2011-02-13

山本博文「学校では習わない江戸時代」新潮文庫(374・used)。これは黒本と一緒に買つた。江戸時代を中心にした読み物としては面白い。加賀百万石の参勤交代費用はざつと四億円だつた、とか。鎖国といふ法令は発せられてゐない、とか。

2011-02-12

福澤徹三「黒本 平成怪談実録」新潮文庫(373・used)。初めて聞く名前。ほんとに黒い本で、怖い話を集めて纏めたもの。文庫書き下ろしださうだ。恐いもの見たさで一気に読んでしまつた。長いものもあるし、同じ人が続けて出て来るものもある。怖いかどうかは人によるかもしれないが、不思議な話ではある。信じられない人もゐるでせう。オレは信じるけど。

2011-02-03

ジェイムズ・エルロイ/吉野美恵子訳「ブラック・ダリア」文春文庫(372・used)。去年の8月「ねずみの騎士デスペローの物語」を読んで以来の翻訳物!自分でもびつくりした。因みに解説には表紙の女性がブラック・ダリア、つまりエリザベス・ショートだと書いてあるが、オレが持つてるのはブライアン・デ・パルマの映画でベティ役をやつてた子(ミア・カーシュナーでした、wiki調べ)の写真。小説より先にこの映画をレンタルDVDで見てゐる。読みをへてからもう一度見て呆れた。すつかり内容なんて忘れてたんだねえ。ケイ・レイクがスカーレット・ヨハンソン!全然ちげーよ、イメージと。もつと引き締まつた印象の人ぢやないとダメ。更にマデリンがヒラリー・スワンク!ぢけーよ、全然。金持ちの娘で、実の父親はハンサムだつていふ設定だぜ。どうしたのデ・パルマ、つて配役。しかも、マデリンとベティ・ショートはそつくりだつた、と原作はなつてるし、映画の中でも似てるといふ設定だけどさあ、ヒラリー・スワンクとミア・カーシュナーはまつたくの別人でせう、どう見ても。似てると思ふ人ゐるのかなあ。余談だが、主人公は本ではバッキー・ブライチャートとなつてるけど、映画ではブライカートと呼んでたよ。映画の話はここまで。原作と映画が違ふのはあたりまへだけど、小説ではメキシコまで脚を伸ばして展開するところなどが省かれてゐた。そりやさうだ、570頁もある厚い本だから。かういふのをノワールだかノアールだかと呼ぶらしいが、犯罪小説と警察小説を足した感じ。犯人探しや意外な人物の事件への関与など、ミステリとしての面白さもある。1947年に実際に起つた未解決の事件を題材に真犯人を指摘するといふ離れ業をやつてる。関係者から苦情や訴へはなかつたのかね。地名やらなにやら少々頭に入らないところもあつたが、充分面白かつた。エルロイの母親は彼が10歳のときに誰かに殺され、17歳のときには父親が死んでしまふといふ境遇だつたさうだ。「LAコンフィデンシャル」つてのも書いてて、これもまた映画になつてゐて、それも見たことがある。贔屓のケビン・スペイシーが出てるけど、嫌ひなラッセル・クロウも出てる。これも面白かつた、VHSのレンタルだつたけど。原作は上下2冊。うーん、ちよと満腹だなあ。最後にホントに蛇足なんだけど、p198真ん中辺りの下のはう「どまんなか」、p339の1行目「どまんなか」。そこだけ関西弁はやめてほしいなあ。黒川博行ぢやないんだから。

2011-01-22

で、藤原伊織「テロリストのパラソル」講談社文庫(371・used)。史上初の江戸川乱歩賞、直木賞のダブル受賞と裏に書いてあるし、解説でも絶賛してゐるけれども、読みをはつたばかりの「雪が降る」がamazonのプレビューに倣つて★★★★だとしたら、これは★★★。主人公の設定は都合良すぎるけれども、まあハードボイルドの主人公はみんなこんなものだ。細かいところで気になることが幾つかあるが、ネタバレになるかも。主人公の島村が20年以上も逃げ続けるキッカケになる車での爆弾事件は事故で処理されるのではないか。この事件で死んだ警官の妻の弟が8歳(p125)といふのは作り過ぎではないか。終はりのはうで金田一さんみたいに読み手に知らせない場面が出て来る。p252でホームレスの元医師らしい老人に何を聞いたのか書いてないし、p292でも江口組の上部組織の構造を週刊誌の記者に聞いてゐるが、答へた内容が書いてない、など。p296飲み屋での喧嘩のくだりは、なくても物語に特に影響がない気もするし、犯人が爆弾事件はテロだと言ふけど、単なる私怨だし、ホントに人でなしにしか思へない。その辺りが気になつて、華々しい受賞ほどには面白くなかつた。「雪が降る」のはうがよつぽど面白い。

2011-01-18

藤原伊織「雪が降る」講談社文庫(370・used)。解説が黒川博行だつたので、つい買つてしまつた。ヤケもなく、状態もよかつた。「台風」「雪が降る」「銀の塩」「トマト」「紅の樹」「ダリアの夏」の6篇。「紅の樹」が一押し。堀江徹は助かるんだらうか。遠山が渋い。「雪が降る」も良い。「ランニング・オン・エンプティー」といふタイトルの映画は知らないが、これはジャクソン・ブラウンの曲名と同じだ。繋がりがあるのかないのか、今度調べてみよう。読み終へて直ぐ、江戸川乱歩賞&直木賞ダブル受賞の「テロリスのパラソル」を探して手に入れた。
佐藤秀峰「ハードタックル」小学館ヤングサンデーコミックス(369・used)。「海猿」、「ブラックジャックによろしく」の佐藤秀峰。デビュー作「おめでとオ!」を含む作品集。ほかにタイトル作品「ハードタックル」、「キムラ!」、「エロ兄弟」(4コマ)。「おめでとオ!」と「キムラ!」はヨットを扱つてるんだけど、経歴と関係があるのか。絵がちよつと黒い印象なのは動きのカットで線が多いためか。「キムラ!」のおしまひのはうの絵のタッチが誰かに似てゐると思つたが、誰だつたか忘れた。大友克洋の昔の絵に似てるかもなあ。

2011-01-15

吉崎観音「宇宙X兵衛・完全版」カドカワコミックス・エース(368・used)。「ケロロ軍曹」の作者。くだらなさが実に面白い。いきなり隙のない構へが実は眠つてた、なんて使ひ古されたネタから始まる。絵はDrスランプ、すすめパイレーツを思はせる。良い。

2011-01-09

湊かなえ「告白」双葉文庫(367・used)を読む。第一章「聖職者」で小説推理新人賞、書き継がれたこの「告白」で「週刊文春08ミステリーベストテン」で第一位、第6回本屋大賞も受賞したベストセラーださうだ。映画にもなつたやうだ。作者の名前を見たことがあるなあ程度で手に取り、スラスラ読めるので買つた。一気に読ませる。ミステリとしても面白く読める。教室での喋りに始まり、手紙、日記、ネット上のテキスト、携帯電話の喋りなどスタイルはかはつてはゐるが、要は語り、喋りのスタイルのヴァリエーション。荻原浩の「神様の一言」もさうだつたが、コミックに近い印象。それが悪いと言つてゐるのではない。それが軽いと言つてゐるのでもない。小説の質が変はつてゐるんだな、と思つただけ。それとこれは貫井徳郎の「天使の屍」でも書いたが、中学生の虐めや自殺、殺人をかういふ形で小説にしてほしくない。問題提起なら別の形で書いてくれないか、と思ふ。現実に起つてゐるのに目を背けるのは卑怯だ、と言ふなら卑怯者で結構。現実だけでたくさんだよ。

2011-01-03

去年の大晦日から読み始めた酒井雄哉「一日一生」朝日新書(×3)を読了。いま何をしてゐるか、これから何をするか、それが大事だ、と80歳の大阿闍梨は言ふ。重いなあ。

2010-12-30

佐々木雄二「自律訓練法」(366・used)。タイトルに赤字で「ストレスを簡単に解消!」とある。血圧が急に上がつたのも、ストレスが原因ではないか、と思つてゐる。具体的には特定できないけれども、そんな気がする。長い導入部(1/3くらゐ)から、実践篇へ。試して見る価値はあるかもね。続けて似たやうな本(林成之の本とか)を読んだのは、自分を変へたい、変りたいといふ気持ちがあるから。このままではいけないといふ思ひがある。自己閉塞状態に陥つてる気がしてならない。このまま定年になつて、老後を迎へ、死んでしまふのは堪らない、といふ思ひがある。

2010-12-27

小沼丹「黒いハンカチ」創元推理文庫(365・used)。面白かつた。名前だけは(井伏鱒二絡みで)知つてゐたけれども、作品を読んだのは初めて。「こぬま・たん」と思ひ込んでゐたが「おぬま・たん」が正しいさうだ。A女学院の女教師ニシ・アズマが主人公の連作短篇ミステリ。殺人事件もあるが、殆どが日常生活の中で起るちよつとした事件、犯罪だ。昭和三十二年四月から1年間雑誌に連載されたといふから、風俗は古めかしいが、内容はいまでも新鮮。状態もいいし、貴重なので。105円はお買ひ得だつたね。

2010-12-23

林成之「〈勝負脳〉の鍛え方」講談社現代新書(364)を続けて読んだ。この勝負脳といふ言葉に興味があつた。これで北島康介が金メダルを取つたといふ話を聞いたことがあるやうな気がする。「脳に悪い──」とほぼ同じやうな内容だが、こつちは第一章(P26)に書いてある「意識の二構成理論」=「外意識」と「内意識」についての本になる予定だつたといふ。これもまた後でゆつくり読み返さうか。蛇足ながら、P103-6行目「じつに当を得ていることがわかります。」は「的を射る、的を射ている」の誤りではないか。「まとをえている」→「当を得ている」でせうか。

2010-12-18

林成之「脳に悪い7つの習慣」幻冬舎新書(363)読了。タイトルに釣られて買つてしまつた。脳に悪い習慣とは①「興味がない」と物事を避ける②「嫌だ」「疲れた」と愚痴を言ふ③言はれたことをコツコツやる④常に効率を考へてゐる⑤やりたくないのに我慢してやる⑥スポーツや絵等の趣味がない⑦滅多に人を褒めない、の7つ。脳神経細胞が本能として持つものは「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」の3つだといふ。そこからいろいろな、脳神経外科医としての経験(これが非常に興味深い)を含めた例を引いて説明してゐる。要は脳に変なクセや習慣をつけるな、といふこと。本文中に「だいたいわかった」ではいけない、と書いてあつたから、もう一度読むことにしよう。

2010-11-29

荒川弘「鋼の錬金術師」ガンガンコミックス全27巻(336〜362・一部usedあり)読了。ほぼ予想通りにハッピーエンド。もう一度最初から読み返してコメントします。読み返しながら、少しづつ、日付入りで→

2010-11-26

中町信「夏油温泉殺人事件」ケイブンシャ文庫(335・used)を読了。「夏油」と書いて「げとう」と読む。岩手県北上市にある温泉。元はアイヌ語から来たといふ説あり(wikipedia)。氏家周一郎、早苗の夫婦探偵シリーズの中では面白いはうだ。得意の叙述トリックにまんまと騙される。ダイイング・メッセージの「あの人」の意外性よりも、発端となる転落事故で殺され人物について、なんの疑ひも持たずに読み進んでしまつたのが悔しいぞ。仲町作品は残すところ後6冊を残すのみ。かうなつたら、全部読むぞ。

2010-11-24

唐沢なをき「漫画家超残酷物語」小学館(334・used)読む。面白いところもある。けど、いつでも読み返せるやうに手元に置きたいといふほどではない。最後に触れてゐるが、「漫画家残酷物語」といふのが永島慎二に既にある。読んだやうな気もするが自信がない。永島慎二は好きな漫画家だつた。描く絵が好きな漫画家だつた。フーテンとか、さうだ、柔道一直線だ。いまもむかしも、あんまりメジャーでない人が好きだから、ほかには石川球太(狼王ロボ)とか、園田光慶(怪獣王子)とか真崎守とか。あと平仮名の苗字の人で、園田光慶みたいな絵を描く人がゐたんだけど、名前が出て来ない。──話が逸れたが、唐沢なをきの絵も好きなタイプの絵だ。ちよつと古い、むかし風の線とか、コマとかがある。意図的なのかな。中身は昭和の初めの私小説のやうな印象。私漫画ではないただらうが、印象が葛西善蔵とか破滅型の私小説みたいに暗い。のにギャグ漫画。滅茶苦茶な人物名と強引な展開。第1話を読んで、その続きで一冊になつてる思ひ込んで買つたのだが、違つた。それがちよつと残念。

2010-11-21

貴志祐介「青の炎」角川文庫(333・used)読了。倒叙もの。うまい人だ。スラスラと読める。しかし、どうだらう。主人公が身勝手に見えてしまふ。殺す理由がどうにもすんなり受け入れられない。曾根でさへ、ホントにほかに方法はなかつたのだらうか。後味がよくない。「黒い家」のはうが好きだな。

2010-11-15

斎藤美奈子「文壇アイドル論」文春文庫(332・used)を読んだ。読んだことがあるやうな気がしてゐたが、'08/12月に「文学的商品学」といふのを読んでゐた。80年代〜90年代にかけての文壇アイドル(村上春樹、俵万智、吉本ばなな、林真理子、上野千鶴子、立花隆、村上龍、田中康夫)について書いてある。「はじめに」で自身が言ふやうに「作家論論」ですね。取り上げてゐる作家で読んだことがあるのは村上春樹(羊をめぐる冒険)と立花隆(同時代を撃つ)だけだつた。つまりオレは80年代〜90年代──20代半ばから40代半ばまでにあたる──にかけてその時代を代表する作家を読まないで過ごしたといふことなのだらう。まあ、面白く読んだ。

2010-11-11

井上靖「風林火山」新潮文庫(331・used)を読了。抜群に面白い。山本勘助は実在したかどうか疑問があるさうだ。しかし、ここには山本勘助がいま正に目の前にゐる。信玄晴信も、由布姫も於琴姫も。謙信さへもその姿が目に浮かぶやうだ。川中島の合戦が始まつたところで、勘助の最後で物語は終はる。解説は吉田健一。

2010-10-31

佐野洋「燃えた指」徳間文庫(330・used)を読んだ。9篇収められた文庫オリジナル版。この文庫オリジナル版といふのは佐野洋には結構多い気がする。何冊か読んだ記憶がある。いづれにしても、これは気楽に読める軽いミステリ。高校生で作つた年寄りの話を聞く会で、毎回なにか謎が出て、それを解き明かす。いはゆるミステリ風の殺人などは出て来ない。言葉遣ひについても触れてゐる。

2010-10-25

荻原浩「神様からひと言」光文社文庫(329・used)を読む。サラリーマン小説なんだけど、会社の持つ矛盾に負けないで頑張らう、といふメッセージを持つコミックに近い展開。スラスラ読めるのに、止まつてしまひ、読み終へるのに日数が掛かつた。まあ、止まつてるあひだに他にも手を出してたから。お客様相談室での奮闘は笑へる。

2010-10-23

山田真哉「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」光文社新書(328・used)。5年くらゐまへにベストセラーになつた。当時は買ふ気にも読む気にもならなかつたが、105円で見た目もよければ読んでみるかと思ふ。ケチだね。さう、ケチなのは大事だといふ話。ではなく、会計についての本なのだが、プロローグP4で「会計は」「やさしく教えることが出来るような学問ではない」と書かれてゐて、ちよつと引つ掛かつた。会計つてのは実務、技術ではないのか。学問といふのはさあ、進化する、といふか進歩すると言ふか、真実を追究するといふか。会計学といふのか知らないが、実務だよなあ、どうみても。──それにしても数字に強い弱いはあるね。P185からは特に面白かつた。統計の誤摩化し、と言つちやあ悪いが、本質が見えなくなるのは確かだよ。特殊な統計の仕方とか。タバコがいい例だらうけど。いづれにしてもこれがベストセラー。これはまあまあ面白く読んだけど、バカの壁とか、国家の品格だか、遅ればせながら読んだけれども殆ど陸でもない話。ただの時間つぶし。ミステリーのはうがマシだな。驚きも意外性もない。

2010-10-22

林博史「頭のリズム・体のリズム」ごま書房GOMABOOKS(327・used)。サーカディアン・リズムを中心に人間の持つ複数のリズムについての話。1日単位であつたり、月単位だつたり、年単位だつたり。1日のうちでも昼と夜であつたり、そのリズムの内容によつて周期は様々だ。自律神経の働き、交感神経と副交感神経の役割や入れ替りの時間帯、睡眠についても面白かつた。特に染色体のテロミアについて。ここが寿命を司つてゐるといふ話。ほかにも、年を取ると時間が早く過ぎると感じるのはなぜか。サーカディアン・リズムは24時間よりも少し長い25時間周期だが、その周期が加齢によつて短くなつて行くせゐなんださうだ。なるほど。ここにあるのは実証科学的な報告であつて、現象から推理された法則を実験その他で証明できたもの、と言へる。つまり、今後の研究で、更に解明されたり、ひつくり返されたりするものもないとは言へない、といふこと。まだ始まつたばかり。でも興味深いね。

2010-10-10

吾妻ひでお「うつうつひでお日記DX」角川文庫(326・used)。文字が小さくて文庫では読みにくい。失踪日記が面白かつたので、買つた。内容は失踪日記で書かれた生活以降の日記。吾妻ひでおの絵は好きだねえ。ロリコン少女の絵のはうはどうでもよくて、いかにも漫画の丸つこいタッチなのに、意外に細かく書き込んであつたり、ちよつとしたものにもきちんと影がついてたりするところが好き。業田良家の自虐の詩褒めてる。でせう、つて気分。山本英夫のホムンクルス褒めてる。読んでみるかな。
一緒に買つた山本英夫「のぞき屋」小学館YSコミック(325・used)も続けて読んでしまつたので書いておかう。前篇、後篇に分かれてゐて、前篇はトラウマ克服篇。後篇ではのぞき屋商売を開始し、のぞき男を捕まへる話。絵はやつぱり斜め横顔の特徴はそのまま。このあと新のぞき屋でシリーズになつてる。読んでみるかなあ。
山本英夫「1(イチ)」小学館YSコミックス(324・used)を読んだ。山本英夫は「モムンクルス」といふのを書いてゐるんだよね。それがBookOffで眺めてると、たまに目に入る。ホムンクルスといふ言葉、名前は鋼の錬金術師に出て来る。なので気になつてた漫画家。1巻ものが2冊あつたので買つてみた。高校生の話で、ケンカもの。弱虫みたいに見えるヤツが実は強くて、最後には宿敵を倒すといふカンフー映画的に展開する。絵が不思議で、正面で見る顔と僅かに下から見上げるやうにして見る七三くらいの横顔(真横ぢやない)の目鼻口の配置が向いてる側に寄つてゐる感じになる。つまり向いてないはうに余白といふか、頰と顎が広くなる傾向がある。なので、正面顔の次のコマにそれが出て来ると一瞬誰の顔がわからないことが何度かあつた。面白かつたし、絵も上手いんだけど、さういふ癖といふか、意図的なのか、ある人。→なんと、この続篇なのか「殺し屋1」(殺し屋イチ)といふのがあつて、それはもう容赦なしのグロさ、だ。2010.10.20

2010-10-05

橋爪大三郎「はじめての構造主義」講談社現代新書(323・used)を読む。構造主義に関する本は2冊目。内容はよく判らないが、まあ、構造主義がなんであらうと、考へ方の問題なんだな、といふのが結論。遠近法の説明で、時間は兎も角、空間的に見えてゐるやうに書くための手法が遠近法。時間を持ち込んだらどうなるのか、それが未来派──セヴェリーニ、マルセル・デュシャンの「階段を降りる裸婦」もさうかな、それを空間的に再構築するとキュビズムでせうか。やつぱ表現としては絵画、美術運動が一番進んでる気がする。小説が最も遅れを取つてゐるね。

2010-09-29

神坂次郎の「サムライたちの小遣帳」新潮文庫(322・used)を読む。あまり期待はしてなかつたのだが、たくさんのエピソードが書かれてゐて、買つた日に読み始め、止められなくなつてしまつた。侮れない。さすが南方熊楠の伝記を書く人だ。ちやうど休みだつたので、昼過ぎからゆふがたまで読み耽り、あいにく雨だつたからあと4篇を残して、つまり80篇を一気に読んでしまつた。その殆どが日本の歴史にまつはるエピソード。面白い話は幾つもあるが、とりわけ気に入つたのは遊女秋篠の話(P185)。惚れた男の仇討ちで、あはや返り討ちかと思はれたそのとき、助太刀したのが男装の秋篠。思はず鳥肌が立つた。それともう一つ。林少尉の死(P271)。敗戦の翌日深夜、水戸航空通信師団の青年将校が徹底抗戦を叫んで蹶起するも、鎮圧され、林少尉は死ぬ。23歳。大宅壮一編「日本の一番長い日」とその映画を思ひ出した。宮城で拳銃を顳顬に当てて自決するのは黒沢年男だつた。切腹する阿南陸軍大将を演じたのは三船敏郎だつた。表裏原田甲斐(P266)も面白かつた。伊達騒動と原田甲斐について知りたい、読みたい。長く悪人扱ひされてゐた原田甲斐の再評価のきつかけを作つたのが「言海」「大言海の編纂者大槻文彦博士だといふのも興味深い。ときどき思ひ出してはペラペラと拾ひ読みするのに良い本。

2010-09-02

貫井徳郎「天使の屍」角川文庫(321・used)読了。正直言つて、作りすぎてゐる感じ。トリックが先にあつて、物語を押し込んだやうに見えた。14歳といふ設定は上手い。しかし、自殺の動機はやつぱり弱いだらう。メディアが無責任に流す少年の自殺といふものを、また虐めの状況をそのまま取り込んでゐるやうな気がする。それが現実の一部として実際に身近なことだとしても、一般化するのはどうだらう。

2010-08-30

娘に「読んでみる?」と勧められて「ねずみの騎士デスペローの物語」ケイト・ディカミロ/子安亜弥訳(320)を読んだ。図書館から借りた本なので、学校が始まつたら返すといふので日がない。きのふから読み始め、どうにか読み終へた。作者がときどき顔を出して読者に語りかける形式。読み始めたときは「建具職人の千太郎」のはうが面白かつたな、と娘に言つたものだが、やや尻細りではあるものの、どうしてなかなか。デスペローとは、母親が絶望despairの意味で付けた名前。この母親、デスペローが人間と接した罪を問はれ、地下牢へ連れて行かれるとき「さやうなら」と言ふ。P68で作者はあなたがお母さんから聞きたい言葉は「さやうなら」ではなく、「かはりに私を連れて行つて」ではないか、と問ふ。このお母さんの名はアントワネット、お姫さまはピー(と、やや素つ気ない)、デスペローと対決するドブネズミがキアロスキューロ(光と闇を組み合わせて表現することの意味で絵で使ふ言葉ださうだが、スペルがわからないので調べられない)、片耳のない年寄りのドブネズミがボッティチェリ!

2010-08-29

東野圭吾「予知夢」文春文庫(319・used)を毎日昼休みに一篇づつ、5日で読み終へた。まへに読んだ「探偵ガリレオ」の続篇。この後で「容疑者Xの献身」が書かれた。オカルト風の謎があり、湯川助教授が登場する。謎を解いて行くと単純に思はれた事件の様子がかはる。自殺が殺人に、またその逆にもなる。ミステリとしての面白さもある。

2010-08-19

ゆふべ岩崎京子「建具職人の千太郎」くもん出版(318)を一気に読んでしまつた。娘が小学校の課題図書で買つてもらつたものらしく、居間の隅においてあり、ずつと気になつてゐた。残業で遅かつたので、娘は床に就いてゐたが、その隙に、といふわけではないけれども、夕飯のオカズをツマミに晩酌をしてゐるあひだに読みをへた。小学生高学年向けで、活字も大きいし、行間もあるから、200頁の本だが、それほど長い話ではない。七歳で建具職人に奉公に出された千太郎(実在のモデルがあるといふ)とその姉おこうの物語。先づ、棟梁がいい。出戻りの若棟梁もいい。千太郎を指名して寺子屋の机を作らせる名主の藤右衛門もいい人だなあ。

2010-08-13

岩明均「骨の音」講談社モーニングKC(317・used)を読んだ。まへに同じ作者で「七夕の国」といふコミック4巻本を読んだことがある。いろんなタイプの漫画が書ける人だ。好きなのは「指輪の日」と「和田山」。最後のタイトル作「骨の音」は力が入つてるのだが、今ひとつ意味がわからなかつた。

2010-08-09

続けて池波正太郎「鬼平犯科帳(三)」文春文庫(316・used)を読む。(一)8篇、(二)7篇だつたが、これには6篇。なかでも4つ目の「兇剣」が長い。この巻には解説はなく、池波正太郎の「あとがきに代えて」が付く。どうしても長谷川平蔵を書きたかつたといふ。惚れ込んだ人物を実に楽しみながら書いてゐるのが伝はつて、そこがこのシリーズの魅力だ。

2010-08-03

池波正太郎「乳房」(315・used)を読む。これは鬼平犯科帳の番外篇で、長篇である。勘蔵といふ男を殺したお松と火付盗賊改方の長官になる長谷川平蔵を軸に十三年間に亘る物語だ。なかなか読み応へがあつた。一筋縄ではいかない善と悪の描き方が上手い。池波正太郎のシリーズものは他に剣客商売、仕掛人藤枝梅安もそれぞれ第一巻を読んでゐるが、やはり鬼平が一番好きだ。

2010-07-30

漸く、櫻井よしこ「「眞相箱」の呪縛を解く」小学館文庫(314)を読了。敗戦後、GHQが3年間にわたり日本人に対して行なつた情報操作ラジオ番組「眞相箱」をめぐるノンフィクション。軍事作戦についてのページが長いので手間取つてしまつた。アメリカが正しく、日本の帝国主義は悪だ、といふ「常識」は、実は洗脳されてゐたのだ。真珠湾攻撃もさう、南京大虐殺もさう。戦争を集結するために原爆投下は仕方なかつた、なんてことは大嘘だし、東条英機が戦争を始めたなんてことも出鱈目だつた。メディアの流す「常識」は一度疑つたはうがいい。P370当時、朝日新聞の編集局長だつた細川隆元(日曜の朝だつたかなあ、もう一人の爺さんと言ひたい放題だつたテレビ番組があつた気がする)は自著で、終戦の5日前に政府情報局総裁の声明で戦局は最悪の状態だと知りながら、新聞報道せず、徒らに戦意を煽る記事を書きつづけたといふ。かういふ連中がゐたんぢやあ、マスコミなんて信じられない。新聞は特に要注意。

2010-07-19

読み始めたらやめられなくて最後まで読んでしまつたのは、野口恵子「かなり気がかりな日本語」(×2)。05.12.23に読んでるが、まつたくコメントをしてゐないので、ちよつと書かう。最近の店員が言ふ「◯◯円から預かる」は一応取り上げてるが、それ以上は触れてない。そして「やまびこ挨拶」。著者が教へる大学の学生にも不評であるにもかかはらず、止める気配すらない。どういふ調査をしてゐるのか。恐らく、多少評判が悪くても、苦情になることは避けたいといふことなんだらう。返事もしない、なら先に言はせてしまへ、と。オレの行く某古書チェーンではよく聞く。P70「〜で」の誤用も面白い。「作家で歌手の、」なんて新聞には頻繁に出て来る。まあ、新聞なんていふメディアは全く信用ならない存在だが。それから敬意の表現の過剰。「始めさせていただきます」は確かに聞くが、オレは言へない。変だもの。来週と翌週の違ひも、なんとなく使ひ分けてゐるが、かういふ言葉の使ひ方はきつと学校で習つてゐるのだらう。或はまはりが、それはをかしいと教へてくれた、とか。今は誰もどこでも教へなくなつたから、大人のせゐだ、と著者は言ふ。「逆にある意味、基本的には」さうなんだらう。

2010-07-12

コミック続き。柳沢きみお「ふしだならフェイス」秋田書店ヤングチャンピオン・コミックス全5巻(309〜313・used)。ちよつとスケベなのが読みたいな、と思つて買つて読んだわけだが、それほど面白くなかつた。いとこ同士の杉男と真美とのラブコメディ、いやセックスコメディか。絵がいま一つ好みでない、といふのも理由かな。古く感じる。タイトルの意味もよくわからない。フェイスは顔?それともblind faithのfaithかな。

2010-07-03

古谷実「ヒミズ」講談社ヤンマガKC全4巻(305〜308・used)を読む。タイトルは実在する日本固有種のモグラの仲間。重苦しい内容で、しかも救ひのない結末。これだけ振幅の激しい少年の心は中学生であれば納得できるが、絵からはもう少し年齢が上に見える。或は今の中学生はそんなもんか。住田が見る幻覚が怖い。雑誌掲載時とラストが違ふらしい(wikipedia参照)。

2010-06-27

東野圭吾「容疑者Xの献身」文春文庫(304・used)。これは犯人の側から書いてゐるから倒叙推理に属するのか。このトリックは意外だつた。ただオレのモラルとしては石神の選択は許せない。ラストは別の形にはできないだらうか。大袈裟な感じがした。

2010-06-17

まへもつて説明すると、毎晩ではないけれども、寝るときに布団の中で本を読むことがある。主にコミックなんだけど、小説のこともある。一昨日、なににしようか選んでゐて、なんとなく中町信を読む気になつた。結局「田沢湖殺人事件」(×2)にしたが、特別な理由はない。きのふは時間を見て続きを読み進め、布団の中で読み終つた。が、終盤の記憶がはつきりしなかつたから、けふ昼休みに読み直した。このブログでも06.03.26付で書いてゐる。今回のはうが面白く読めた。やつぱりピンク電話は出来過ぎだけど、今度は堂上の視点で書かれた第二部「密室の過去/第六章浪風理太郎/3」。この時点で堂上がタンちやんは誰か疑問視するのは誤読を誘導してる。が、まあ、なかなかの作品だと思ふ。因みにけふは中町氏の一周忌であつた。

2010-06-15

(たぶん)久し振りに清水義範「日本語の乱れ」集英社文庫(303・used)を読む。タイトル作以外、あんまり面白くなかつた。中途半端な、小説と呼ぶしかないやうな形式の短篇集12。買つてすぐに読み始めたとすれば (よく覚えてないが)、読み終はるのにほぼ1箇月掛かつたことになる。まあ、「20世紀少年」やら、いろいろ読んでる合間にパラパラめくつてゐたのだつたから、そんなもんか。

2010-06-06

更に続けて中町信、しかも草津続きの「新特急「草津」の女」ケイブンシャノベルズ(302・used)。氏家シリーズなのに、ちよつと異質。なのは、ネタはバレてゐるんだけど、外から見た氏家、と言ふか。そこが意外に面白い。中町信にはドンデン返しがトラウマのやうにあるね。もつと人物説明や状況説明を詳しくすれば、何人も殺さなくても1冊分になると思ふ。

2010-06-04

続けて中町信。「草津・冬景色の女客」ケイブンシャ文庫(301・used)。けふ届いて、休みだつたから一気に読んだ。苦手な氏家シリーズだつたが、早苗の断定的な誘導推理もそれほど強引ではなかつた。面白いんだけど、やつぱり、どうしてこんなに人が殺されなくてはいけないんだらう、と思ふ。6人殺されちやふんだよ。もつと早く解決させてよ、と。

2010-06-03

中町信の「三幕の殺意」(×2)を読み返した。去年の6月17日に──だからもうすぐ一周忌である──亡くなつてゐたことを知り、追悼のつもりで読んだ。面白かつた。まへに読んだときも、いい印象だつたと思ふ。序でに、あんまり値上がりしてなくて、読んでないものを2冊みつけてamazonで買つてしまつた。

2010-05-28

池上遼一「近代日本文学名作選」小学館(300)を読む。Amazonで見つけて「ほしい、読みたい、見たい」と思ひ、しばらくカートに保管してたのを、やつぱりカートに保管してたMike OldfieldのThe Songs Of Distant Earthが聞きたくなつて、一緒に買つたのだ。どつちも単品では送料が掛かつてしまふので。レビューで誰かが書いてた気がするが、まさに「絵師」だね、池上遼一は。漫画とか、劇画とか、さういふ範疇で括るのは相応しくない。どれも見事だが、江戸川乱歩の「お勢登場」が特に素晴らしい。

2010-05-26

志ん朝一門「よってたかって古今亭志ん朝」文春文庫(299・used)を読んだ。志ん朝が息を引き取る2001年10月1日のところ。泣きさうになる。馬鹿だねえ、弟子でもないのに。ああ、志ん朝が聞きたい。愛宕山か大工調べがいい。噺が聞きたい。

2010-05-20

古谷実「わにとかげぎす」講談社ヤンマガKC全4巻(295〜298・used)。これも第4巻がなかなか手に入らなくて、「20世紀少年」以上にイライラした。だつて3巻まで読んでて、面白くて堪らず、ああ、最後はどうなるんだらう、といふ状態でのラスト第4巻だから。そもそも変な題名だなあ、と思つてパラパラめくり、その場で揃つてた3冊購入したワケだ。古谷実の名前は知らなかつたけど、「稲中卓球部」といふ漫画の題名は知つてた。取り敢へず読んでみるか、が大当たりだつた。絵も、線がいい。好きだなあ。非常によい。タイトルの意味は、熱帯~亜熱帯海域に広く分布する深海魚の名前であり、深海魚の中でもとくに自力で発光する機能をもつといふ。wikipediaで調べると、古谷は望月峯太郎のファンだと出てゐた。望月もいいが、古谷もいい。ほかのも読みたい。

2010-05-17

浦沢直樹の「20世紀少年」小学館ビッグコミックス全22巻、続けて「21世紀少年」上・下(271〜294・used)を読んだ。映画化の話を知るまへから、読んでみようかと思つてゐた。タイトルがT-Rexだし。105円で売つてるのしか買はなかつたから、集めるのに手間取つた。面白いんだけど、尻つぼみ。ともだちの凄さはなんだ?なぜ、そんなに力があるのか伝はらない。逆にそれほど、西暦をなくせるくらゐなら、国連軍になにができるのか。ともだちが誰か、といふ謎で引つぱるけれども、登場した頃は顔を隠してはゐない、読者に見せなかつただけだ。始まつてすぐ、ともだちのマークをケンヂが思ひ出せない理由がわからん。当時の仲間についても同じ。作りすぎ。引つ張りすぎ。半分くらゐに凝縮したら、もつとインパクトが強かつたのではないか。細かいところで気になる事がたくさんある。もう一度読み返さう。

2010-05-04

原作は工藤かずや。絵は池上遼一。「舞MAI」少年サンデーコミックス全6巻(265〜270・used)を読んだ。この2人の組みあはせは「信長」もさうだが、こつちは最終巻(8巻)が手に入らなくて始められない。全部揃つてると思つてレジで金額を聞いたら7冊しかないことに気がついた。同じ轍を踏まないやために「舞MAI」は全巻セットをAmazonで購入。昭和60年から61年に掛けて週刊少年サンデーに連載されたもの。実を言ふと、Sparksについてwikipediaで調べたことがあつて、その中でティム・バートン監督で、これを映画にしようとしてた時期があつた、といふ話を知り、興味をもつた。早速、Amazonで検索したら絶版。復刻した1サイズ小さい3冊本なら新刊で買へるのだが、最初に本になつた状態で読みたかつたので、中古全巻揃ひを敢て購入。ヤケは仕方ないが、目立つた汚れや折れ、書き込みもないので、状態はまあまあ良好。サイキック少女もの。世界を操る裏の組織と地球の重力の450倍といふエネルギーを持つ少女久住舞の戦ひ。面白かつた。池上遼一の絵はさすがに巧い。

2010-05-01

野坂昭如の「文壇」(264・used)を読む。久しぶりに読む野坂昭如の文章、やはり読みにくい。「エロ事師たち」は読んでる。「受胎旅行」も読んだ筈。もちろんスケベな興味で、高校時分だつたか。丸谷才一と親しかつたのは初耳。文壇裏話だが、恐るべき記憶力。なにより固有名詞が多い。雑誌名、編集者、作家、作品名、それらを省くと2/3くらゐになつてしまふのでは、と思ふ。最後は昭和45年、三島自決で幕を閉ぢる。三島批判の丸谷がその年の大晦日、「たった一人の反乱」を書き上げた話は象徴的。

2010-04-29

なんとなく望月峯太郎の「鮫肌男と桃尻女」を読み返した。ここ2年くらゐのあひだ、コミックを気まぐれに買ひすぎてる気がして、少し整理しようと思つて、金云々ではなく、場所を取る。から、読み返す気がないものは既にBookOff行き。先週、「座敷女」も読み返したら、面白かつたし、これは2007年の1月に読んでる。そのときは、あんまりなあ、だつた。手慣れた感じで、才能に寄りかかつてるやうで、ちよつとなあ、だつたのに、読み返したら、……面白い。たつた3年で、どうしてこんなに受け取りかたが違ふんだらう。絵はもともと好きなタイプの絵だし、これ、もしかしたら映画になつてるかな。若い監督が撮りたくなる感じの話だ。←1999年に映画になつてた(wikipedia検索)。

2010-04-26

赤川次郎「マリオネットの罠」文春文庫(263・used)を読んだ。第三章の途中まで、一気に読み進んだ。赤川次郎の文章は頭に入り易いので、まへの日どこまで読んだが考へる必要がない。第四章まで読み、やや期待はづれかと思ひきや、終章でのドンデン返しに吃驚。もう一度始めから、見落としがなかつたか読み返さねばなるまい。

2010-04-18

バトリシア・ハイスミス/青田勝訳「見知らぬ乗客」角川文庫(262)をどうにか読み終へた。ヒッチコックの映画とは勿論ちがふのだが、ブルーノーがミリアムを殺してからの展開が読んでゐて、よく意味が判らない。ガイとブルーノーの心の動きと行動、その説明が独特でなにを言つてるのかさつばり頭に入らない。ヒロインが入つてた短篇集はあんなに面白かつたのに、長篇は疲れる。

2010-04-14

苦戦してゐる。パトリシア・ハイスミスの「見知らぬ乗客」。赤川次郎の「人畜無害殺人事件」のまへから読み始めのに──いや、もしかしたら、もつとまへかも知れないが──途中で興味をなくして、未だに半分すぎたくらゐ。ほんとに読みにくい。修行のやうだ。短篇はすごく面白いのに、ハイスミスの長篇は疲れる。「リプリー」もさうだつた。

2010-04-11

スティーヴン・キング/深町眞理子訳「シャイニング」上下・文春文庫(260.261・used)を読み終へた。キューブリックの映画とは全然違ふといふ話は以前hiko8さんから聞いてゐたが、なるほど確かに違ふ。映画が気に入らなくて自ら脚本を書いたテレビシリーズ(全3回)といふのを見たことがあるんだけど、そつちのはうが近いのは当たり前だらうが、それでもずゐぶん省略してる。といふのも、原作はものすごく書き込まれてゐるからだ。クーンツもさうだけど、キングの場合は心理といふか、内面まで克明に書き込んでる。読みながら、トランスはまるでオレぢやないか、と思つた。軽井沢がもつと寒くて雪深く孤立してゐたら、どうなつてゐたことか。ダニーの不思議な能力のはうに注意が行つてしまふが、実は幽霊屋敷の話なんだね。
蛇足ながら、こんなホテル火災の原因を作つた家族、管理人に対して賠償責任とか、さういふ話はないんだらうか。その辺が心配、よけいなことなんだけど。(2010.04.13)

2010-03-28

ディーン・クーンツ/松本剛史訳「ミスター・マーダー」上下・文春文庫(258.259・used)。途中でやめられなくなる。例へば、ハリウッド映画のSFホラーのやうな世界。それは「ライトニング」にも「ストレンジャーズ」にも言へる。大掛かりで、非日常的な──映画の世界ではタイム・スリップも宇宙船もクローン人間もあたりまへだが小説では未だにSF的だと一段低く見られる傾向がある──仕掛けが隠され、反体制的な立場に立たされた主人公が多くの犠牲を払ひつつも辛くも逃げ切り、ラストはハッピー・エンド。武器や情報機器、科学や医学などの新しいデータ(こつちが知らないだけ)が溢れ、家具やインテリアの知識も豊富だし、描写も細かい、呆れるほどに。スティーヴン・キングと比べられることがあるやうだが、キングとは書き方が違ふ気がする。いま「シャイニング」を読み始めてゐるのだが、細かさの質が違ふやうに思ふ。クーンツはやや理屈つぽい感じ。

2010-03-11

赤川次郎「人畜無害殺人事件」(257・used)を読んだ。4篇の連作短篇集。これに出てくる大貫警部、井上刑事、向井直子の3人は、シリーズのやうだ。大貫の強烈さは、ちよつとフロストを思はせるが、フロストほど不眠不休の警部でないのが残念。犯人の意外性、話の運びの早さ、軽いと言へば言へるけど、善人ばかりではないし、それなりに面白く読めた。

2010-03-08

岩明均「七夕の国」全4巻・小学館(253〜256・used)を読む。なんとなく手にしてパラパラとめくつたら、面白さうで、ちやうど4冊並んでゐて、4冊目の裏表紙を返して見ると全4巻となつてゐたので買ふことにした。なかなか面白かつた。後半になると謎解きの部分が呑み込みにくく、一気に読み終へることはできなかつた。簡単に言へば伝奇もの、特殊な能力を持つた人たちの話だが、七夕の話やグレゴリオ暦や太陽暦の話、更には未知との遭遇、クーンツのストレンジャーズ風の展開もある。絵が几帳面で丁寧なところが好ましい。

2010-02-18

小説以外のもので、すぐに読めるもの。──で、高千穂遥「自転車で痩せた人」生活人新書=NHK出版(252・used)を読んだ。最近は走つても代謝が悪くて体脂肪が落ちにくい。なにかほかのことも始めようかと思つていたので目についたのだらう。でもまあ、そこそこに面白く読めたし、自転車もいいかな、と考へた。

2010-02-15

年に1回くらゐのペースで、けふから本格的に英語の勉強を始めるぞ、と意気込む時期があつて、さういふときに買つた本が幾つかあるのだが、これもそのひとつ。行方昭夫「英語の発想がよくわかる表現50」岩波ジュニア新書(251)。なぜこれを選んだのか。ジュニア向けならスラスラだらう、と考へた。それと、これを買ふまへに読んだモームの「サミング・アップ」の翻訳がこの人だつたので、どんなことを書いてるんだらう、といふ興味もあつた。エピソードは面白い。吉田健一の話も出てきたし、ベッカムやツィギーのコックニー訛りの話も。エッセイを読むやうな気分で読み進んでゐたら、最後の章(Ⅴさらに意欲のある人のために)の頭でいきなり、「さて、みなさん、Ⅳまでしっかり身につきましたか。50の例文は完全に覚えましたか。追加の例文も暗記はしていなくとも、完全に理解していますか。」だと。どのくらゐの日数を掛けて本を読む人たちを想定してゐるのか。新書なら大体200頁程度だから2日くらゐでせう。せめて3日。3日で、新書で、そこまで期待するのはどうだらう。受験参考書ぢやないんだし。その気がなければ、先へ行けない、そこで終はり、つてことですかい?かまはず進んで読了したけど。

2010-02-03

いまのところハズレが1冊もない、黒川博行の「切断」創元推理文庫(250・used)を読んだ。もとは新潮社から単行本、新潮文庫にも入つてゐたといふ。また解説によれば単行本と文庫の結末が違ふさうで引用してある。どつちを選ぶかは好みだらう。解決したと言つていいのかどうか。かういふ犯罪小説、暴力団がらみの世界よりも、黒マメコンビの警察小説がいいなあ。

2010-01-30

これもコミック。新田たつお「チェン爺」全3巻 小学館(247〜249・used)を読む。脳を交換するといふSF風の話。1巻だけ読んで、「静かなるドン」みたいに何十巻にもなるんぢやないかと思つて売るつもりでゐたのだが、全部で3巻だと知り、最後まで読んだ。なかなか面白い。最後のところでは、ちよつと感動してしまつた。

2010-01-25

そして遂にコナン・ドイル/延原謙訳の文庫版ホームズ全集(さう解説に書いてある)の最後の1冊「シャーロック・ホームズの叡智」新潮文庫(246)を読み終へた。これでもうホームズとはオサラバできる。まあ、こんな風にしてミステリは始まつたんだなあ、と、いい勉強になりました。すごく気が楽になつた。肩の荷が下りた感じだ。007とブラウン神父が全部揃つてるんだけど、……当分のあひだ放つておかう。

2010-01-24

コミックが続く。「新・ビッグ・マグナム黒岩先生」作・新田たつお/画・かどたひろし実業之日本社(245・used)。新だから、てつきりその続きを新田たつおが書いたと思ひ込み、買つてしまつた。が、実は違ふ人で原作だけだつた。よく見て買へば判つたのに。かどたひろし氏は知らないが、もう殆ど池上遼一。ドンの母親なんかは池上遼一的だから、勘違ひしたのかも。なかなか面白い。続きはなくて、これ一冊。

2010-01-22

一色まこと「花田少年史」全4巻 講談社(241〜244・used)を読む。題名だけは見たことがある。テレビでやつてたやうな気もする。Wikipediaによれば2002年に深夜枠(日本テレビでは火曜24:50〜)でアニメが放映されたと出てる。もつと長く続いて、何冊もあるのかと思つたがこれで全部だつた。面白かつた。何度でも読めさうだ。「め組の大吾」みたいに。絵もよい。なんで花田か。たぶん相撲の若貴時代だつたからなんだらうね。

2010-01-17

途中から、どうにもやめられなくなつてR・D・ウィングフィールド/芹澤恵訳の「フロスト気質」上下・創元推理文庫(239.240)を読んでしまつた。もう翻訳がないのに。まへの「夜のフロスト」が聖書かと思はせる厚さだつたが、さすがに今度は上下2冊。よけいなことだが、オレは上下巻、或は上中下でもいいが、1つの話が複数の巻に分かれてるのは好きぢやない。違ふ本みたいに思へてしまふのだ。ちよつとした疑問があつても別の巻になつてたら、すぐに確かめられない。まあ、そんな個人的な好みはどうでもいいが、今回も存分に楽しめた。

2010-01-04

元日からきのふまで酒井雄哉(大行満大阿闍梨)の「一日一生」(×2)朝日新書を少しづつゆつくり読み直した。新しい年の最初の本には相応しい。今年は読み掛けたままの本や、もう一度読んでみよう、読んでみたいと思ふ本を中心にし、新しいのは控え目に、を基本にする。
──再読の場合、3回以上のときに(滅多にないだらうけど)どういふ風に書けばいいだらう、と考へてゐて、「×2」「×3」といふのはどうか、と。なので、修正した。2010.01.15

2009-12-31

コナン・ドイル/延原謙訳「シャーロック・ホームズの事件簿」新潮文庫(238)読了する。漸く25年前に買ひ揃へたホームズも残すところ、あと一冊、「シャーロック・ホームズの叡智」だけになつた。ドイルのホームズものは長篇4冊、短篇集5冊なのだが、この新潮文庫では10冊になる。その辺りは解説に書いてあるのだが、この「叡智」といふ本は出版社と訳者で作つたものなのださうだ。つまり長さ、厚さの関係で適当に割愛し、最後に割愛したもので「叡智」といふのを作つた、と。よくまあ、そんな勝手な真似ができたものだ。いまは他の出版社からも翻訳が出てゐるが、そつちはどうなんだらう。いづれにしても、相変はらず読みにくい。漢字を敢へて平仮名にしてるところが特に読みにくい。理由が判らん。まへにも書いたが、言ひまはしがまるで時代劇だよ。テレビの「水戸黄門」だつて、もつと今風だぞ。重箱の隅を挙げると、……P148では「かわいい」なのに、P157では「かあいい」。P194には「うでる」、これは「ゆでる・茹でる」だらう。岩波の国語辞典でも「うでる」には「→」があつて「茹でる」を引くやうに指示がある。P196「一匹のハイすらあえて殺し得ざる」?「ハイ」は「蠅」のことか。謎解きも、会話が中心で進むし、ホームズだけが知つてることばつかりで、読むはうは蚊帳の外。パロディかと思ふほど、ピンと来ないね。

2009-12-28

遂に読み終はつてしまつた。R・D・ウィングフィールド/芹澤恵訳「夜のフロスト」創元推理文庫(237)。その厚さ、なんと761頁。旧約聖書かと思つたぜ。読み応へ満点だ。それにしても今回のフロストは土壇場で大失態かと思はせて、まんまと引つくり返す。解説に出てるドーヴァー刑事の本が読んでみたくなつたよ。きつと面白い(俺の直感がさう言つてる)。が、そのまへに、「フロスト気質」上下巻を片付けちまはう。

2009-12-21

まだ読みをはつたワケではないが、「夜のフロスト」半分くらゐ一気に読んだ。相変はらず面白い。「フロスト気質」も買つてあるし、暮れまで充分楽しませて貰はう。最後の「Winter Frost」の翻訳がいつ出るのか、待ち遠しい。

2009-12-14

けして悪く言ふつもりはない。面白かつたし、P395の最後には戸惑ひと驚き、さうか、さう来たか、は、ある。先づ、上手だよね。と、文章が上手いなあ、と思ふ。一つの文章を読み返すことも、まへのページへ戻ることもなく、どんどん読める。これはなかなか難しい。貫井徳郎「慟哭」創元推理文庫(236・used)を読んだ。ボロボロぢやないのを渋川のBookOffで手に入れたので。……しかし、P338〜339の犯人からの手紙はネックだらう。これを素直に、さういふ悪戯の手紙はいくらでも来るんだな、と受け取るか、いや、これはをかしいぞ、と見るか、これは賭けかも知れない。最後まで読んでから、ちよつと待てよ、と読み返したのは、この部分に無理があるやうな気がしたのだ。オレは正直、これはズルくね、と感じた。ま、書き手寄りに読めば、さう期待してるのだらうか。まへに読んだ「プリズム」でも感じたことを、これにも感じた。ここまで書くのなら、もつと汚れた、穢い部分まで書かないといけないんぢやないか、といふこと。スマートで行儀よく、見栄えもいい、お手本のやうです。上手く言へないのでhiko7 newsで書くかも。

2009-11-28

R・D・ウィングフィールド/芹澤恵訳「フロスト日和」創元推理文庫(235)を読み終へてしまつた。ああ、フロストが読みたい。読みたい読みたい読みたい。いま直ぐに。しかし、いまは手持ちの金が、……。P468、3行目「狭い路地の真ん真ん中に」。素晴らしい!!お手本ですよ。「ど真ん中に」ぢやない。嬉しいなあ。芹澤さんみたいに標準語で訳して下さいよ。コメントは短いけど、大満足だよ。

2009-11-21

ちよつと時期は早いが忠臣蔵だ。池宮彰一郎「四十七人の刺客」新潮文庫(234・used)を読む。忠臣蔵は知つてゐる。丸谷才一の「忠臣蔵とは何か」も読んではゐる。テレビや映画の忠臣蔵は見てゐるが、小説は読んだことがない。大佛次郎の「赤穂浪士」も。これは面白く読んだ。討ち入りの場面が細かく書かれてゐる。柳沢吉保、色部又四郎、千坂兵部、興味深い人物がたくさん出て来る。吉良と浅野の刃傷は不明のままだが、その後の討ち入りまでの流れはよく判る。侍、武士とは何か。p26内蔵助が風呂で奥田孫太夫に言ふ「人にはいのちより大切なものがある」ここで、ちよつと熱いものがこみ上げ、一気に最後まで読み通すことができた。これまで時代小説はあまり読んだことがない──精々、鬼平など池波正太郎作品、岡本綺堂どまりで、山田風太郎でさへ読めない──ので、なかなか入れなかつた。どこまでが史実なのか、史実を知つたうへで、どう作られてゐるのか、といふ愉しみがあれば、もつと面白いんだらうね。ぢやあ、次は隆慶一郎かな。漫画の「花の慶次」も息子が持つてるので密かに読んでゐるのだが、……。

2009-11-11

やはりメフィスト賞受賞の浅暮三文「ポケットは犯罪のために」講談社NOVELS(233・used)を読んだ。ポップな表紙イラストで、中身は一体どんなものか、と思はせる。意外に基本的なミステリ。そこそこ面白く読める。短篇集で、その並び方にひと捻りある。その意気込みは認める。作りに凝つてゐるのだらうが、なにぶん文章が普通。

2009-11-09

これは再読扱ひにするかどうか迷つたけど、以前にも「散歩する死者」と「天啓の殺意」は別にした経緯があるので同様に。中町信「高校野球殺人事件」徳間文庫(232・used)読了。9月にたぶん朝倉のBookOffで発見。早速購入。これを元にした改稿決定版が「空白の殺意」。トリックも犯人も判つたうへで読んだわけだが、3年もまへだし、殆ど忘れてゐたけれども、幾つか2作の違ひに気がついた。第五章で被害者が発見されるが、発見された場所が「高校野球殺人事件」では太田市、「空白の殺意」では館林市。高崎を舞台にしたものなので、道路事情で都合が悪くなつたか、発表当時(1980年)とは環境がかはつてしまつたか。「(発見された)林は太田市の南端を縦断している県道から二、三百メートルはいった場所にあり、舗装された道路ぞいに細長くつらなり、広大な面積を有していた」と書いてあるが、この太田市をそのまま館林市にかへただけなので不思議。どの辺りのことだらう、と推測するが、ちつとも特定出来ない。土地勘のある、近所の話なのに。はつきりとは覚えてなかつたが、エピローグのをはりかたが違ふ気がして、比べてみたら違つてゐた。行替へや文字の変更も多い。脚音→足音、おるす番→お留守番、「リーコちゃんもすごく大きくなった」→「リーコちゃんもすごくかわいくなった」など。中町作品の中では、これが一番おとなしいかもね。「模倣の殺意」が好みのタイプだと物足りないかも。どつちにしても、かういふ初稿、改稿、決定稿など版の違ふものがある作品は細かく比べてみたいなあ。面白さうだな。発見があるかもしれない。先づはこの2作の比較から始めるかな。

2009-11-05

講談社のメフィスト賞受賞者の名前で見たことがあつた蘇部健一の「動かぬ証拠」講談社NOVELS(231・used)を読む。買つたときは11の章に分かれた長篇だと思ひこんでたので、じつくり読むつもりでゐたら、短篇集だつた。だから11編ある。いろんな意味で面白いね。確信犯的な太々しさを感じる。最後に1枚のイラストで凡ての謎解き、といふ趣向はそれほど決まつてないけど。半下石(はんげいし)といふ刑事の名前には何か特別な意味があるのか。この刑事のキャラクターもいい。「六枚のとんかつ」をusedで探すかなあ。

2009-11-04

気になることを書いてゐるのであつて、けしてケチをつけてるつもりはないが、あら探しだと思ふ人もゐよう。津村秀介「山陰殺人事件」青樹社文庫(230・used)には困つた。浦上伸介の推理は中町信みたいにアクロバティックではないが、地味だけど読み手にも自然だ。中身は面白いんだ。それはまへの「刑事長」についても言へる。まあ、スラスラ読める面白さうなミステリを探して読んでるワケだから、多少のことは構はない。しかし、これはどうにも破綻してゐるやうに思へる。ネタバレするしかないんだけど、P216に「三人とも縊死だった。火をつけてから首をつったことになる」と書いてある。そのうちの一人は身代りで顔の損傷がひどかつた。その火事現場にゐあはせた接点のない3人の人物が1年後に続けて殺される。なぜか。実は火炎の中から現れた男Aをこの3人は目撃したからなのだ。Aは再び炎の中へ消え、やがて家は燃え落ちる、といふのだ(P254)が、縊死だつた、と書いてある。さうすると、燃え盛る家の中へ戻つたAは梁かどこかに紐状のものを掛けるか何かして自ら首を吊るといふ作業を行はなくてはならない。そのままだつて、死んでしまふでせうに。辻褄あはせになつてゐないか。ただの焼死だと困るのかな。他の2人はAの両親なんだけど、両親が縊死で、本人が焼死でもをかしくないでせう。両親を殺した男が耕耘機のガソリンを被つて自殺した、といふのも変ぢやないと思ふ。でも、その男が一旦外へ出て、また戻るといふ設定は、後で殺される3人に目撃させるためでしかない。しかも、2件の殺人事件の犯人と目され、最後に殺されることになる人物Bは、一年後にこの火事の事件を聞かれても覚えてゐないのだ。だけぢやなく、浦上の質問に、山陰には旅行したことがない、とまで答へてゐる。一年まへで、旅行中の火事で、その火事については地元新聞の取材に応じてゐるから、当然、警察の事情聴取もあつたでせう(書いてないけど)。忘れるかな。Bが真犯人Aの近くに現れたことで、かつての無理心中、火事を装つた殺人の発覚を怖れて殺人が起るのだが、Aは大金を持つてをり、更にどこかへ移り住めば問題ないでせう。資金があるんだから、どこまでも逃げればいい。そのはうが自然ぢやないか。わざわざ危ない橋を渡つて、アリバイを作つて飛行機と電車を乗り継いだりして、3人も殺す労力を考へれば。さうなると、この殺人事件は幻の殺人事件になつてしまふのだが。更に、Bの手書きの遺書めいたものをAが手に入れるのは不可能ではないですか?「太陽がいつぱい」みたいに筆跡を真似る?弱いなあ。
最後に、たまたまかも知れないけど、解説の文章が途中で次の行に移つてるところがある。びつくりする。

2009-11-01

読まないうちから、てつきり新本格派と呼ばれる人たち(綾辻行人、有栖川有栖とか)の一人だと思ひ込んでゐたので手を出さなかつた姉小路祐の「刑事長(デカチョウ)」講談社NOVELS(229・used)を読んだ。実は「社会派」〈本人弁〉。プロフィールによれば、法学部卒で弁護士のシリーズを書いてゐるさうだ。解説は森村誠一。なかなか面白く読めたけど、気になつたこと。いつもの些細なことなんだけど、最初に発見される被害者の死亡した日、発見した日が何日なのか書いてない。P40の捜査会議の報告で「死亡推定時刻は九月七日の午前二時半から三時半」と出てゐるが、死体発見日とは書いてないから判らないまま読むことになる。そんなことは判るでせう、予想がつくでせう、午前の死亡推定時刻で、第一章の冒頭が夕方なんだから、……ぢやあ、聞くけど、そんなことを書くスペースもないほど込み入つた小説なのかと言へば、そんなことはない。警察機構に対する批評的な意見がクドいほど書かれてゐて、判つたよ、そんなこと、と、つい呟いてしまふくらゐだし、その次に死んだ人物についてはP154下段左から6行目に「※死亡推定時刻は本日(十月二十日)の午前一時から二時。」と書いてある。「本日(十月二十日)」と。この「本日」の2文字を書かない理由はなんですか?見落としてるのかと思つて何度も始めのはうを読み返した、その手間と時間が惜しい。ミステリで日時や季節がきちんと書いてないものはホントにイライラするんだよね。いつの話なんだよ、これはッ!と。新しい警察署長が赴任した日も、何日と書かない理由はなんですか?プロローグP15「貴船署長が着任してからちょうど十日目のことだつた」。自分で計算しろつてのかい?警察の人事は全く知らないけど、これで行くとさあ、8月の28日か29日に人事異動があつたことになるんだけど、ずゐぶん中途半端な時期だねえ。1日付けとか、さういふ人事異動ぢやないのかね。それと第6章からの展開で、「山本」を追つてる、と言へば、岩切刑事もこれほど孤立しないんぢやないか。敢て喧嘩を売つてるやうに思へるんだけど。最後に森村誠一の解説のをはりのはう、「若い刑事・川喜田がつぶやく」その台詞はP240婦警の鳥居理香の台詞です。その台詞にある「勤勉実直」は四字熟語なのだらうか。謹厳実直といふ四字熟語は知つてるが「勤勉実直」は知らない。試しに広辞苑と岩波国語辞典で調べたが、「勤勉」に「実直」を続ける例はないが、「謹厳」には「──実直」の例が挙げられてゐる。

2009-10-29

ずゐぶんまへに、20代に集中的に読んだのが鮎川哲也、そして佐野洋、結城昌治だつた。佐野洋、結城昌治はハズレがない。鮎川哲也にハズレがあるといふ意味ではないが、本格ものに限らないところが違ふか。佐野洋の「幻の殺人」新潮文庫(228・used)を読む。5編の短篇が入つてゐるが、どれもその後長篇化されたものだと「あとがき」にも「解説」にもある。「光の肌」と「無効試合」は読んだやうな気がする。連続殺人、時刻表トリック、アリバイ崩し、密室トリック、ダイイング・メッセージなどに疲れたら読むといいかも。ミステリはそれだけぢやない。

2009-10-26

岡嶋二人の「ちょっと探偵してみませんか」講談社文庫(227・used)を読む。25の短いミステリ集で、読み手が推理して、南伸坊の証拠品のイラストが入り、作者の正解が出てゐるといふ形式。5分間ミステリだつたか、さういふクイズ、パズルに近いやうなものは本屋でもよく見かける。鮎川哲也にも「ヴィーナスの心臓」や「貨客船殺人事件」があるし、文春文庫にも16人の作家が書いた犯人あての推理短篇を集めた「ホシは誰だ?」といふのもある。岡嶋氏の作品はたぶんこのブログを始めてからでも「チョコレートゲーム」を読んだし、だいぶまへ、さうだなあ、岡嶋二人がコンビを解消した頃?する頃?何冊か続けて読んでゐるのだが、ハズレの少ない人で、この25篇のミステリも旨いものをちよつとづつ食べるやうな、そんな楽しい本だつた。

2009-10-20

矢鱈と評判が高い貫井徳郎を読んでみた。ちよつとまへまではデビュー作の「慟哭」が結構何冊もBookOffに105円で置いてあつたのに、探し始めたら見つからない。止むなく状態のよかつた「ブリズム」創元推理文庫(226・used)のはうを読んだ。一言で言へば、達者な人だ。4つの章に分かれ、それぞれ語り手がかはる。しかも、まへの章で怪しいと目された人物の目から見た事件といふ作りになつてゐる。アントニイ・バークリーの「毒入りチョコレート事件」(未読・創元推理文庫)を手本に更に工夫を凝らした、といふことのやうだ。些細なこと。P223でK氏は山浦先生にどうやつて電話をしたんだらう。デパートでお茶を飲んだ程度で、例へば携帯の番号の遣り取りなんかしないでせう。1週間後に一緒に食事はいいけど、学校には電話できない。クラスの名簿には担任の連絡先は出てるだらうが。そんなことは当り前なんで書かないのか。それと誰が真犯人であるにせよ、チョコレートに睡眠薬を入れる方法が判らないのだから、……オレだけが判らないのかな?文章の横に強調するやうに「ヽ」が打つてある文が幾つもある。ページ番号だけ順に挙げる。P85,103,133,134,138,142,150,210,269,278。なんでなのか。もう一度読む機会があつたら、考へてみよう。

2009-10-19

ジョナサン・キャロル/浅羽莢子訳「パニックの手」創元推理文庫(225)を読みをへたのは一昨日のことだ。11の短篇がはいつてゐる。最初の「フィドルヘッド氏」。ああ、かういふ小説を書く人なんだ、と。ファンタジーと言ふんだらうね、かういふ展開は。で、次の「おやおや町」。これは長くて読むのに時間が掛かつた。その次の「秋物コレクション」が一番好きだ。全部に言へること。書き出しの軽妙さ、言ひまはしにも工夫がある。比喩は凝つてゐるけど、嫌味な感じもなく、クドさも鬱陶しさも感じなかつた。短篇だけぢや判らないが、サキとか、ロアルト・ダールとか、似てるかも知れない。それよりもオレは村上春樹に似てると思つたんだけど、ハズレかな。それとヴォネガット、カーヴァー、或はブローティガン。訳文が読み難い、と言ふか意味が取れないところがあつた。控へなかつたので挙げない。「フィドルヘッド氏」の中にこんなところがある(P20)ポルシェのことが書いてあつて、「〈風呂桶〉って呼ばれてるやつ」と。あとの文章も含めて考へると、たぶん356スピードスターのことだらう。しかし、これは〈バスタブ〉と呼ぶことはあつても、わざわざ日本語にして〈風呂桶〉なんて呼んでないと思ふよ、一般的には。

2009-10-15

フロストを読んで、警察小説の面白さを知つたせゐもある。佐々木譲「笑う警官」ハルキ文庫(224・used)がいい状態でBookOff朝倉店にあつたから買つてみた。なかなか面白い。いや、かなり面白い。特にオレは諸橋警部補が死体発見現場のマンションから手懸りをみつけ、更に重要人物を特定していくところが堪らない。それと大詰めのところで駆け引きもテンポが早くてスリルがある。映画化され、続篇もあるやうなので、忘れなかつたら探さう。

2009-10-11

続けて津村秀介「時間の風蝕──こだま269号から消えた女」集英社文庫(223・used)を読んだ。解説が鮎川哲也だつたから。本の状態はあんまりよくなかつたけど、まあ、105円なら仕方ない。中身はまへに読んだのよりもずつと面白く読んだ。地味だけどね。殺人事件は解決したが、その動機になつた2億を超えるアノード板盗難の解明が足りないかもしれない。佐伯警部補の言ふ通り、それは確かに石川県警の事件だけど。

2009-10-09

中町信が医療関係の出版社に勤めていた頃、机を並べて仕事をしてゐたといふ津村秀介の「能登の密室──金沢発15字54分の死者」光文社文庫(222・used)を読んだ。まるで東海林さだおのエッセイばりの行替へで、あつといふまに読めた。密室殺人とアリバイ崩し。文章が池波正太郎とか、時代小説風なのだ。うまく説明できないけど。なかなか面白かつた。最後の写真トリックは要らないんぢやないの?重箱の隅を1つ。雅江がスカートでもスラックスでも大丈夫なくらゐ革のコートは裾が長いのかね。そこまでは気にしないか。初対面の人たちであり、僅かな時間だ。手に特徴があるのは作り過ぎてない?

2009-10-03

なんと言へばよいのか。柴田哲孝「TENGUてんぐ」祥伝社文庫(221・used)。26年前の群馬県沼田市の寒村で起きた連続殺人事件の謎を追ふ、といふ設定なのだが、読み進むと解るが主人公の道平(みちひら)慶一は殺されかけてゐるのだよ。26年間も放つて置くかな。先づ、この26年間の空白がなぜかについて納得できる説明がない。読み落してたらゴメンなさい。なので、これは70年代の国際情勢、アメリカの状況、そして2001年9.11テロといふジャーナリズムの話題性を繋ぐための年月でしかなく、物語が止むなく26年といふ空白を生んだワケではない、と受け取れる。アウトドアのグッズ名称、バーボンや日本酒の銘柄などで人物の個性のやうなものを描きたいのかもしれないが、煩く感じる。生身の人間に起つた殺人事件だといふ印象が薄い。荒唐無稽だとするには、現実に寄りかかり過ぎてゐる。瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」もさう、鈴木光司の「リング」その他もさう、これもさう、キングやクーンツ、トマス・ハリスなどの作品が翻訳され、消化不良になつてるんぢやないか。プルーストとか、ジョイスとか、アンチ・ロマンと似たやうなものかな。
ホントに些細なこと。P6、9行目「あすこしかない」。江戸弁かね。P102、8行目「杵柄慎一だった。真一は」。単純な誤植か。

2009-09-29

赤川次郎がクリスティの「そして誰もいなくなつた」の解説で名前を挙げてゐたP・D・ジェイムズ「女には向かない職業」小泉喜美子訳・ハヤカワ文庫(220)を読んだ。amazonのレビューでも評価が高いし、幾つかのミステリーのサイトでも褒めてるし、解説はもちろんだ。が、しかし、コーデリア・グレイといふ女探偵が一応は主人公だが、これは別の、例へばアダム・ダルグリッシュ警視シリーズの外伝、オマケのエピソードみたいなものではないか。描写が細かいのと言ひまはしに凝つてると言ふか、ハードボイルド的な読み易さはない。始めのはうで何箇所か意味が取れない記述があつた。例へば、P26の3行目「年配の人々というのは、どんなにひねくれた、あるいは衝撃的な意見でも受け入れるだけの能力を持っているように見えるのに、単純な真実を聞かされて気を悪くしてしまうのでは、包容力などはどうなっているのだろうとまたもや首をかしげた。」いま写しながら読んでも意味がよく解らない。尤も、この意味が解らなくても、ストーリーには関係ないのだが。それと漢字を敢へて平仮名表記にしてるのがあつて、逆に読み難い。題名は内容にぴつたりで、上手いと思ふ。話は面白いし、赤川氏の言ふやうに文学的かも知れない。でも、他の作品を読みたいとは思はなかつた。凝つた文章は意味が解り難いし、細かい描写は鬱陶しく感じるタチなのだ。さう、ケンブリッジの町並みなんか丁寧に描写されても、オレのイメージは文字を追ふ速度に着いて行けないのだ。
蛇足ながら、訳者は生島治郎のまへの奥さんで推理小説も書いてる人だ(確信がなかつたので、wikiで確認済)。

2009-09-20

なにごとにつけ、反対意見には耳を貸すようにしたいものだ。タバコはホントに有害なのか。それで以前「タバコ有害論に意義あり!」といふ本を読んだわけだが、今回は「スポーツは体にわるい」加藤邦彦・光文社カッパサイエンス(219・used)。ワイルドワンズの加瀬邦彦と一字違ひ!副題に「酸素毒とストレスの生物学」とあつて、まあ、要するに運動すると活性酸素が体内に多量に発生する──それにはビタミンC とE、βカロチンがいいさうだ──し、運動はストレスのもとである、といふことだ。成人病予防に運動療法なんてナンセンスだ、と。スポーツ選手は寿命が短いといふ例を出す。しかし、スポーツをするのと運動選手になるのとは同じぢやない。短いと言つたつて5〜6年の話だ。適度な運動といふ曖昧な、個体差のある話を寿命といふ基準で推し量るのが適当だと言へるのかどうか。目が覚めるほど新鮮な、コペルニクス的展開はなかつたが、一つだけ、人間の体内時計は25時間周期のリズムになつてゐる(P230)といふのは初耳だつた。かつての地球は自転にそれだけ時間が掛かつたからださうだ。

2009-09-16

R・D・ウィングフィールド/芹澤恵訳「クリスマスのフロスト」創元推理文庫(218)は抜群に面白かつた。帯にいろいろ書いてあつて、「英国ミステリの傑作フロスト・シリーズ」だとか、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」ミステリーベスト10全作第1位」だとか、ゴタゴタ。かういふ風に書いてあるのは嫌ひなんだ。却つて敬遠してしまふんだなあ。これは性分だから仕方あるまい。もつと早く読みたかつた。フロストは全部読もうと決心したほどだ。P66でフロストが登場してからが特に面白い。なので、か、どうか、最初に出て来るパウエルの名前を忘れてゐた。辻褄なんかどうでもいいくらゐ、どつぷり話に浸かつて楽しんだ。正にフロスト気分、フロストになりたい気分だね。

2009-09-07

まへに読んだ赤川次郎の文庫(「ふたり」)のうしろのはうに、目録みたいに赤川次郎の作品が幾つか紹介されてゐて、そのなかにこの「真実の瞬間」新潮文庫(217・used)があつた。20年まへの殺人事件を告白し、その償ひをしようとする定年まぢかの会社重役とその家族。マスコミ批判はもつと痛烈でもよかつた。長女の智子とその夫に比べて、石元久子に救ひがない。読み易いのでどんどん読めてしまふが、なかなか重い内容である。

2009-09-03

出だしで躓き、あとまはしにしてしまふ本が結構ある。ロス・マクドナルドの「さむけ」小笠原豊樹訳・ハヤカワ文庫(216)もさうだつた。去年の暮れに買つたものだ。古い版のままなので文字が小さいのも理由の一つ。これに出て来る私立探偵リュウ・アーチャーはほかにも20作品に登場するさうだ。もう一度ゆつくり読みたいと思ふ。実によくできてゐると思ふ。ちよつと解らないところ──「22」P270〜278までは本筋とどう関はるのか見当がつかない──があつたが、そんなことは些細なことだ。ほぼ満点の面白さ。

2009-08-29

きのふ朔立木「深層」光文社文庫(215・used)を読み終へた。四つの小説が入つてるので、ひとつひとつ行くか。「針」は小説ではなく、ルポとして書くべきだと思ふ。責任の所在を明確にしたうへで、それぞれの医師が裁かれるべきであつて、末端の現場の医師が全ての責任をかぶる結末は感傷的であり、承服できない。「スターバート・マーテル」7人の幼稚園児を殺した男の元妻の手紙の形だが、元夫に対して自分を十字架に架けられたキリストの脇に立つ聖母マリアに準えるのだが、それでは殺人を犯した元夫はキリストといふことになりませんか。まつたく受け入れられない。こんなことをもし、ホントの殺人者の元妻が言つたとしたら、オレは被害者の親でなくても断じて許さない。「鏡」この教師、地獄に堕ちろ。なぜおまへは温々と生きてゐるんだ。「ディアローグ」それらしい話に過ぎない。類型的でさへある。誰も傷ついてはゐない。涙を誘ふ感傷的な言ひまはしはある──実際に涙を零しもしたが、感動には繋がらない。なぜなら、この浅さ、薄つぺらさは頭の中で人間や人生を考へてゐるからだらう。かうした小説の執筆は、恐らく勉強ができて、成績がよくて、それで法曹界に身を置く著者の余技に留めて頂きたいものだ。蛇足ながら、解説の長田渚左といふ人へ。ノンフィクション作家ださうですが、これらの小説に対して「通俗をひっくり返す美学」と言つてるけど、まつたく意味が解らないよ。通俗をなににひつくり返すといふことなのですか。またこれらの小説が著者の「死亡推定時刻」よりも「文学性も高いように思う」といふ失言、いや発言がありますが、そこに優劣があるのかどうか、またその根拠はどんなところか言はないと、なにも言つてないのと同じでせう。

2009-08-24

アガサ・クリスティ/長沼弘毅訳「オリエント急行の殺人」創元推理文庫(214)を読んだ。トリックは知つてゐたので読み難かつた。たぶん映画──ビデオを借りて見てゐると思ふ。ショーン・コネリーが出てなかつたかな。発想は素晴らしいですよ。「そして誰も……」も、さう。さらに「アクロイド殺し」も。しかし、古い。赤川次郎が「そして誰も……」の解説で触れてたけど、誰でも携帯電話を持つてる現在の生活では、起らない犯罪だね。訳も古くて(「訳者あとがき」が1959年9月)、P278の5行目「その前にまず、のんべんだらりと小田原評定と来る」なんて台詞をポワロの友人で国際寝台車会社の重役といふ設定のブーク氏が発言するんだ。「小田原評定」?──「いつまでたってもきまらない相談▷北条氏が豊臣秀吉に攻められた時、小田原城で、戦うか降伏するかの相談がなかなかきまらなかったことから。」(岩波国語辞典第三版)──ほかの言ひ方はなかつたのかね。日本人ぢやないんだから。まるで時代劇だぜ。1934(昭和9)年に出た本だからねえ。当時は気が効いてゐて、逆に斬新だつたのかね。

2009-08-22

こないだ、──でも、さう、お盆まへだ、休みの日に太田のBookman's Academyで見つけた新潮選書の──しかし、後でアピタとか文真堂とかで探さうとしても題名がはつきり思ひ出せなくて困つた──網野善彦の本がどうしても読みたくて、一度は太田イオンの贔屓の喜久屋書店で──さすが置いてあつた!──見つけたのだが、ちよつと表紙が汚れてたので店員に他には在庫がないか聞いたら注文することになる、といふ返事だつたから、いつかまた太田のBookman's Academyに行く機会があつたら買はうと思つてゐた「歴史を考えるヒント」(213)を17日に手に入れ、けふ読み終へた。まだまだたくさん知りたいことがあり、それには当然たくさん勉強しなくてはならないことがあり、そのためには、かうした本が必要なのだよ。興味を持てる本。ふむふむ、面白さうぢやないか、と思へる本が、さ。日本が「日本」と名乗つたのはいつからか。網野善彦なら当然触れなくてはならない、触れるであらう「百姓」とは誰か。いまと全く違ふ言葉の意味や使ひかたには驚くし、さうした言葉の理解のうへにたつて歴史の読み解きがある、といふ意見は寧ろ、その入り口でもいいから義務教育のうちに知つてゐたら、歴史に興味を持つ子どもはきつと増えるに違ひない。歴史に限らず、数学も物理も、美術も音楽も、オレが苦手だつた体育でさへも、興味を持てなくなるのは教へかたに問題があるんだ、と、つくづくさう思ふ。教師個人の場合もあるだらうし、学校全体、教育委員会、教育指導要領、文部科学省が、実はなんにもわかつてない、と言ふか、子どもだつたことを忘れちまふタイプの大人なんだらうな。

2009-08-16

「てとろどときしん」(これは短篇集)を読んでから、直ぐにクロマメ・コンビの「二度のお別れ」、「雨に殺せば」(この二つは長篇)と続けて手に入れて読んだ黒川博行の同じシリーズ「八号古墳に消えて」創元推理文庫(212・used)読了。面白いなあ。最近はハードボイルドつぽいのが多いみたいだけど、クロマメ・コンビの謎解きシリーズが好きだ。丁寧に書かれてゐるので安心して読めるし、このコンビのやりとりの面白さは、ついもつと読みたくなる。お薦め品だ。

2009-08-10

その赤川次郎が解説を書いてゐて、こんな小説を書きたいといふ目標だと言つてるアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」清水俊二訳・ハヤカワ文庫(211)を読んだ。ミステリ好きの癖にまだ読んだことがなつたのか、と言はれるかも知れないほど、有名な、題名くらゐは聞いたことがある作品──なので、敬遠してゐた面もあるが、一気に読ませる。インディアン島に集められた人々が、10人のインディアンの童謡に合せて、次々に殺されて最後には誰もゐなくなるといふ、題名通りの、説明するまでもない内容だ。謎解きとトリックの説明がエピローグのあとに付された「漁船エマ・ジェーン号の船長からロンドン警視庁に送られた告白書」の形で書かれてゐるのは、構成のうへでやむを得ないにしても、ヴェラ・クレイソーンの死に方、そして真犯人の動機が10人も殺しつづけるには無理がないか。
蛇足ながら、このハヤカワ文庫は普通の文庫より少し縦が長いので、しまふのに困る。なんでこのサイズにしたのかな。買ふとき躊躇つたんだけど、創元のはうには訳がなかつたので、仕方なくこつちにした。

2009-08-05

いやあ、素晴らしい。実にいい話だ。娘の誕生日のプレゼントの一つだつたのを、読み終はつたら貸してくれ、と頼んで置いたのだ。ネットで小学校高学年の女の子にお薦めの本を検索した中にあつた。──赤川次郎「ふたり」新潮文庫(210)。小学生にはちよつと微妙に解らないところもあるだらうが、殆ど無理なく入つて行ける。このトシでも目頭が熱くなる場面が何度もあつて、それは寧ろこのトシになつたからかな、とも思つたりもした。どうせ金がなくて何も買へないだらうから、と気をまはし、上の子からのプレゼントにした積りが、あいつはあいつで紙の筒に何十本も入つた色鉛筆とスケッチブックをセットで用意してゐたから、それならそれで予め言つといてくんないと、こつちの立場がないだらうが、……。これ、大林宣彦が映画にしてるんだ、つて。知らなかつた。見たいな。

2009-07-15

一昨日、矢作俊彦「スズキさんの休息と遍歴 またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行」新潮文庫(209・used)を読み終へた。イラストは矢作氏本人。達者です。

2009-07-03

「眞相箱」といふのがあつたさうで、櫻井よしこの「GHQ作成の情報捜査書『眞相箱』の呪縛を解く」といふのを読んでゐる。わたしたちがさう教はつた、いや、誰かからさう教へられたと信じ込まされた事柄について、真珠湾攻撃、東条英機が一番悪い、原爆は戦争終結のために落された、などなど、実はGHQの情報操作だつたといふ実例が次から次へと暴かれる。5分の2くらゐ読んだところだ。それと矢作俊彦の「スズキさんの休息と遍歴」が3分の1くらゐ。この2作はちつとも捗らなくて、「静かなるドン」とか「教科書にない」とか「日本一の男の魂」とかコミックばかり読んでる始末だ。