ひ、かう続く。「こういう設計が、誰かが自分で描こうとした設計図と同じように完全でないという理由はないと思う。」──オレにはこの言葉の意味が呑み込めない。意味不明。読解力がないのか。いや、これは日本語になつてないでせう。英語の正しい翻訳かも知れないが。かういふ文章が何箇所かある。新潮社の全集は中野好夫氏の訳だ。確か「月と六ペンス」も。そつちも読んでみたいが、手に入るかどうか。とても示唆にとんだ内容なので、要再読。この人の新訳で岩波は「人間の絆」上中下を出した。新潮も上下二巻にして出した。モーム、シムノン、グリーン、ハイスミスは重要なのだよ。
2007-04-16
榛名湖殺人事件(再読)
中町信・TOKUMA NOVELS
中町氏のコレクションの中から敢へてこれを選んだワケは勿論タイトルで、榛名湖、伊香保、前橋などの地名が出てくるし、刑事はなんと渋川署だ。豊田商事事件の頃に書かれたものか、開堂商事といふ名前の似たやうな悪徳商法の会社が出てくるのはいいのだが、この会社は倒産してから三年近くたつ、と主人公の有馬(これも渋川の地名で存在する)悦子と入院してゐる病院の婦長との会話の中で話してゐるのに、開堂商事主催の伊香保旅行が二年前、更にそこに有馬が努めてゐたのが一年半前だと書かれてゐるのは、一体どう解釈すればいいのだらう。倒産した会社に勤めるなんてことが出来るのか。今回読み返して気になつたのはそこだけど、前に読んだ時には気づかなかつたのかなあ。幾つか伏線らしき部分、引つ掛けの部分には騙されなかつたから真犯人は解つたけど、トリックは完全には解けなかつた。
中町氏のコレクションの中から敢へてこれを選んだワケは勿論タイトルで、榛名湖、伊香保、前橋などの地名が出てくるし、刑事はなんと渋川署だ。豊田商事事件の頃に書かれたものか、開堂商事といふ名前の似たやうな悪徳商法の会社が出てくるのはいいのだが、この会社は倒産してから三年近くたつ、と主人公の有馬(これも渋川の地名で存在する)悦子と入院してゐる病院の婦長との会話の中で話してゐるのに、開堂商事主催の伊香保旅行が二年前、更にそこに有馬が努めてゐたのが一年半前だと書かれてゐるのは、一体どう解釈すればいいのだらう。倒産した会社に勤めるなんてことが出来るのか。今回読み返して気になつたのはそこだけど、前に読んだ時には気づかなかつたのかなあ。幾つか伏線らしき部分、引つ掛けの部分には騙されなかつたから真犯人は解つたけど、トリックは完全には解けなかつた。
2007-04-12
2007-03-07
70.九つの殺人メルヘン
鯨統一郎・光文社文庫(used)
去年「邪馬台国はどこですか?」と「新・世界の七不思議」を続けて読んだ。どつちも面白く読んだけれども、2冊とも事件(或は犯罪)があつて、それがどうやつて行はれ解決されたか、といふ推理ではなかつた。設定は同じく安楽椅子探偵といふ形式だけれども、これは事件(或は犯罪)を扱つてゐる。この形式は会話を中心に進むので入り易く読み易い。都筑道夫氏の「退職刑事シリーズ」もさうだし、鮎川哲也氏の「三番館シリーズ」もさうだ。アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」が有名らしい。これもずゐぶん昔に読んでゐる。──で、更にこれはメルヘンの新解釈を織り込んで、それを謎解きのヒントにしてゐるところが一工夫だらうか。まあ、メルヘンの新解釈は以前読んだ「昔話にはウラがある」みたいに、ちよつと強引なものがあるけれど、これはそれほどには感じなかつた。最後の1話を除いてアリバイ崩し。最後のは小人の靴屋の話を使つたワケがピンと来ない。上記の2作ではカクテルだつたのが日本酒に代はつて、やはり料理を含めた蘊蓄も語られるのだが、実は作者は料理や酒に余り興味がないのではないか、といふ気がして仕方がない。思ひ入れのやうなものが伝はつて来ない。意図してそこそこで切り上げてゐるのだ、と好意的に解釈しよう。充分に面白いけどスリルは物足りない。
去年「邪馬台国はどこですか?」と「新・世界の七不思議」を続けて読んだ。どつちも面白く読んだけれども、2冊とも事件(或は犯罪)があつて、それがどうやつて行はれ解決されたか、といふ推理ではなかつた。設定は同じく安楽椅子探偵といふ形式だけれども、これは事件(或は犯罪)を扱つてゐる。この形式は会話を中心に進むので入り易く読み易い。都筑道夫氏の「退職刑事シリーズ」もさうだし、鮎川哲也氏の「三番館シリーズ」もさうだ。アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」が有名らしい。これもずゐぶん昔に読んでゐる。──で、更にこれはメルヘンの新解釈を織り込んで、それを謎解きのヒントにしてゐるところが一工夫だらうか。まあ、メルヘンの新解釈は以前読んだ「昔話にはウラがある」みたいに、ちよつと強引なものがあるけれど、これはそれほどには感じなかつた。最後の1話を除いてアリバイ崩し。最後のは小人の靴屋の話を使つたワケがピンと来ない。上記の2作ではカクテルだつたのが日本酒に代はつて、やはり料理を含めた蘊蓄も語られるのだが、実は作者は料理や酒に余り興味がないのではないか、といふ気がして仕方がない。思ひ入れのやうなものが伝はつて来ない。意図してそこそこで切り上げてゐるのだ、と好意的に解釈しよう。充分に面白いけどスリルは物足りない。
2007-02-09
2007-02-05
68.感じない男
森岡正博・ちくま新書(used)
これには困つた。香山リカに続いてハヅレだ。なにが言ひたいんだらう。男の不感症についてだ、といふことは始めに書いてある。しかし、ここに出て来る仮説はオレには牽強付会、我田引水にしか見えない。筆者は大学教授ださうだが、かういふ人がものを教へる時代なんだと思ふと怖いね。(自らの思春期の告白を読む限り)精神的にキズを持つてるやうだし、キズがあつてはイカンとは言はないが、その癒え方が微妙に捩じれてゐるのではないか。心の中を、と言ふか頭の中を探つて行けばどうにでも解釈出来る無意識部分の説明は強引だし、如何にも紋切り型で単純な推理だよ。さうでないものは受け入れられない屁理屈だ。その都度否定する偏見と性犯罪傾向は、レトリックなのか知らないが、氏自身は自覚してゐないだけで、犯罪資質は充分に備へてゐると思ふし、偏見もずゐぶん持つてるやうに感じる。
これには困つた。香山リカに続いてハヅレだ。なにが言ひたいんだらう。男の不感症についてだ、といふことは始めに書いてある。しかし、ここに出て来る仮説はオレには牽強付会、我田引水にしか見えない。筆者は大学教授ださうだが、かういふ人がものを教へる時代なんだと思ふと怖いね。(自らの思春期の告白を読む限り)精神的にキズを持つてるやうだし、キズがあつてはイカンとは言はないが、その癒え方が微妙に捩じれてゐるのではないか。心の中を、と言ふか頭の中を探つて行けばどうにでも解釈出来る無意識部分の説明は強引だし、如何にも紋切り型で単純な推理だよ。さうでないものは受け入れられない屁理屈だ。その都度否定する偏見と性犯罪傾向は、レトリックなのか知らないが、氏自身は自覚してゐないだけで、犯罪資質は充分に備へてゐると思ふし、偏見もずゐぶん持つてるやうに感じる。
2007-01-26
67.問ひ質したき事ども
福田恒存・新潮社
これは1982年に買つたものだ。裏に黒い万年筆でさう書き込みがある。この書き込みの習慣のために恐らく死ぬまで読む事もないだらうと思はれる本があつても棄てる以外に処分の方法が見付からず持て余してゐるのだが、……。それから続けて「知る事と行ふ事と」、「人間不在防衛論議」の2冊を購入した。この2冊は2004年に自転車事故の頃に既に読んだ。これが後になつたのは、こつちのはうが著作として新しいからだ。国防に関する記述と韓国の政治を巡るものが多い。勿論、国語、言葉に関するもの。それが目的で買つたワケだ。なにしろオレは福田氏の「私の国語教室」を読み、歴史的仮名遣ひを使用することにしたのだ。言つてみれば師匠である。
これは1982年に買つたものだ。裏に黒い万年筆でさう書き込みがある。この書き込みの習慣のために恐らく死ぬまで読む事もないだらうと思はれる本があつても棄てる以外に処分の方法が見付からず持て余してゐるのだが、……。それから続けて「知る事と行ふ事と」、「人間不在防衛論議」の2冊を購入した。この2冊は2004年に自転車事故の頃に既に読んだ。これが後になつたのは、こつちのはうが著作として新しいからだ。国防に関する記述と韓国の政治を巡るものが多い。勿論、国語、言葉に関するもの。それが目的で買つたワケだ。なにしろオレは福田氏の「私の国語教室」を読み、歴史的仮名遣ひを使用することにしたのだ。言つてみれば師匠である。
2007-01-24
66.貧乏クジ世代
香山リカ・PHP新書(used)
副題として「この時代に生まれて損をした!?」とある。なぜこの本を買ひ、かつ読んだのか、読み終へたこつちが「!?」だつた。なにが言ひたいんだらう「??」。テレビでたまに見掛ける精神科医で、名前がリカちやん人形の(たぶん)本名を借りてること、オタク擁護の本がある、などの予備知識しかないが、視点がブレてないか。と言ふか上つ面過ぎないか?70年代に生まれた世代像を分析したり、男女雇用均等法などに触れながら女性の雇用の現実などにも言及してるけど、一体何が言ひたいんだらう。生まれた時代が悪かつた、昔はよかつた、なんてことはどんな世代でも考へる、いや、若いうちはさうやつて逃げ道を見付けるワケだ。それを口にするかしないか。口にする世代、人間を相手にしてその世代の特徴はなどと考へても仕方がないだらう。敗戦、テレビの登場、家庭電化製品の氾濫、東京ディズニーランド、ファミコン、携帯電話、この辺が大きく関はつてるんだよ、この腐敗した日本の現状は。生活が変はつたんだ。それは人間の感じ方、見方、考へ方を変へる。もともと明治維新から何かが大きく変はつて、それが実は付け焼き刃だつた、といふことなんぢやないか。……明治維新に就いて、その前後の状況に就いてもつと勉強してからでないと、これ以上は言ひやうがないけど。少なくとも「バブルの崩壊」なんて関係ないよ。この言葉は既に中身がなくなつてる、幻想だよ。
副題として「この時代に生まれて損をした!?」とある。なぜこの本を買ひ、かつ読んだのか、読み終へたこつちが「!?」だつた。なにが言ひたいんだらう「??」。テレビでたまに見掛ける精神科医で、名前がリカちやん人形の(たぶん)本名を借りてること、オタク擁護の本がある、などの予備知識しかないが、視点がブレてないか。と言ふか上つ面過ぎないか?70年代に生まれた世代像を分析したり、男女雇用均等法などに触れながら女性の雇用の現実などにも言及してるけど、一体何が言ひたいんだらう。生まれた時代が悪かつた、昔はよかつた、なんてことはどんな世代でも考へる、いや、若いうちはさうやつて逃げ道を見付けるワケだ。それを口にするかしないか。口にする世代、人間を相手にしてその世代の特徴はなどと考へても仕方がないだらう。敗戦、テレビの登場、家庭電化製品の氾濫、東京ディズニーランド、ファミコン、携帯電話、この辺が大きく関はつてるんだよ、この腐敗した日本の現状は。生活が変はつたんだ。それは人間の感じ方、見方、考へ方を変へる。もともと明治維新から何かが大きく変はつて、それが実は付け焼き刃だつた、といふことなんぢやないか。……明治維新に就いて、その前後の状況に就いてもつと勉強してからでないと、これ以上は言ひやうがないけど。少なくとも「バブルの崩壊」なんて関係ないよ。この言葉は既に中身がなくなつてる、幻想だよ。
2007-01-21
65.悪い食事とよい食事
丸元淑生・新潮文庫(used)
小説を読む気になれなくて漫画を続けて買つて読んだ。でも活字が読みたくて、BookOffでパラパラ捲つたら「腰痛者を作り出す食事」なんてのがあつて、続けて「高血圧を予防するカルシウム」が目に付いて買つた。読み易いのでスラスラ読んだけど、あんまり内容は覚えてない。数種類の、精製してない穀類と海藻と豆類などが何度も出て来たのは覚えてる。腰痛はカルシウムの不足。高血圧にもカルシウム。たださあ、食べ物つてのは栄養だけで考へられない、見た目とか味とか、旨い不味いがあるし、……吉田健一氏の言ふやうに、旨いと思つて食べるものが体に悪い訳はない、といふ意見、実に納得するんだよなあ、吉田氏が言ふからなんだけど。野菜とか、レタスだのピーマンだの茄子だの胡瓜だのトマトだの、急に食べたくなつたりするし、豆腐とか昆布とかもスーパーで眺めて「あ、食べたい」と思ふことがあるから、体が必要とするものは「食べたい」と思ふんぢやないのかね。そんで、それは旨いと感じるんだよ。栄養の知識はあつたはうがいいけど、それが嵩じると「あるある大辞典」みたいなことに、……ま、この本はまた後で時々パラパラと捲るかもなあ。この人は「赤い月」とかいふ小説で、むかーし芥川賞の候補になつた人でせう?違ふ?……どつちでもいいんだけど。
小説を読む気になれなくて漫画を続けて買つて読んだ。でも活字が読みたくて、BookOffでパラパラ捲つたら「腰痛者を作り出す食事」なんてのがあつて、続けて「高血圧を予防するカルシウム」が目に付いて買つた。読み易いのでスラスラ読んだけど、あんまり内容は覚えてない。数種類の、精製してない穀類と海藻と豆類などが何度も出て来たのは覚えてる。腰痛はカルシウムの不足。高血圧にもカルシウム。たださあ、食べ物つてのは栄養だけで考へられない、見た目とか味とか、旨い不味いがあるし、……吉田健一氏の言ふやうに、旨いと思つて食べるものが体に悪い訳はない、といふ意見、実に納得するんだよなあ、吉田氏が言ふからなんだけど。野菜とか、レタスだのピーマンだの茄子だの胡瓜だのトマトだの、急に食べたくなつたりするし、豆腐とか昆布とかもスーパーで眺めて「あ、食べたい」と思ふことがあるから、体が必要とするものは「食べたい」と思ふんぢやないのかね。そんで、それは旨いと感じるんだよ。栄養の知識はあつたはうがいいけど、それが嵩じると「あるある大辞典」みたいなことに、……ま、この本はまた後で時々パラパラと捲るかもなあ。この人は「赤い月」とかいふ小説で、むかーし芥川賞の候補になつた人でせう?違ふ?……どつちでもいいんだけど。
2007-01-18
64.鮫肌男と桃尻女
望月峯太郎・講談社ミスターマガジン(used)
一緒に「バイクメ〜ン」も買つて読んだけど第1巻だけなんで触れない。こつちは一応1巻完結なので。序でに言ふと、吉田戦車氏の「伝染るんです」の2と3、業田良家氏の「ヨシイエ童話6 LOVE男」も読んだ。望月氏は「バタアシ金魚」と「ドラゴンヘッド」だつけかな。どつちも読んでない。絵は好きだね。好きになれない絵つてのは、あるから。植田まさし氏は結構買つて読んだけど絵そのものは好きになれない。桃尻娘つてのがある。橋本治氏の小説だつたか。こつちは女だけど、桃尻つてところが頂いてるよな。鮫肌だつて、ビックリハウスだかの周辺に鮫肌文殊といふ人がゐなかつたか?ダメだよ、頂き物ばかりぢや。特別話に工夫があるとは思へなかつたけど、……。
一緒に「バイクメ〜ン」も買つて読んだけど第1巻だけなんで触れない。こつちは一応1巻完結なので。序でに言ふと、吉田戦車氏の「伝染るんです」の2と3、業田良家氏の「ヨシイエ童話6 LOVE男」も読んだ。望月氏は「バタアシ金魚」と「ドラゴンヘッド」だつけかな。どつちも読んでない。絵は好きだね。好きになれない絵つてのは、あるから。植田まさし氏は結構買つて読んだけど絵そのものは好きになれない。桃尻娘つてのがある。橋本治氏の小説だつたか。こつちは女だけど、桃尻つてところが頂いてるよな。鮫肌だつて、ビックリハウスだかの周辺に鮫肌文殊といふ人がゐなかつたか?ダメだよ、頂き物ばかりぢや。特別話に工夫があるとは思へなかつたけど、……。
2007-01-17
62.63.源さん刑事 上・下
業田良家・竹書房文庫(used)
「ヨシイエ童話」の1つで、去年読んだ「世直し源さん」もさうだつた。業田氏は「執念の刑事」といふのを読んだことがある。館林で一人暮らしをしてた頃だ。もう20年も前だなあ。あの頃よりもずゐぶん絵が、線が巧みになつてると思ふ。
「ヨシイエ童話」の1つで、去年読んだ「世直し源さん」もさうだつた。業田氏は「執念の刑事」といふのを読んだことがある。館林で一人暮らしをしてた頃だ。もう20年も前だなあ。あの頃よりもずゐぶん絵が、線が巧みになつてると思ふ。
2007-01-08
61.氾濫
伊藤整・新潮文庫(used)
今年最初に読み終へたこの本はAmazonで手に入れたもので送料別で500円。昭和39年版で頁もすつかり焼けてゐる、だけでなく文字がたまに抜けてたり判読し難かつたり、現代仮名遣ひの中に凡そ十数箇所「いふ」などの仮名遣ひが紛れてゐたり、「來」「眞」などの正字が幾つかあつたりと、なかなか古本らしくて面白かつたが、作者である伊藤整氏の作品はいまは殆ど書店に並んでゐないといふことをご存知だらうか。古本屋にも、ない。少なくとも「若い詩人の肖像」とか「火の鳥」とか「鳴海仙吉」、この「氾濫」(ベストセラーになつたこともある!)は置いてない。「女性のための十二章」とかいふのがあるくらゐ。ま、そんな事情はどうでもいい。兎に角、伊藤整氏は現在忘れられた小説家であるらしい。それを残念なことである、とは実は思はないのである。なのに、わざわざ探して340円の送料を払つて手に入れたか。──それは、若い頃、このブログを始めた頃に書いた、本を読み始めた10代の中頃に「若い詩人の肖像」(棚にある文庫を見ると1972年11月6日に読み始め同月16日に読み終へたと鉛筆で書いてある)を読み、感銘を受けた記憶。そして知識として、この「氾濫」は中年の、確か50代の男女の絡みや性的なものも含めた恋愛を扱つた小説だと知つてゐたこと。更にこれを第1作とした三部作と呼ばれるものの残りの2作「発掘」、「変容」が入つた伊藤整全集の1巻を高校時代からの友人田中氏から貰つてゐて、次になに読むかなあ、と本棚を眺めてゐた時に手に取り、たまたまパラパラと捲つて、ちよつと面白さうだ、と感じたこと。これらがどういふ風に作用した知らないが、Amazonでパトリシア・ハイスミスの作品を検索してる時に伊藤整の「氾濫」が頭に浮かんだのだ、たぶん。でもまあ、迷つたね。高いもの。500円。当時の定価が裏にあつて、180円だから。ほんだらけとBookOffを回つたけど、ない。さうなると急にほしくなるんだ。中町信の時もさうだつたし、パトリシア・ハイスミスもさう。で手に入れて、といふ長い経緯はここでお終ひにして、どんな小説なのか。海外でも名前を知られた学者であり企業の重役でもある人物を中心にその家族、妻と娘の身から出た錆的ゴタゴタ、対称的な人物で旧華族の友人の俗物ぶりや女漁り、大学の実情、学閥、飲み屋のホステスさん事情、若い功名心の強い大学助手などが描かれ、人生の一部に付き合はされるワケだ。長篇はみんなそんな風に人物たちと一緒に時を過ごすやうに読みたいもので、これはさう読めた。けれども、どうにも欲・欲・欲の世界であつて、主人公の痛みは自業自得だとしか映らず、また中年男女の閨房描写もなんだか薄汚く感じる。ラストで主人公は自分のネガみたいな若い助手に復讐されるやうな形で娘を奪はれる、嫁に出すのだが、この辺が急ぎ足気味で畳み込んでる気がしないでもなく、また振り返ると結末から組み立てられたやうにも思へる。
今年最初に読み終へたこの本はAmazonで手に入れたもので送料別で500円。昭和39年版で頁もすつかり焼けてゐる、だけでなく文字がたまに抜けてたり判読し難かつたり、現代仮名遣ひの中に凡そ十数箇所「いふ」などの仮名遣ひが紛れてゐたり、「來」「眞」などの正字が幾つかあつたりと、なかなか古本らしくて面白かつたが、作者である伊藤整氏の作品はいまは殆ど書店に並んでゐないといふことをご存知だらうか。古本屋にも、ない。少なくとも「若い詩人の肖像」とか「火の鳥」とか「鳴海仙吉」、この「氾濫」(ベストセラーになつたこともある!)は置いてない。「女性のための十二章」とかいふのがあるくらゐ。ま、そんな事情はどうでもいい。兎に角、伊藤整氏は現在忘れられた小説家であるらしい。それを残念なことである、とは実は思はないのである。なのに、わざわざ探して340円の送料を払つて手に入れたか。──それは、若い頃、このブログを始めた頃に書いた、本を読み始めた10代の中頃に「若い詩人の肖像」(棚にある文庫を見ると1972年11月6日に読み始め同月16日に読み終へたと鉛筆で書いてある)を読み、感銘を受けた記憶。そして知識として、この「氾濫」は中年の、確か50代の男女の絡みや性的なものも含めた恋愛を扱つた小説だと知つてゐたこと。更にこれを第1作とした三部作と呼ばれるものの残りの2作「発掘」、「変容」が入つた伊藤整全集の1巻を高校時代からの友人田中氏から貰つてゐて、次になに読むかなあ、と本棚を眺めてゐた時に手に取り、たまたまパラパラと捲つて、ちよつと面白さうだ、と感じたこと。これらがどういふ風に作用した知らないが、Amazonでパトリシア・ハイスミスの作品を検索してる時に伊藤整の「氾濫」が頭に浮かんだのだ、たぶん。でもまあ、迷つたね。高いもの。500円。当時の定価が裏にあつて、180円だから。ほんだらけとBookOffを回つたけど、ない。さうなると急にほしくなるんだ。中町信の時もさうだつたし、パトリシア・ハイスミスもさう。で手に入れて、といふ長い経緯はここでお終ひにして、どんな小説なのか。海外でも名前を知られた学者であり企業の重役でもある人物を中心にその家族、妻と娘の身から出た錆的ゴタゴタ、対称的な人物で旧華族の友人の俗物ぶりや女漁り、大学の実情、学閥、飲み屋のホステスさん事情、若い功名心の強い大学助手などが描かれ、人生の一部に付き合はされるワケだ。長篇はみんなそんな風に人物たちと一緒に時を過ごすやうに読みたいもので、これはさう読めた。けれども、どうにも欲・欲・欲の世界であつて、主人公の痛みは自業自得だとしか映らず、また中年男女の閨房描写もなんだか薄汚く感じる。ラストで主人公は自分のネガみたいな若い助手に復讐されるやうな形で娘を奪はれる、嫁に出すのだが、この辺が急ぎ足気味で畳み込んでる気がしないでもなく、また振り返ると結末から組み立てられたやうにも思へる。
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